03.不審なメール その2

文字数 2,761文字



 ほづみとたまきがマンションから出てくると、楠木とアレンは二人でワイワイと楽しそうに話し込んでいます。



[池崎 アレン]

やっと来たね~

[楠木 甚之介]

お疲れ様、長かったですね

だいぶ話してましたが、様子はどうでしたか?



 ほづみは千尋から聞いた不思議な話を楠木とアレンに伝えました。



[KP]

結構話し込んでいたので、2時間くらい経ちました

[上人橋 たまき]

今 16 時くらいかあ

明るい内に買い物行って届けましょうか

ということでわたしはコンビニへ行ってきてもいいかしら?

[岸川 ほづみ]

ああ、荷物持ちに付いていくよ

[池崎 アレン]

ボクらはどうしようか?

[岸川 ほづみ]

どないする? 先にもう一人のほうに行っとく?

先に行って話聞いとってもらってええかもしれんよ

[池崎 アレン]

落ち合えないけど大丈夫?

[上人橋 たまき]

住所知ってるし後から追い付きますよ

千尋ちゃんにゴハンとか渡して落ち着かせてから来ます

[池崎 アレン]

あっそ☆

[岸川 ほづみ]

何か見えへんようなものがおるっていう話やから二人とも気を付けて

[岸川 ほづみ]

ああ、せやった


信じるかどうかは分からんけど、透明なヤツは音の方向に寄ってくるらしいから一応一つ持っとって

[岸川 ほづみ]

ソレを投げたらそっちの方向に行くやろって彼女は言うてたから、気休めかもしれんけど持っとってもらえたら

[楠木 甚之介]

なるほど、分かりました

ありがとうございます



 ほづみは千尋からもらった小さな鈴を楠木に渡しました。



[上人橋 たまき]

うまかっちゃん買いに行きましょ~♪

[岸川 ほづみ]

あるんやろかなあ



 ほづみとたまきはコンビニへ、楠木とアレンは教授からのもう一つの依頼である綾里 仁の住所へとタクシーで向かいました。









[楠木 甚之介]

とりあえず会いに行きますか

[池崎 アレン]

ササッと終わらせましょ



 楠木とアレンは綾里 仁の部屋である 405 号室の前までやってきました。


 ピンポーン。



だ、誰ですか?

[池崎 アレン]

綾里くんで合ってる? ここ

はい、そうです

[楠木 甚之介]

教授に頼まれて訪ねてきたんだ

最近学校に来てないということで、もしかして何か事件が起きてるんじゃないかという話を聞いて我々二人で来たんだよ



 玄関のドアが開き、中から男性が出てきました。



[池崎 アレン]

芳川教授に頼まれてきたんだけどさ

最近学校に行ってないみたいじゃん?

[綾里]

あ、今日…………今日って何日ですかね?

8月某日です

[綾里]

そうだったんですね

とりあえず、な、中に

[楠木 甚之介]

お邪魔します



 部屋の中に入るとまず、すぐに気付いたことがあります。

 キッチンの水道の蛇口がガムテープで完全に封鎖されています。そしてバスルームやトイレに至っては、ガムテープで目張りがされており完全に塞がれています。



【聞き耳】をどうぞ

楠木 甚之介【聞き耳】⇒ 失敗

池崎 アレン【聞き耳】⇒ 成功



 部屋の中に何かのにおいが充満していることにアレンは気が付きました。それはアロマの香りです。


 二人は綾里に促され、部屋の奥まで足を踏み入れました。

 室内はひどく散らかっており、しばらく掃除をしていない印象を受けました。



[池崎 アレン]

よっと、よっと

なかなか狭いね

[綾里]

すみません

[池崎 アレン]

まあいいんだけど、何で学校に来ないの?

[綾里]

じ、実はですね、事の始まりなんですが…………



 そう言って綾里は楠木とアレンに、とあるメールを見せました。



[池崎 アレン]

ふぅ~ん

[楠木 甚之介]

この「雄二」というのは誰のことかな?

[綾里]

「雄二」っていうのは俺のおじさんの名前なんだけど、おじさんはこの間亡くなったんだ

[楠木 甚之介]

そうなんですね…………

おじさんとは仲良かったんですか?

[綾里]

ああ、最近も丁度、亡くなる直前に遊びに行って話をしたり後だったんだけど…………いきなり死んでしまって

[池崎 アレン]

それで塞ぎ込んでいたわけ?

[綾里]

さすがにそんなことでは

少しはそれで塞ぎ込んでたのもあったけど、それとは別で実は…………


何か分からない…………いや、アンタたちに話しても信じてくれないだろう



 綾里は話すのを途中でやめて俯きました。



[池崎 アレン]

話して~

[楠木 甚之介]

実はさっき、同じように登校してない女の子のほうに話を聞きに行ったんだけど、その女の子も何か心霊現象的なことがあって登校してなかったんだ

[楠木 甚之介]

是非私たちに話してほしいな

[綾里]

言葉で言っても信じてくれないと思うけど…………液体の変な化け物に襲われるんだ

[池崎 アレン]

液体?

[楠木 甚之介]

襲われる?

[綾里]

そのメールが来てしばらくはいたずらだろうと思ってたんだけど

[綾里]

雨の日に家に帰る途中、変な黒い塊みたいなのがさ、いきなり襲ってきて…………その場はすぐに逃げてどうにかなったんだけど、それから水が出るところに近付くと突然ソイツが現れるようになったんだ

家にいるのが恐くてさ、ホテルを泊まり歩いてたりしてたんだけど流石に金がなくなって……


雨の日は外に出るのは危険すぎて……だから最近はずっと家にいるんだ

[池崎 アレン]

(なかなか信じがたい話だけどなー)

[楠木 甚之介]

襲われるっていうのはどういうこと?

何か被害があるの?

[綾里]

その液体に腕を掴まれて引きずり込まれそうになるんだ

だからずっと水は…………

【医学】か【目星】で情報が変わります

池崎 アレン【目星】⇒ 成功

楠木 甚之介【目星】⇒ 成功



 楠木とアレンは、綾里の口がカピカピに乾いていることに気付きました。



[池崎 アレン]

唇がカサカサだけど、何か緊張してるの?

リップ要る?

[綾里]

いや、大丈夫さ

そんなことがあったからここしばらく水を飲んでいないんだ

[池崎 アレン]

水を避けてるかんじ?

その割にアロマは焚くんだね

[綾里]

においをどうにかしようと思って

[楠木 甚之介]

その化け物は何かにおいがするの?

[綾里]

いや、部屋にこもっているからさ

[楠木 甚之介]

ああ、そういう

[池崎 アレン]

窓を開けたりしないの?

[綾里]

晴れの日だったら時々開けたりするけど、雨の日は水が入ってこないように目張りして閉め切ってるから

[池崎 アレン]

にわかには信じがたい話だけど

[楠木 甚之介]

そうですねえ

[綾里]

そうなんだよ

警察に言っても信じてくれなくて

[池崎 アレン]

それはボクたちにも見えるのかな?

ちょっとガムテープ外してみてもいいかね?

[綾里]

やめろ!



 蛇口に触れようとしたアレンの腕を綾里がバッと捕まえました。



[池崎 アレン]

痛い痛い痛いっ

[楠木 甚之介]

まあまあまあまあ



 アレンと綾里の間に楠木が仲裁に入りました。



[池崎 アレン]

(この本気具合はホントっぽい)

[綾里]

す、すまない



 綾里はハッとして慌ててアレンから手を離しました。



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登場人物紹介

池崎アレン(いけざき あれん)

ロックバンドのボーカリスト。

は、世を忍ぶ仮の姿であり、実態は財閥のお坊ちゃん。

大体のことはコネと財力で何とかしようとする。

自称コミュニケーション得意だが、人の話はあまり聞かない。

楠木 甚之介(くすき じんのすけ)

骨董店の店主。

着流しを着こなす温厚な紳士。二十代にして老成した感がある。

骨董品に関連した知り合いが多い。

岸川 ほづみ(きしかわ ほづみ)

私立探偵。元ポリス。

時たま毒舌が出るニヒルな二枚目。

巧みな話術で取り乱した人などを落ち着かせるのが得意。



▼その他の登場作品

【TRPGリプレイ:しゃりん卓】あまいのににがい

上人橋 たまき(しょうにんばし たまき)

精神科医。

イケメン大好きゆるふわ系女医。

最近ボクササイズを始めて腕力がついてきたことがちょっと自慢。

芳川 透(よしかわ とおる)

大学教授。

アレンの父と知人であり、楠木とも骨董品を介して知り合い。

高坂 千尋(たかさか ちひろ)

大学生。芳川教授の教え子。

綾里 仁(あやさと じん)

大学生。芳川教授の教え子。

しゃりんさん[キーパー]

初心者ぞろいのプレイヤーたちを真理へと導こうとする天の声。

ダイス

運命を左右する無慈悲な無機物。

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