02.不審なメール その1
文字数 4,083文字
たまきは思わず言葉を失い、ひとまず高坂千尋に手土産を渡しました。
たまきが特に診察をすることもなく、一見して千尋は挙動不審です。
室内や玄関の外など視線をキョロキョロさせ聞き耳を立て、不安そうに周りを警戒している様子です。
千尋はほづみとたまきを部屋の中へと促します。
千尋は二人にスリッパを出してくれました。
ほづみは何ら臆することなく白い粉が撒き散らされた部屋の中に入っていき、たまきはビクビクしながらその後ろについていきます。
ほづみは粉を見ながら千尋に尋ねました。
ほづみと会話をしている間も、千尋はしきりに視線をキョロキョロとさせ、物音一つにもビクビクしている様子です。
たまきは小さな声でほづみに話しかけます。
千尋はほづみに自分のスマートフォンを差し出してきます。
その画面を見てみると、メールが届いていました。
千尋は精神的に不安定で、上手く言葉にできない様子です。
ほづみとたまきが無理に聞き出そうとはせずに「ゆっくりでいいから」と宥めていると、千尋は意を決したように話し出しました。
たまきは資生堂パーラーのドリンクを差し出し、千尋の肩をさすります。
千尋はほづみとたまきに小さな鈴を手渡しました。
千尋はたまきと LINE ID を交換しました。
ほづみとたまきは部屋を出る前に室内を見回してみました。
たまきは粉まみれの床に気を取られていたため、あまり集中することができませんでしたが、ほづみは私立探偵という仕事柄、部屋の隅々まで観察してみました。
しかし今のところ室内にも何もいないようです。
たまきは千尋に「いってくるね」と告げ、二人は部屋から出て行きました。