今宵も長電話のフライトへ

文字数 1,144文字



 ステイホームの日常では、PCネットワークを利用したオンラインコミュニケーション化が一気に浸透してしまっている。オンでもオフでも一通り体験してみると、その気軽さに遊び心も加味されていることでも、広い支持が得られている背景がうかがい知れ、利用価値性の高い、優れたツールであることが実感出来る。
 このような現代形コミュニケーションツールとは対極に位置する、従来型のコミュニケーション手段といえば「電話」。私は、オンラインの楽しさも承知の上で、それでも電話でのコミュニケーションのスタイルを選ぶ方が自分らしい形であると自覚している。
 そう、私は電話での、いわゆる「長電話」が大好き。
 もちろん、受話器の向こう側にいるのが誰でもいい訳ではない。長電話とは、心の中に大切に住まわせている極々限られた人物だけに与えられるパスポートなのである。
 さて、長電話というと、大体どのくらいの時間を要する会話を指すのだろうか。個人の感覚差があるのはもちろんだが、私の場合はおよそ2時間のラインに突入することが、長電話である目安としている。2時間を超えるくらいになれば、互いの要件を伝えるだけの対話ではなく、じっくり心を座らせた、ナチュラルなコミュニケーションを交わし合うことができるものであると、そのような感覚を持ちあわせている。リラックスできる心を通わせ合える状態のあり方が、よき会話の導きにおいて欠かせない条件であるのだ。 夜の静寂に染められ、1日の務めを終えたオフ状態に切り替え、身も心も最もリラックスできる時刻を迎える頃、さあ、長電話の世界にウェルカムされる準備も整ったといえよう。
 長電話は面白い。例えば受話器の向こう側のお相手が何十年という付き合いの間柄の者であっても、その時の長電話で初めて聞かされる話があったりもする。長電話には、そんな魔法の効能がある。普段引き出せない話を表出化させられる力を持ち合わせているのだ。そのようなことが、長電話を愛する深い魅力として挙げられる点でもある。
 また、相手のことだけではなく、客観視した己の姿をも楽しみの視点に加えることもできるだろう。よくも2時間も3時間も会話に隙間なく喋っていられるものだと、自分ってこんなにおしゃべりな人間だったのかと、遅まきながらの自分発見にも出会す愉快を発見できる楽しさもある。
 さて、次回はいつ長電話のフライトの旅に出かけよう。
 コミュニケーションには、イマジネーションという小道具を欠かすことはできない。オンラインコミュニケーションの誕生は、多くのプラスを得ることができたと同時に、何かが失われていることに気づくことができないだろうか。
 その気づきを得られることができたなら、今宵も長電話の神に感謝を捧げなければならない。
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