03

文字数 991文字

なにを!?

 と、聞き返すヒマはなかった。


 魅木の小さな身体が、信じられないほどの力で俺を布団に押し倒す。


 必死に押し返すが、小さな身体はビクともしない。

ちょ、力強すぎ
当然です。誰がここまで運んだと思ってるんです
 てっきり大人が運んでくれたのかと思ってたけど、この言い方からすると運んだのは彼女か!?
見た目のわりに軽くて驚きましたよ

 驚いたのはこっちだ。筋肉が落ちたとはいえ、俺はクラスでもデカい方だ。それを平然と軽いだなんて。


 しかしその言葉がハッタリでないのは押さえ込む彼女の力が証明している。

さっ、では始めましょうか
まてっ、話せばわかる
 話してわかってくれなかったじゃないですか。

 さっ、据え膳食わぬは男の恥ですよ

 そう言うと、魅木の小粒な唇が俺の唇に重ねられた。


 かわいい年下の巫女さんに無理矢理キスとかなんだこの状況は。

 だがそれを意識した途端、心臓の鼓動が強くなった。

ふふふふふふっ……

 キスを終えた魅木が、顔を上げ満足げに微笑む。


 かわいいのになんだか怖い。

ふふふふふふっ……
ふふふふふふっ……
……………………
 魅木は笑い続けたまま、次の行動に移らなかった。


 それどころか、困ったようにたずねてくる。

あの、次はどうすればいいんですか?
 たすかった。

 どうやらキスより先の知識はないらしい。

計算外です。

キスが済めば、あとの展開は成り行きでなんとかなると思ったのに……

 そんな行き当たりばったりの成り行きでどうこうなってたまるか。
ちょっと待っててください。

まだ終わってませんからね

 彼女は俺に馬乗りになったまま、さっきまで自分が座っていた座布団の下へと手を伸ばす。

 そこから分厚い雑誌をとりだし確認をはじめた。


 表紙しか見えないが、どうにもお子様には不釣り合いなアダルトな雑誌だ。

…………
 これなら、なんとかなるかもしれん。
なるほど、まずはハダカになるんですね
 雑誌から得た知識を実行しようとする魅木に俺は『待った』をかける。
魅木魅木魅木魅木、ちょっと待ってもらえないか?
はいはいはいはい、いいですけど逃がしませんよ?
逃げないから話を聞いてくれ
わかりました。

でもウソをついたら、指の可動域を反対に広げて逆じゃんけんできるようにしちゃいます

 俺の手に、そんなじゃんけん機能はいらない。

 人食いの鬼婆みたいな発想をするヤツだ。

まず俺たちはお互いのことを知っておくべきだと思うんだ
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