01.教授からの依頼

文字数 3,894文字



 私立探偵の岸川きしかわ ほづみ』は、知り合いの大学教授から依頼を受け呼び出されました。

 教授の部屋へ入ると知らない三人が待っていました。


 三人が顔を合わせたところで、一人の男性が部屋に入ってきました。



[芳川]

皆さん、すみません、お待たせしました

ほづみさんもいらっしゃったんですね

[岸川 ほづみ]

こんにちは

教授にお話をいただいた岸川ほづみですけど、どちらさんたちですか?



 アレンは、父の知り合いである芳川教授の部屋を訪れていました。

 教授から父へ依頼があったため、その内容がどのようなものであるか聞いてくるように父から言われたのです。


 たまきもまた教授から依頼を受け、その話を聞くために部屋を訪れていました。


 楠木は元々教授とは骨董品関係で知り合いでした。

 今回はとある骨董品の話をするために偶然、教授を訪ねたのでした。



[芳川]

楠木さんすみません、たまたま鉢合わせすることになってしまいまして

[楠木 甚之介]

いえいえ

[芳川]

よければ楠木さんも話を聞いていただきたいのですが

[楠木 甚之介]

私もですか?

[芳川]

この前軽く話したじゃないですか

あの…………事件の話

[楠木 甚之介]

事件?

[KP]

前回の探索の話です

[芳川]

ちょっと今回、私の学校で二人ほど行方不明になっているんです

行方不明というのは少し大袈裟かも知れませんが、しばらく連絡のつかない学生が二人いるのですよ

[芳川]

一人目は綾里あやさと じんという男の子、もう一人は高坂たかさか 千尋ちひろという女の子です

[芳川]

この二人はうちのゼミの学生なのですが、しばらく大学に顔を出していないんです

様子を見に行きたいのですが、いま大学は休みの期間に入っていまして、ゼミ生だからと言って私が個人のお宅に訪問するのは色々とまずい


そこで今回はほづみさん、あなたに探偵として依頼をしたく呼ばせていただきました

[岸川 ほづみ]

はあ、なるほど

[芳川]

たまきさんは、もしかしたら心身的なもので家で塞ぎ込んでいるかもしれないので、そのフォローをしてもらうために呼ばせていただきました

[上人橋 たまき]

おっけー、任してください

[芳川]

ああ、その明るい様子で生徒も元気づけられるでしょうね

[上人橋 たまき]

そういうの得意なんですよ

[芳川]

アレンさん、ですかね

[池崎 アレン]

うん

[芳川]

今回はこういった依頼になるんですけど、できれば急を要しているので、あなたもできればついていっていただいてもよろしいですか

[池崎 アレン]

完全に要らない風なんですけどぉw

[池崎 アレン]

ボク用事があるんだよね~

親が行けって言うから来ただけなんだけど、正直この三人でいいかなって☆

[芳川]

実はアレンさんもお父さんのほうから話を聞いていましてね

あなたも何か以前事件に関わったことがあるという話を

[池崎 アレン]

んん~? 無いと思う

[芳川]

その経験をできれば…………

[池崎 アレン]

話聞いて?

[芳川]

まあ、無理にとは言いませんが

[池崎 アレン]

もう一回父さんに聞いてみるわ

ちょっと電話かけてくるね☆



 アレンは電話をかけに部屋から出て行きました。



[岸川 ほづみ]

ええ歳こいてお父さんに聞かんと話も進められへんのか

[上人橋 たまき]

(口が悪い)



 電話を終えたアレンが部屋に戻ってきました。



[池崎 アレン]

あー、ゴメン

やっぱ行くことにするわ☆

[池崎 アレン]

細かい話は三人にしといて

ボクはついていく~ってかんじで

[上人橋 たまき]

(うわあ、この人話聞かないんだ)



 たまきは内心引いてます。



[芳川]

ほづみさん、これが二人の住所になります



 ほづみは芳川教授から綾里仁と高坂千尋の住所のメモを受け取りました。

 二人の住所は大学を挟んでほぼ反対方向に位置しており、大学からタクシーを使えば 30 分、バスなら 40~50 分程度の距離です。



[岸川 ほづみ]

分かりました

全員揃って行かなあかんってことでええですか

[芳川]

それは任せますが…………



 芳川教授はチラッとアレンを見ます。



[上人橋 たまき]

はーい、先生

タクシー乗ったら経費で落ちますか?

[芳川]

大丈夫ですよ

私の名前で領収書をもらっていただければ

[上人橋 たまき]

タクシーで行きましょ

[芳川]

他にも経費が出たら私の名前で切ってもらえば大丈夫です

[池崎 アレン]

お名前何でしたっけ?

[芳川]

私の名前は芳川よしかわ とおると言います

[芳川]

それでは宜敷お願いします

私は今から学会に出なければいけないので少し連絡がつかないかもしれませんが、一応連絡先をお伝えしておきますね

[芳川]

学生をよろしくお願いします



 芳川教授はあなたたちに LINE の ID と電話番号を教えた後、鞄を持って部屋の外へと出て行きました。



[岸川 ほづみ]

ここにおっても何も進まんですし、どっちからか行きましょか

[楠木 甚之介]

行きますか

[池崎 アレン]

タクシー呼びますー?

[上人橋 たまき]

どっちから行きます?

[池崎 アレン]

どっちって何?

[岸川 ほづみ]

せやから二人様子を見に行かなあかんのやろ

[池崎 アレン]

なるほど~

ほぼ聞いてなくってゴメンね☆



 たまきはアレンに不安を感じ、一歩離れました。



[上人橋 たまき]

女の子のほうから行きます?

あんまり日も遅くなると女の子のところに訪ねにくいしね

[岸川 ほづみ]

せやね、男ばっかりやし

[KP]

時間は 14 時くらいです

バスで行く場合、早めに着きたいなどあれば【幸運】で振ってもらいます

[上人橋 たまき]

タクりましょ、タクりましょ、経費で落としましょ

[岸川 ほづみ]

そのほうが早いやろな

[池崎 アレン]

バスとか乗ったことないし~

[岸川 ほづみ]

社会勉強が足りてないねえ





[岸川 ほづみ]

一応、自己紹介しときますね

岸川と申します、よろしく

[池崎 アレン]

自分はアレンなんで☆

[上人橋 たまき]

(おお……下の名前しか言わないパターン)

[楠木 甚之介]

アレンくん、外国のかたなんですか?

[池崎 アレン]

母親がね

[楠木 甚之介]

ハーフ? 日本語は大丈夫?

[池崎 アレン]

バリバリ

[上人橋 たまき]

どこのハーフなんですか?

[池崎 アレン]

日本とアメリカ

[上人橋 たまき]

へ~~~

(イケメンだなあ)



 たまきはアレンを見て目を輝かせますが、アレンは気にしていない様子です。



[楠木 甚之介]

私は楠木です

よろしくお願いします

[岸川 ほづみ]

じゃあ自己紹介も終わりましたし、行きましょか

タクシーでええんですよね?

[池崎 アレン]

もちろ~~ん☆



 あなたたちは大学を出てタクシーに乗りました。



[上人橋 たまき]

手土産とか要らない?

初対面の4人が行くわけだしお菓子とか

[岸川 ほづみ]

なるほど

[池崎 アレン]

これどこに向かってるの?

[上人橋 たまき]

高坂千尋さんの家

[池崎 アレン]

みんな場所知ってるんだね~

[岸川 ほづみ]

さっき住所もらってん

[楠木 甚之介]

(彼はついてくる必要あるかな)

[上人橋 たまき]

(教授の話聞いてなさすぎじゃない?)

[岸川 ほづみ]

(わざわざ連れて行けってことは何かあるんやろし、しゃあない)

[池崎 アレン]

フンフ~ン♪



 三人の心配は露程も知らず、アレンはイヤホンをして音楽を聴き始めました。



[岸川 ほづみ]

こういうのはたまきさんが選んだほうがええんちゃいます?

[上人橋 たまき]

そうねえ

じゃあ資生堂パーラーでゼリーのドリンクを買います






 あなたたちは百貨店で手土産を買い、アレンが時折「もう着く? もう着く?」と尋ねてくるのを少々煩わしく感じながら目的地に到着しました。

 領収書をもらってタクシーから降り、高坂千尋のマンションの前に立ちました。






[池崎 アレン]

タクシーって揺れるね~

[岸川 ほづみ]

普通に行く?

誰か下で待ってる?

[楠木 甚之介]

大人数で行くより一人行って、後から来たほうがいいんじゃないですか?

[池崎 アレン]

もう終わった?

[岸川 ほづみ]

ちょっと黙っとれ

[KP]

www

[岸川 ほづみ]

二人残って二人行きましょうか?

[上人橋 たまき]

女の子だからわたしは行ったほうがいいよね

[岸川 ほづみ]

自分がついて行きましょ

[楠木 甚之介]

じゃあアレンくんと下で待っておきます




 楠木とアレンをマンションの下に待たせ、ほづみとたまきは、高坂千尋の家・305号室の前までやってきました。



[上人橋 たまき]

胸騒ぎがするんですよね、気のせいですかね

[岸川 ほづみ]

そうですね

まあ、頼まれた時点で何かあるっちゅうことやろから


とりあえずチャイム押してみますか



 ピンポーン。


 ほづみは高坂千尋の部屋のチャイムを押しました。



だ、誰ですか?



 扉の向こうから声が聞こえました。



[上人橋 たまき]

わたしたち芳川教授に頼まれまして、元気かな~という御様子だけ伺いに来たんですけども、玄関を開けていただくことは可能ですか?

あ、あのメールの…………



 玄関の扉が開きました。



[上人橋 たまき]

こんにちは~

芳川教授の知人の上人橋と申します

[岸川 ほづみ]

こんにちは

同じく知り合いの岸川と申します

[上人橋 たまき]

最近あまり学校に来られてないという風に聞いたんですけれども、体調とか悪かったりするんですかね?

大丈夫ですか?

[KP]

玄関先なので、ここで二人とも【目星】をどうぞ

上人橋 たまき【目星】⇒ 成功

岸川ほづみ【目星】⇒ 成功



 ほづみとたまきが部屋の中の様子をチラッと見ると、なぜか床一面に白い粉が撒き散らされていました。

 また、天井からはビニールテープの先に鈴蘭がついた鈴蘭テープがぶら下げられ、部屋中にのれんのように連なっていました。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

池崎アレン(いけざき あれん)

ロックバンドのボーカリスト。

は、世を忍ぶ仮の姿であり、実態は財閥のお坊ちゃん。

大体のことはコネと財力で何とかしようとする。

自称コミュニケーション得意だが、人の話はあまり聞かない。

楠木 甚之介(くすき じんのすけ)

骨董店の店主。

着流しを着こなす温厚な紳士。二十代にして老成した感がある。

骨董品に関連した知り合いが多い。

岸川 ほづみ(きしかわ ほづみ)

私立探偵。元ポリス。

時たま毒舌が出るニヒルな二枚目。

巧みな話術で取り乱した人などを落ち着かせるのが得意。



▼その他の登場作品

【TRPGリプレイ:しゃりん卓】あまいのににがい

上人橋 たまき(しょうにんばし たまき)

精神科医。

イケメン大好きゆるふわ系女医。

最近ボクササイズを始めて腕力がついてきたことがちょっと自慢。

芳川 透(よしかわ とおる)

大学教授。

アレンの父と知人であり、楠木とも骨董品を介して知り合い。

高坂 千尋(たかさか ちひろ)

大学生。芳川教授の教え子。

綾里 仁(あやさと じん)

大学生。芳川教授の教え子。

しゃりんさん[キーパー]

初心者ぞろいのプレイヤーたちを真理へと導こうとする天の声。

ダイス

運命を左右する無慈悲な無機物。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色