04

文字数 1,600文字

 魅木は座布団の上に正座をし、俺は布団の上にあぐらをかいた状態で向かい合う。

 こぼれたお茶を入れ直してもらい、それを飲んで息を整える。


 お茶よりもスポーツドリンクが好きなんだけど贅沢を言ってる場合じゃない。

 いくつか聞いておきたいんだけど、まずどうして俺なの?

 魅木くらいかわいければ学校で人気者だろ。


 好きな男子とかいないのか?

 あいにくと私は学校へ行ってません。

 なので学校の知り合いも好きな男子もいません

 不登校だろうか?

 そういうタイプには見えないが。

 だからって俺と無理矢理じゃなくても……。


 運動部の連中だって、よくここまで来るんだろ?

参拝にいらした方や、通りかかっただけの人を襲うなんて、どこの鬼婆ですか
いやいや、今、俺にやってることは正にそうだから
失敬な、影史はちゃんと神社の境内に落ちていたのです。

それを拾ったのは私ですから、影史はやっぱり私のものです

落ちてたんじゃなくて、倒れてたんだ!
 俺の声はだんだんと悲鳴に近くなっていく。
 だからしっかり蘇生させたではないですか。

 所有権があるだけでなく、私はあなたの命の恩人でもあるんですよ。


 影史はちゃんとお礼をするべきです

それはまぁ、そうなんだけど……
 いかん、なんだか押され気味だ。
そもそも、どうして大人になんかなりたいの?
 大人なんてロクなもんじゃないだろうに。


 煙草を吸えて、酒が飲めること以外になんのメリットがあるんだ。

子どもでは不便だからです。


行動の制限が多すぎます。

それはわからなくもないけど。

でもそれって、成長の問題だからHしたところで変わるもんじゃないだろ?

 そういえば、エッチなことをすると髪の毛が伸びやすいとか、ホルモンバランスがなんたらで胸が大きくなるとかあったな。


 でも魅木の成長具合(ツルペタ)はそういうことで、どうにかなるとは思えない。

 必要なのは成長期だろ。

むっ、そうなのですか?
そうだ
 ここで弱みを見せると押し返されるので口調を強める。
ウソを吐いてませんか?
ついてない
指、曲げちゃいますよ?
やめろ
千羽鶴を折るみたいに丁寧に丁寧に折りますよ?
マジでやめてくれ
 瞳を覗き込む魅木に俺は懇願する。
でも、他に手段がありませんから、とりあえずは試してみましょう
 やり方を知らなかったってことは、未経験なんだろうけど、それを『ものは試しに』で実行してしまっていいものか。
 だいたい、影史はどうして私との交接を拒むのです?


 年頃の殿方というのは、脳内まで白い液体が満たされていて、ちくわの穴をみても発情する生き物だと書かれていますよ

 再び座布団の下からとりだした教科書(エロざっし)をパンパン叩きながら魅木は主張する。
本の知識を鵜呑みにしないように
魅木がもっと育っていたら迷ったかもしれない……とは口にしない。
 そんなに私に魅力がありませんか?


 自分でいうのもなんですが、かわいい顔をしてると思うんですが?

 確かにそれには同意する。


 同意するが押し返されそうなので言わないが。

私に何かご不満が?
 胸を含め、全体的な成長に……とは言わない。


 『ならあなたが育ててください』とか言われたら困るし。

 君に問題があるんじゃない。


 俺に問題があるんだ

不能ですか
ちがう
初めてで緊張なされているのですね
もっとちがうっ
 なんだ、この耳年増は。
では、もしや殿方がご趣味と!?
それだけは絶対にない!
 ムキになるところがまた怪しい。


 でも、影史がそのような趣味でも私の愛の力をもって更正させてあげますから。

愛なんて言葉、初対面の相手に初体験を済ませようとするヤツが言うな!

 怒鳴ると、心臓の鼓動が強くなった。いかん、ムキになりすぎた。


 慌てた心臓に手をあて、深呼吸で荒ぶった鼓動を落ち着かせる。

どうしました?

 俺の様子を心配した魅木が心配そうに尋ねる。


 そんな彼女に、俺は静かに自分の身体のことを語りはじめる。

実はさ、俺……心臓が悪いんだ
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