参考文献

文字数 1,941文字

 さてみなさんお待ちかね、本章では付録として環境問題の理解に役立ちそうな文献のご紹介をしたいと思います。文献名だけ羅列してある一覧表みたいなのがあるでしょ、ああいうのはわたし、ほとんど研究者からの威嚇だと思うのですよ。
 俺はこんだけ本読んで見識を高めとんのやぞ、ひれ伏せ愚民どもめ! 的な。そうした選民意識を排除するため、本章ではあくまでいち市民としての視点から、著者の一言を付して意義のあるリストにしたいと考えました。1冊でも手に取っていただければ幸甚です。

環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態 ビョルン・ロンボルグ 訳 山形浩生
 デンマークの政治学者、ロンボルグの放つ強烈な1冊。2段組、600ページ超え、図表100点以上、一次資料参照用の注にいたっては1,000点超え。いったいこんなもん誰が読むんだとお思いでしょうが、さにあらず。
 山形さんの配慮(軽快な語り口の口語調)がマッチしており、お堅いイメージの払拭に成功、経済厚生学などの専門分野に通じていなくても読み通せるようになっております。
 これでもかと通俗的な環境危機を斬り捨てていくさまは痛快であります。本書の信頼性を担保しているのは、著者自身がグリーンピース(環境保護団体の最右翼)出身で、出典資料もIPCCなどの公的機関から出されているものを使用している点。ぜひ一度チャレンジしてみてください。インドなんかへいくよりも価値観が変わることうけあい。

不機嫌な太陽 H.スベンスマルク 訳 桜井邦朋
 IPCCの提示する温暖化学説に一石を投じる1冊です。二酸化炭素の増加だけでは説明のつかない中世の温暖化やくり返される氷期などを、地球が銀河系のある地点を通過する際の宇宙線曝露によって説明するという壮大な仮説。
 トンデモ理論のように聞こえますが、小型の加速器による実験も行われており、二酸化炭素単体悪玉説はほとんどこの1冊で粉砕されているのでは、と思わせるほどの論理力を持っています。

銃・病原菌・鉄 ジャレド・ダイヤモンド 訳 倉骨彰
 文明の発達がいかに起きたかを緯度・経度や品種改良可能な動植物の分布などから解き明かす、刺激的な本です。本論とのかかわりは主として野菜の品種改良のくだりですが、それ以外のパートも読みごたえ抜群。読んで損はありません。

利己的な遺伝子 リチャード・ドーキンス 訳 日髙敏隆
 進化論の概要を掴むのにこれ以上の良書があるでしょうか。いわずと知れた伝説的名著。自然淘汰が遺伝子に作用することを鮮やかに描き出しています。ドーキンスは比喩の名手として名高く、本文もユーモアに満ちてたいへん読みやすい。
 いまや押しも押されぬ無神論者の科学啓蒙家となったドーキンスは、これ以外にも多数の著作をものしています。「神は妄想である」あたりなんか、思わず「やってるねえドーキンス」とうなりたくなります。

もうダマされないための「科学」講義 菊池誠ほか
 物理学者、サイエンスライター、科学哲学家などバラエティに富む陣営による科学講義です。本論とのかかわりはえせ科学、遺伝子組み換え作物の評価あたりでしょうか。
 それ以外の論稿も非常に示唆に富む内容で、コンパクトな新書とは思えない充実した内容。科学的思考を養う最適の1冊でしょう。

沈黙の春 レイチェル・カーソン 訳 青樹簗一
 すべてはここから始まりました。よくも悪くも環境問題という概念自体を世界へ普及させた歴史的1冊ですね。出版年も古く、時代にそぐわなくなって久しい内容ではあるけれども、これを読まずに環境問題を論じるような輩はモグリでしょうなあ。

病原体進化論 ポール・W.イーワルド 訳 池本孝哉
 病原菌がなぜ激しい毒性を持つものとそうでないものがいるのか、進化医学的見地から解説している本です。非常に示唆に富む知見が満載。ところどころ内容が高度でついていけない部分もありましたが、著者の主張は十分伝わるでしょう。目からウロコとはこのことです。

地球生命圏 ガイアの科学 ジェームズ・ラブロック 訳 星川淳
 これほど誤用、改悪、拡大解釈された理論がかつてあったでしょうか。ためを張れそうなのは進化論(適者生存を人間社会へ拡張した社会ダーウィニズムとして援用)くらいのものでしょう。
 わたしは(環境保護論者による手術後の)ガイア理論に長らく疑問を感じておりました。この本を読むきっかけも「さてどんなトンデモ話が聞けるのやら」という、冷やかし半分だったのですね。そんな先入観を持っていたにもかかわらず、読後の感想は「ラブロックさん、いままでスマンカッタ……」でありました。
 ぜひご一読ください。一次資料にあたることの大切さをまざまざと思い知らされるはずです。
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