文字数 628文字

それから何度か彼と会う機会があった。
主には捜査班との合同捜査のためだったので、研究所で会うことはほとんどなかったが、本部で見かける時はいつも声をかけていた。

「お疲れ様です」
「お疲れ。ハリー、いいところに」
「なんですか?」
聞く前から彼は僕の手を取ると何かを握らせた。
掌を開くと一口サイズのチョコレートだった。
「さっきアルに貰ったんだけど、俺、甘いもの苦手なんだ。――ハリー、食べといて」
「ありがとうございます」
まさに疲労が溜まっていたので、そのプレゼントは自分でも意外なほど嬉しかった。
と同時に、ふと違うことを思い出した。
確か以前、研究室に来たときにコーヒーと一緒に出したチョコレートはおいしそうに食べていたような気がしたが。
アルフォードは僕に湿っぽい視線を向けていた。
「何だ。一人で笑って」
「いえっ」
しばらく不満そうな顔を向けいていたが、ふいにふっと表情を歪める。
ぐしゃっと髪を乱された。
「なんですかっ?」
「いや、元気出たみたいでよかったと思って」
そう言って慈愛に満ちた微笑を浮かべる。
その顔を直視していられず、僕は髪を乱されながら顔を伏せた。

一カ月も経たないうちに僕たちはすぐに打ち解けていた。
アルフォードは見かけによらずユーモアに溢れる男だった。
時々胸を締め付けられるような苦しさを感じることがあったが、それがなんなのか、深くは考えないようにしていた。
そしてある日ぱったり、彼の姿を見かけなくなった。
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