01
文字数 671文字
神社へ向かう石階段を一歩一歩登っていく。
コンクリのきれいな階段とはちがい、歪みのある段が思ったよりも身体に堪えた。
傾いた太陽が、足下に影をポツンとつくっている。
昼間は同じ野山高の運動部連中が足腰の鍛錬に利用しているのだが、この時間になっては誰もいない。
鳥の声もなく、虫の音もなくあたりは静かだ。
――引き返した方がいいかも。
階段の中腹を越えてしばらくしてから迷いはじめる。
せっかく登って来たのに、このまま戻ったのでは徒労になる。
そこまでして神様に頼るつもりはないけど、頂上から見下ろす風景はきっと爽快だ。
帰るにしたって、登った分を降りなきゃならない。
なら最後まで登り切って神社で休んだほうがいい。そうに決まってる。
額の汗をぬぐい再び石段を登りはじめる。
徐々に山頂は近づいてくる。
だけどそれとともに心臓の鼓動も少しずつ早くなった。
――やっぱ不味いかも。
それでも引き際を見失った俺は、あと一段、あと一段と足を動かしていく。
やがて最後の一段を登り切り、開けた場所にたどりついた。
「到着……」
早く休める場所をさがさないと。
背後を振り返りもせずに休憩場所を探す。
だけど休める場所をみつけるより先に、心臓が締めつけられるように痛んだ。
――苦しい。
痛みが蜘蛛の巣のように細かく全身に広がっていく。
そのまま身体を制御できなくなり、石畳の上に崩れ落ちる。
力のこもったまぶたが目への光を遮ってしまう。
助けを呼びたくても大きな声はだせない。
――そうだ携帯を
しかし緊急ダイヤルを押すより先に、俺の意識は現実を離れていった。