くちなし

文字数 470文字



今日、街を歩いていた時に目についた、とある店先に並べられてあった鉢植の花。
あゝこれは、昔ご縁があった旧友が好きだった花だなと、直ぐにインスピレーションが走り、急ぐ足を止められてしまいます。

これは、くちなし(ガーディニア)。

今もあるだろうか。
昭和の終わり頃、東北大学の片平キャンパスのとある一角にこの花が植えられており、そこを通った時にくちなしの薫りに気がついた旧友は嬉々として、この花が大好きであることを都度私に教えてくれたものでした。
そんな記憶が、自分にとってこの花が旧友のイメージとして、今も残ったままなのです。

なぜ?どうして?どんなところが?
旧友に、この花が好きだという理由を聞き出したことはありません。「好き」という意思表示だけが、今も片平キャンパスの一角に残ったままであるのです。

今更ながら、どんなところが好きだったのだろうと、連れて帰ってきてしまった鉢植の白い花を、遠い目で見つめています。
もう、一生再会など望まない、昔ご縁の交差があった旧友なのですが、
そんな記憶だけは、これからもずっと美しく、自分の宝物のままでいてくれます。
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