ルール・ザ・タイフーンⅡ
文字数 3,852文字
確かにボードゲームの盤面をひとり眺めては日本酒をチビチビやっていた姿が記憶に残っているが……それはともかく、この新しく出会ったファンタジーを題材とした海外ゲームについては、当初から仲間を集めて普通に遊ぼうとしたのだそうだ。
【たいようのけんし、ほしのまじゅつし】タイプのゲームを一人でプレイするのは困難を極める……どころか、いくつかの例外を除けば不可能に近いから、というのがその理由らしいのだが、ゲーム友だちなどいるはずもなかったおじさんは、自分でもまだ遊んだことの無いゲームにもかかわらず、絶対、ぜーったい、面白いの~! などとうそぶいては、親しいクラスメイトたちを熱心に誘って回ったのだとか。
だが残念なことに、そのうちの誰一人として語られたゲームの概念も魅力も理解できず、というか、そもそも俺たちってこの時期、世間一般では受験生と呼ばれてもおかしくない身なんですが、それについてのコメントをお聞かせ願えますでしょうか? 夏休み? 寝ぼけていらっしゃるのかしら? こちとら夏期講習の予定が詰まっておりますのよ? といった、至極真っ当な反応を返されたそうで……まあ、それはそうだろう。
おじさんの影響でボードゲーム好きになった俺でもそう思うのだから、彼らからすれば何をか言わんや、である。
そんなわけで、受験が終わるまでは~、高校生になるまでは~、身を切るような思いでお別れしたのしたの~! と熱く語られた記憶もよみがえってきた次第でございます。
うん、ちょっと大げさというか、誰とどこで生き別れたんでしょうか? というか、おじさんのダメ人間エピソードがまた1ページ。
入学早々、今度こそ仲間を集めてゲームを、と意気込んでみたものの、やはりクラスの誰にも取りあってはもらえず、校内にわずかなりとも棲息していた筋金入りのウォー・ゲーム愛好者たちからも相手にされなかったのだそうだ。
ちなみにオフクロとクラスメイトだったのは二年次以降の話らしいのだが、それはさておき。
こうなるとさすがのおじさんも意気消沈……かと思いきや、なんのその~! と一念発起したらしく、シミュレーションゲーム関連の雑誌に載っていたゲームイベント情報を吟味した結果、都内の公共施設の一室を借りて催されていた小規模な集会にまで足を運んだのだそうだ。
お目当てはもちろん念願のゲームプレイ。
だがここにきておじさんは、思ってもみなかった驚愕の事実に直面することになる。
その驚愕の事実とは。
ズバリ、一言でお願いします。
参加者の皆さんは初心者であるおじさんを暖かく迎え入れ、スリルと興奮に満ちた冒険の旅へと誘ってくれたらしい。
そのことには深く感謝しながらも、どうしても心の底からゲームを楽しむことができなかったのだそうだ。
失望を味わった一日の終り。
黄昏時の家路を急ぎながら、プレイヤーとしては二度と遊ぶまい、心にそう誓ったおじさん。
またそれは同時に、とある野望の種が蒔かれた瞬間でもあった。
そんな野望に向かって最初の一歩を踏み出したおじさんは、自らが創りあげる世界にふさわしいゲームシステムを選定すべく、国内外のゲームを取り寄せては比較検討を続けるうちに、ある一つの結論へと至ったらしい。
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