魂の記憶

文字数 1,037文字

私は、戦のある世界に生きている。
結婚は出来たけど、戦ある中で生きるには、辛い事が沢山ある。
それでも夫との生活は幸せで、些細な幸せでも愛おしく感じる。
そして今日も、またいつも通りの日常をおくれると信じて疑わなかった。
こんな世界に生きているのに。
なにも思わず、いつも通りの朝を迎えていた。


「今日も、戦に行くの?」
私は夫にそう声をかけた。
「あぁ、すまない。こんな世の中だ、みんな、行きたくなくても、俺たちは戦わなくちゃいけないんだ、ある人は国の為だとか言うけど、俺はお前との生活を守る為に、戦に行って、勝ってくるよ、大丈夫」
「そう、気を付けてね?必ず帰って来てね」
「あぁ、約束するよ、お前の元に、必ず帰ってくるよ、だからそんなに心配するな」
そういって夫は笑顔で、心配する私の頬を撫でた。
「約束よ」
「そうだな、じゃあ、行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
夫は私に背を向けて、朝日の中、歩いて行った。
私はそんな夫の背中を見送るしか出来ない。
それでも夫を信じて、今日も必ず帰って来てくれると、約束したから大丈夫と思い、家の中へ戻った。


なぜ、私はこんな残酷な思いをしなくてはならないのか。
夫は約束を守ってはくれなかった。
とても悲しかった。
夫は戦へ行って、命を落とした。
亡骸になって、私の元へ帰って来た。
嘘だと思いたかった。
そこらへんで、戦に行った男たちが亡くなって帰ってくるというのに、自分だけは大丈夫と、心の中で思い込んでいた。
夫はいつでもちゃんと、帰って来てくれていたから。
私はいつまでも、夫との二人の時間がおくれると思っていた。
たとえ、子供がいなくても、夫婦二人で暮らして、幸せに生きれる。
ずっと、そう思っていた。
私はその時、夫は嘘つきだと思った。
生きて帰って来てはくれなかった。
あの人は、約束を破った。
それでも私は、夫がいなくなって、声も聞けない、触れあえなくなってしまっても、夫が好きで夫を愛していた。
だから、私は生涯、夫以外の人とは結婚しなかった。
私にとって、夫と呼べる人は、一人で良かったからだ。



私は死んで、夫と同じ墓に入った。
それは、私の最後の願いだった。
愛した人と、同じ墓に入って眠る…。
だからこれで、私の最後の願いは叶った。
だけど、夫と末永く暮らす事は叶わなかった。
夫は早くに亡くなった。
私は夫が亡くなってから、ずっと一人ぼっちだった。
だから、もしも来世というものが本当にあるのなら、私はもう一度、夫と結婚して、幸せな時間を過ごしたいです。
その願いだけは、叶えて下さい。

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