第7話 人間失格の電撃棒
文字数 1,677文字
邯鄲の夢ー⑥人間失格の電撃棒
翌日、翔太はレセプションセンターの前に六時に行ってみた。バスには既にエンジンが入り、ディーゼルなのか黒い煙をマフラーから吐いている。
バスの乗り入れ口には、手配師の英愛兵が二名おり、労働チケットを確認できた者のみバスに乗ることができる。労働チケットを持っていない者は、手持ち無沙汰のようでゾンビのようにバスの周囲を徘徊して「お慈悲を」と繰り返しながら手を出している。
現場に着いて翔太に与えられた仕事は、土や石を以子で運ぶ堤防の修復作業であった。その重労働を延々と三、四時間やった頃、やっと休憩時間になった。
「よーし、弁当だ。昼も夜も一律500州民円だ。金のない奴は、キャッシュカードで支払え」と配膳の英愛兵が叫んだ。
現金の無い翔太はカードで支払ったが、その時カードの金利がトイチであることは知る由もなかった。
翔太が一日の重労働を終えて、バスがレセプションセンターに帰り着いたのは、既に夜の九時を回っていた。翔太は、くだんの木賃宿に着くとシャワーもそこそこに爆睡した。
このような毎日を送り。翔太がレザベーションでの生活に慣れて三週間も過ぎた頃、センターの橋元大尉がフラリと木賃宿に現われた。
「どうだ、レザベーションでの生活は?君はまだ若い、反省文を書いて署名をする気になったんじゃないか」
橋元大尉は、なぜか上目遣いで話し始めた。
「なぜ、橋元さんが直々に?」
翔太は、何かウラがあるのではと勘ぐった。
「実は、護岸工事を取り仕切る英愛兵から、君の勤務態度が良好だとの報告が入ってな、君がまた元の世界を目指しているのではと思った次第さ」
翔太は、直観で嘘だと分かった。
「俺は、反省文は書かないぜ。額に一日中汗して美味い飯を食う、ここでの生活の方が俺の性分にあっているんでね。それに変な宗教を信じ込まされて、種無しブドウになる必要もないしね」
「残念だ。実に残念だ。君は人間失格だよ」
橋元大尉は、これだけ言うと実にあっけなく踵を返して去って行った。
翌月の第一週、翔太がいつものようにケータリングの列に並び、キャッシュカードを渡して英愛兵がスキャンすると「ピー」と異音がした。
「このカードは、債務超過で使えん。現金で支払え」
英愛兵は、翔太の持っているトレーを抑えた。
「待ってくれ、何かの間違いなんじゃないか?俺は、朝から晩まで一日だよ十二時間以上も働いて、素泊まりの木賃宿に泊まって、昼は飯場で弁当、夜も弁当かケータリングの質素な生活しかしてないぞ、一日二食だぜ」
空腹な翔太は真っ赤になって怒り、指を二本立てて配膳の英愛兵に食ってかかった。
「おまえの先月の給料は、十万州民円。それに対してキャッシュカードの債務は十八万州民円、既に八万州民円の遅滞金を生じている。現金がないなら、飯は置いていけ」
配膳の英愛兵は、疲れ切った労働者にさえ非情である。
「待ってくれ、俺はそんなことを言っているんじゃない。額に汗して朝から晩まで働いた者が、どうしてまともな飯さえ食えないのか、ということだよ」
翔太は、もう我慢ができずケータリングの列にならんでいる料理を鷲掴みにして口に放り込み、牛乳パックとリンゴを取ると脱兎の如く逃げ出した。
「ただ飯食いだ。食い逃げする気だ」、「ケータリングの公務執行妨害だ」、「容赦なく電撃を与えるんだ」
配膳の英愛兵達は、スタンバトンのスイッチを入れると即刻追跡し、二万ボルトの電流で容赦なく翔太を打ちのめした。
翔太は、一日の重労働の疲労と数発の電撃とで、「ウッ」と小さく呻くと飯を口に入れたまま涙目で失神昏倒し、列にいた労働者の仲間たちが我慢が出来ずに駆け寄った。
「何も一日中重労働をした者に電撃を加えなくてもいいじゃないか」、「おまえら英愛兵は、経済の鬼、搾取の鬼だ。飯ぐらい食わせてやってもいいじゃないか」、「翔太、しっかりしろ。気をしっかりもつんだ」
翌日、翔太はレセプションセンターの前に六時に行ってみた。バスには既にエンジンが入り、ディーゼルなのか黒い煙をマフラーから吐いている。
バスの乗り入れ口には、手配師の英愛兵が二名おり、労働チケットを確認できた者のみバスに乗ることができる。労働チケットを持っていない者は、手持ち無沙汰のようでゾンビのようにバスの周囲を徘徊して「お慈悲を」と繰り返しながら手を出している。
現場に着いて翔太に与えられた仕事は、土や石を以子で運ぶ堤防の修復作業であった。その重労働を延々と三、四時間やった頃、やっと休憩時間になった。
「よーし、弁当だ。昼も夜も一律500州民円だ。金のない奴は、キャッシュカードで支払え」と配膳の英愛兵が叫んだ。
現金の無い翔太はカードで支払ったが、その時カードの金利がトイチであることは知る由もなかった。
翔太が一日の重労働を終えて、バスがレセプションセンターに帰り着いたのは、既に夜の九時を回っていた。翔太は、くだんの木賃宿に着くとシャワーもそこそこに爆睡した。
このような毎日を送り。翔太がレザベーションでの生活に慣れて三週間も過ぎた頃、センターの橋元大尉がフラリと木賃宿に現われた。
「どうだ、レザベーションでの生活は?君はまだ若い、反省文を書いて署名をする気になったんじゃないか」
橋元大尉は、なぜか上目遣いで話し始めた。
「なぜ、橋元さんが直々に?」
翔太は、何かウラがあるのではと勘ぐった。
「実は、護岸工事を取り仕切る英愛兵から、君の勤務態度が良好だとの報告が入ってな、君がまた元の世界を目指しているのではと思った次第さ」
翔太は、直観で嘘だと分かった。
「俺は、反省文は書かないぜ。額に一日中汗して美味い飯を食う、ここでの生活の方が俺の性分にあっているんでね。それに変な宗教を信じ込まされて、種無しブドウになる必要もないしね」
「残念だ。実に残念だ。君は人間失格だよ」
橋元大尉は、これだけ言うと実にあっけなく踵を返して去って行った。
翌月の第一週、翔太がいつものようにケータリングの列に並び、キャッシュカードを渡して英愛兵がスキャンすると「ピー」と異音がした。
「このカードは、債務超過で使えん。現金で支払え」
英愛兵は、翔太の持っているトレーを抑えた。
「待ってくれ、何かの間違いなんじゃないか?俺は、朝から晩まで一日だよ十二時間以上も働いて、素泊まりの木賃宿に泊まって、昼は飯場で弁当、夜も弁当かケータリングの質素な生活しかしてないぞ、一日二食だぜ」
空腹な翔太は真っ赤になって怒り、指を二本立てて配膳の英愛兵に食ってかかった。
「おまえの先月の給料は、十万州民円。それに対してキャッシュカードの債務は十八万州民円、既に八万州民円の遅滞金を生じている。現金がないなら、飯は置いていけ」
配膳の英愛兵は、疲れ切った労働者にさえ非情である。
「待ってくれ、俺はそんなことを言っているんじゃない。額に汗して朝から晩まで働いた者が、どうしてまともな飯さえ食えないのか、ということだよ」
翔太は、もう我慢ができずケータリングの列にならんでいる料理を鷲掴みにして口に放り込み、牛乳パックとリンゴを取ると脱兎の如く逃げ出した。
「ただ飯食いだ。食い逃げする気だ」、「ケータリングの公務執行妨害だ」、「容赦なく電撃を与えるんだ」
配膳の英愛兵達は、スタンバトンのスイッチを入れると即刻追跡し、二万ボルトの電流で容赦なく翔太を打ちのめした。
翔太は、一日の重労働の疲労と数発の電撃とで、「ウッ」と小さく呻くと飯を口に入れたまま涙目で失神昏倒し、列にいた労働者の仲間たちが我慢が出来ずに駆け寄った。
「何も一日中重労働をした者に電撃を加えなくてもいいじゃないか」、「おまえら英愛兵は、経済の鬼、搾取の鬼だ。飯ぐらい食わせてやってもいいじゃないか」、「翔太、しっかりしろ。気をしっかりもつんだ」