04.不審なメール その3

文字数 2,362文字

[池崎 アレン]

うーん、でもねえ、このままじゃ水も飲めないし死んじゃうよ?

[綾里]

一応、ホラ



 綾里はだいぶ時間の経ったカピカピのみかんを指差します。



[楠木 甚之介]

一人でいるほうが危ないんじゃないの?

[綾里]

誰も信じてくれないよ、こんな話

[楠木 甚之介]

教授に言えばきっと信じてくれるんじゃないのかな

[綾里]

だからって教授に話してどうこうなることじゃ…………



 綾里はそう言って俯きました。



[楠木 甚之介]

どうしましょう、アレンくん

[池崎 アレン]

まあでもここにいさせてもね、何も解決しないからな

[池崎 アレン]

教授のところに一緒に行こうよ

教授を頼ったほうがいいよ

[綾里]

確かにアンタの言う通りなんだけど、他の人を危険にさらすことはできないんだ

アイツは俺だけを襲ってくるから

[池崎 アレン]

何で自分だけだと思うの?

[綾里]

雨の中ソイツに会ったときなんだけど、他にも人がいても俺を執拗に襲ってくるんだ

[楠木 甚之介]

他の人はそれに気付いていないの?

[綾里]

映画の撮影か何かと思ってるのか、みんな素知らぬ顔して全然気にしてなくて何もしてくれない

[綾里]

そういうこと1,2回しかなかったから確実とは言えないけど、たまたま雨で見えなかったのか、本当に見えてないのか分からないんだ

[池崎 アレン]

襲われる心当たりは無いの?

[綾里]

そんなの知るわけないだろ

[池崎 アレン]

襲われるようになったのはおじさんが亡くなってから?

[綾里]

いや、メールが届いてからだ

[楠木 甚之介]

あんまり話したくないことかもしれないけど、雄二おじさんはどういう風にお亡くなりに?

[綾里]

俺もちょっとしか死体は見てないんだけど…………何か大きなものに押し潰されたような、そんな死体だったらしい

[楠木 甚之介]

押し潰された? それは事故?

[綾里]

いや、それもいま調査中で原因は分かってないみたいだ

[楠木 甚之介]

とりあえず食糧とかは大丈夫なの?

[綾里]

買い置きしてたりみかんの山があるから



 綾里は段ボール箱の山を指差します。






[楠木 甚之介]

何か買ってこようか? 水……

[綾里]

水はやめてくれ!!



 綾里は突然大声を上げました。



[楠木 甚之介]

二人がいる前でもダメかな? 私たちがいるから

[綾里]

ダメだ、やめてくれ

[楠木 甚之介]

結構まいってるんだね

[池崎 アレン]

できれば芳川教授に自分から説明してほしいんだけど、それができそうにないから一旦ボクたちのほうから説明してきてもいい?

[綾里]

ああ、すまない…………

よろしく頼むよ

[池崎 アレン]

楠木さん、ボク戻ろうと思うんですけど

[楠木 甚之介]

そうですね、一旦帰りましょうか

[楠木 甚之介]

もし何か必要なものがあったら遠慮なく言ってくれ

買ってくるから



 楠木とアレンは綾里と連絡先を交換し、部屋を後にしました。






 楠木とアレンがマンションの外に出ると、ほづみとたまきが丁度到着したところでした。



[楠木 甚之介]

あ、どうも

[岸川 ほづみ]

お疲れさんです

どうでした?



 アレンはぼづみとたまきに綾里の話を説明しました。



[岸川 ほづみ]

ほうほう、別物ですね

[岸川 ほづみ]

とりあえず報告に行くか

たまきちゃんのほうは特に連絡来てへん?

[上人橋 たまき]

来てないね

こっちから送ってみる?



 たまきは千尋に LINE で「元気?」と送りました。

 千尋からは「元気です」とすぐに返事がありました。



[岸川 ほづみ]

こっちのほうは水場があったら出てくるってことやろ?

避けようがあるからよっぽどのことがなければ大丈夫やろな

[楠木 甚之介]

水が恐いっていうのはあんまりよくない状況だから何とかしてあげたいね

[上人橋 たまき]

水飲まないと死んじゃいますもんね

[池崎 アレン]

ボクとしては怪奇現象的なのはまったく信じてなくて聞いてたんだけど、みんなは信じてるの?

[上人橋 たまき]

千尋ちゃんが嘘を言っているなんて思えないですよ

[楠木 甚之介]

まあ、経験があるというか、変なことに巻き込まれたことがあるので


信じてあげましょう

[池崎 アレン]

今の状況を芳川教授に伝えに行ってそれで終わりでしょ?

[岸川 ほづみ]

学会から帰ってきてはるんやろかね

[上人橋 たまき]

電話かけてみる?



 たまきは芳川教授に電話をかけてみました。

 電話はつながらず、しばらくすると LINE が送られてきました。

 内容は「まだ少し時間がかかるのでまた後程連絡します」というものでした。



いま 18 時過ぎです

[岸川 ほづみ]

このまま夜が来るのやだなあ

[上人橋 たまき]

千尋ちゃんが心配なのよね

わたし千尋ちゃんちに行って一緒にうまかっちゃん食べようかな


教授への報告はお任せします

[岸川 ほづみ]

楠木くんたちはどないしたいん?

[楠木 甚之介]

大学に戻って教授が戻るのを待機しようかなと思います

[上人橋 たまき]

そうですね、楠木さんは芳川教授のお知り合いだし

[池崎 アレン]

もう帰りたい

[岸川 ほづみ]

そしたら報告を楠木さんに任せるんやったら、アレンくんは帰るし、ボクがここに残るしかあれへん

[上人橋 たまき]

アレンくん帰るの?

[岸川 ほづみ]

帰りたい子は帰ってもろてもええんちゃう?

教授の依頼は達成しとるわけやし

[岸川 ほづみ]

心配やから残ったほうがええかなとは思うけど、それはそれぞれの意思に任せましょか

[池崎 アレン]

ボクはもういいかなって思ってるんで☆

[岸川 ほづみ]

ほなお疲れ様でした

[池崎 アレン]

お疲れ様でした、まったね~☆

[上人橋 たまき]

(またはないな)



 あなたたちは全員の LINE グループを作り、それぞれに行動することにしました。

 アレンは早々にその場を後にして帰途につきました。たまきは千尋の部屋へ行き、ほづみは綾里の部屋に残り、楠木は芳川教授の下へ報告に行きました。



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登場人物紹介

池崎アレン(いけざき あれん)

ロックバンドのボーカリスト。

は、世を忍ぶ仮の姿であり、実態は財閥のお坊ちゃん。

大体のことはコネと財力で何とかしようとする。

自称コミュニケーション得意だが、人の話はあまり聞かない。

楠木 甚之介(くすき じんのすけ)

骨董店の店主。

着流しを着こなす温厚な紳士。二十代にして老成した感がある。

骨董品に関連した知り合いが多い。

岸川 ほづみ(きしかわ ほづみ)

私立探偵。元ポリス。

時たま毒舌が出るニヒルな二枚目。

巧みな話術で取り乱した人などを落ち着かせるのが得意。



▼その他の登場作品

【TRPGリプレイ:しゃりん卓】あまいのににがい

上人橋 たまき(しょうにんばし たまき)

精神科医。

イケメン大好きゆるふわ系女医。

最近ボクササイズを始めて腕力がついてきたことがちょっと自慢。

芳川 透(よしかわ とおる)

大学教授。

アレンの父と知人であり、楠木とも骨董品を介して知り合い。

高坂 千尋(たかさか ちひろ)

大学生。芳川教授の教え子。

綾里 仁(あやさと じん)

大学生。芳川教授の教え子。

しゃりんさん[キーパー]

初心者ぞろいのプレイヤーたちを真理へと導こうとする天の声。

ダイス

運命を左右する無慈悲な無機物。

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