第11話 雪女の補習授業

文字数 7,882文字

「準備が良ければ始めます」

これから今まで経験したことがない事が起こる雰囲気を感じた。
厳しい授業じゃないことを祈るしかなかったが、雪女の言葉はいつもどおりだった。

「何が起こるとしても、あなたの感じ方次第です」

「でしょうね……」

「では、花畑の先にまっすぐ進んでください。その先に川がありますから、向こう岸まで渡ってください」

嫌な予感がした。

「ちょっと待って、知ってるぞ、これって三途の川じゃないの? 川を渡ったら死ぬってやつだ! オレはまだ死にたくないんだけど! まさか、オレを殺して無理やり星へ連れて行く気じゃ……?」

「これは地球の制御システムのひとつです。機械的なものですから使い方を間違わなければ危険はありません」

機械的なものとはどういうことだろうか。三途の川は誰かが作ったものなのだろうか。

「川の向こうに行くまでにあなたの記憶が自動的にスキャンされます。スキャンが終わったらまた戻ってくるのです」

「でも三途の川を渡ると死ぬっていうから……」

「サノロス、あなたを死なせることはしません。まだ地球の時空間で学ぶことがあるのです。それに、あなたはまだ地球から脱するための遠心力を得ていない」

なぜか雪女は僕のことをサノロスと呼んだ。少々気になったが、しかし、問題はそこではなかった。

「ちがうよ、川が怖いって言ってるんだよ……。オレの守護霊だったら知ってるだろ、オレが泳げなんいってこと……」

僕が怖がって躊躇しているとクールな雪女は淡々と答えた。

「歩けばいいのです」

「なんだよ、まるでヒロトみたいなことを言うじゃないか!」

僕は三途の川に足を踏みいれて歩き出した。夢なのにヒヤッとした水の感覚があった。歩き出すと水深はせいぜい膝くらいまでだった。水の抵抗を受けてゆっくりと歩いた。思ったよりも早く向こう岸に着いた。

「スキャンが完了しました。それ以上先へ行かず、ゆっくりと引き返してください」

再び元の岸へ戻ってくると、突然目の前に複数のスクリーンが現れて、僕が生まれてからの十七年間の人生が映画のように映し出された。怖い思いをしたこと、嬉しかったこと、遠泳大会での仮病の罪悪感、ミヒロと会った時の胸のときめき、不思議なことにすべての感情が追体験された。しかも自分の体験だけではなく自分の言動で相手がどう思ったかも伝わってくるのだった。それは時に心地よく、時に非常に不愉快でもあったが、膨大な感情と人生の筋書きが一瞬で頭に入ってきたことに驚いた。

「これは感情のソート、つまり記憶の整理をしているのです。地球図書館の蔵書管理システムといっても良いでしょう」

映画のスクリーンはダイスケとして生まれる直前の記憶を映し出した。その時にはもう気がついていた。近代化された世界で、僕が王になれる場所はどこにもなく、あったとしても全て先約で埋まっていたことを。だから已む無く最初の場所、荒吐町へ帰ってきた。同じ場所で人としての栄光とは何かを確認したかったのだ。

「結局環境は大きな問題ではなく感情が重要なのだと気が付き始めたのです。初めて人間になった地へ戻り、形を変えて再び今まで得てきたものを得られるか確かめようとしたのです」

スクリーンはさらに過去へ遡っていき、一つ前の人生の記憶の追体験が始まった。これはヒメからファーストフードで聞いた僕のイギリス人だった時の前生だ。しかも僕は女だった。貴族階級の家、上流階級の生活、それは堅苦しく快適とは言えなかった。
使用人もたくさんいた。僕は使用人たちに恵まれた。夏に熱射病で倒れた時、オリバーが広い庭の片隅に横たわる自分に気が付かなければ命を落としていただろう。
実はオリバーをはじめ使用人たちは僕が王だった時の親衛隊の生まれ変わりだったのだ。彼らはみな信頼できた。僕のために命を差し出してくれた面々がいつの時代も僕を守ってくれた。気のせいか僕の両親や学校の先生も彼らの生まれ変わりに感じた。

その前の過去生も僕は欧州を選んでいた。欧州の王族、貴族、階級社会は僕にとって目的を達成するのに都合の良いものに見えたのだ。しかし時が流れるにつれ、徐々にうまく行かなくなっていった。

「あなたは自分の成功パターンを確立しましたが、それに固執しすぎたため、時とともに自信を失っていきました」

前世を猛烈な勢いで映し出した映画のスクリーンはさらに過去へ遡り、西暦三百年くらいだろうか、日本と思わしき場所にいた。弥生時代か古墳時代あたりだろうか、小高い丘のような場所の麓には竪穴式の住居がたくさんあった。丘を登ると高床の倉庫や大きめの屋敷など、少しばかり上等な建物がいくつか見えた。
この場所で数千年に渡り何度も生まれ変わって王になったが、ついに最後の王として君臨することになった。僕の時代が倭国大乱とともに終わろうとしていたのだ。領土も民の数もいくさのたびに減り、ついに王の直轄地だけが残った。僕たちの国はもう他国を攻め込む余力すらなかった。

敵が目前にやってきて死を覚悟した時、大きな地震が起こった。大地震にひるんだ敵は一瞬足を止めたが、揺れがやむとまた進軍し始めた。僕は地震で敵が足止めされているうちに民を安全な場所に逃がし、兵士たちを連れて敵を海辺までおびき寄せた。海岸は大きく潮が引いて広大な砂浜が露になっていた。追ってきた敵兵は僕たちを取り囲み、海辺が最後の戦場となった。必死で戦う僕と兵たち。その時だった、戦いに夢中になっていた僕たちを敵兵もろとも巨大な津波が飲み込んでいった。津波に気が付いた敵兵たちは戦いを捨て逃げる者もいたが、多くのものたちが津波にのまれて死んでいった。
黒い色をした津波が僕を容赦なく襲い、水の中で転がった。苦しい、息ができない、気が遠くなる、そうだ、そこで王としての最後の人生が終わったのだ。

僕の映画はさらに過去へ遡る。その前の人生もまた王だったのだ、数千年に渡り王として君臨した。これはいつだろうか、紀元前、縄文時代だろうか、何度も同じ日本で、そして同じ場所で王になっていた。その地は何となく見覚えがある地形だと思ったら、荒吐町だった。ここを拠点に日本全土を治めていたのだ。いや一時的には世界を支配下におさめていた時代もあったようだ。
僕が一万年前にやってきた時は、ここらは海だったのだろうか、学校の授業で習った縄文海進だ。昔は地球が温暖化していて水面が今よりも高かったのだ。僕の国は安泰だった。もう長らく何千年も僕の血筋で治められていて、何代も何代も、僕はここで王に生まれ変わったのだ。
しかし僕は海に神のような畏怖を感じていた。いつも僕の民と領土は津波の脅威に晒されていた。だから現在の僕は海に恐怖を覚えたし、プールも水泳の授業も、そして水を見るのも大嫌いなのだ。そして僕が最後にこの地で王になったときも大地震と津波で国が滅びた。
過去を何代もさかのぼると、僕の王国は何度も津波で被害を受けていた。なぜ海から離れられないのだろうか。水から逃れられないのだろうか。

「あなたは意図的にその場所を選びました」

そうだ、その通りだ、僕の記憶は最初の最初に戻った。僕は地球の営業マンに依頼した。物質的な肉体を維持するために必要な資源が簡単に手に入る豊かな土地を希望したのだ。地球で海と呼ばれる場所、そして川の入り江、そこは食料を得るにも世界への交通、貿易にも都合が良い場所なのだ。古代都市が栄える条件なのだ。火山帯ゆえに地震と津波は多いが、そこから手に入る鉱物も武器製造のためには必須の資源だ。
水の恵と、水の災い。そうだ僕らの星も一万年の洪水期に入ったのだ。水を制御すること、水を知ることで星を改善するための手掛かりを得たかったのだ。なんと、水を呼び寄せていたのは自分自身だったのだ。

「宇宙船は、その場所にナグラスロッドを配置しました」

星の仲間との絆を維持するため、最初の王国ではナグラスロッドの近くに王宮を構えた。結局ナグラスロッドを見つけ出したが使い方もわからず国の宝、国の守り神、雷(いかづち)の杖としてそれを祀った。稀にそれに触れればマテラスの夢を見ることもあったが、戦争の連続という現実のドラマの激しさに、すぐに夢の世界のことは頭から離れていった。

「時空間の記憶、人間の記憶は強烈で抗えるものではありません。それはやむを得ないことです」

しかし、地震と津波の国で十数回目の王になったときだろうか、大地震の後に必ず津波が来ることを悟った僕は事前に王宮を離れた。その時の津波で王宮とともにナグラスロッドは流されてしまった。

「ナグラスロッドの流出とともにサノロスを見失った星の仲間たちは、彼の微かな周波数だけを頼りに地球上を探し回りました」

王宮が津波被害にあった後、逃げ出した王の権威は一時的に落ちてクーデターが起こった。僕は信頼していた部下たちの一人に毒殺されたのだ。死んで肉体を失ったが、しばらく何が起きたかわからず、部下が王として立つのを見て腹を立て周りに怒鳴り散らした。ところが僕の言うことを聞く者はいなかった。部下たちは僕が見えてなかったようだった。
亡霊となり混乱した僕は、海に入り死のうと思ったが、すでに死んでいるので死ぬこともできず、ただ海を漂っていた。そこで神の声が聞こえたので先へ進むと、その神は月のエントランスゲートで僕を待っていたマテラスだったのだ。

「あなたは、突然に呼び出されて腹を立てていました」

そうだった、あの時は月のエントランスゲートの煩わしさを嫌ったのだ。あそこで順番を待っていたら僕の血筋が王国から途絶えてしまう。そのため、わざわざ月へ連れ戻したマテラスを敵の仲間だと疑い、忌まわしく感じたのだ。
地球を見渡すと月など経由しなくとも周囲には人間体験をショートカットできる入り口がいくつかあった。かつて地球に住んでいた何物かが地球外の知的存在と結託し、月のエントランスゲートを真似て作った偽のエントランスゲートだ。彼らからこの裏口を案内され、そこを経由すれば、短期間で転生することができたのだ。

「裏口を通ることで、あなたは記憶の整理ができなくなった。あなたは死を迎えるごとにサノロスであることを思い出すチャンスを逃し、すぐに人間となり、とめどなく人間の記憶だけが蓄積されたのです」

しかし、それでよかったのだ。忘れる必要があったのだ。その時にナグラスロッドが人間体験の邪魔になることを悟ったのだ。いや、ナグラスロッドだけではない、故郷の星の仲間たちの存在も同様だ。もしも僕がナグラスロッドに気が付いて、そこで人生の種明かしを知ってしまったら失望しただろう。僕が地球で得られる特殊なエネルギーを理解して吸収する妨げになったからだ。僕が人間として得るもの、得ようとしたものが途端に価値のないガラクタになってしまうのだ。

「おかげでそのエネルギーをあなたは得ることができました」

次に王になったとき、ナグラスロッドも、星の仲間の記憶もすべて拒否して初期設定から外した。最初でこそ星へ戻ろうと思えばいつでも星に戻れると思っていたが、それ以降の一万年は星へ戻りたいなどと一瞬たりとも思うことはなかった。

「あなたは自ら、記憶障害、つまり人間中毒に陥る道を選んだのです」

その後、八千年ほど王として何度も転生し君臨したが、ついに王国を失った。次の王の座を求めたが、王の時代は終わったのだ、王であることですべてのことが叶えられたが時代が変わったのだ。もっと狡猾な時代へと変わったのだ、あの頃のように単にパワーで世界を支配する時代が終わったのだ。僕のやり方ではうまく行く場所が見つからず、僕は地球の各所を彷徨った。しかし、どこへいっても僕の方法は通用せず、生まれ変わるたびに現状を維持するのに今まで以上のエネルギーを要するようになった。富や名声、権力、物質的な何かを得るための精神的代償はますます大きくなっていったのだ。

「王であるときに得られなかったものを逆に得はじめたと言ってもよいでしょう」

そうだ、地球での体験によって意識体としての自らの可能性を発見し始めたのだ。制約された時空間でしか得られない幻想をエネルギーに変えることで、もともと無限であった意識体の可動域をさらに次の無限へ広げることができるのだ。この僕が記憶したエネルギーが僕たちの星の発展に寄与することを僕は最初の王の時代にすぐに理解したのだ。これこそ僕が地球を選択した理由だ。

「サノロス、あなたの直感は常に正しかった」

僕の星、そう、僕には目的があったのだ、僕の星がしばらく住めなくなったのだ。その原因を解明して星を改造し、物質的に快適な場所にしなければならなかった。地球で一万年ほど滞在する間、地球で新たなエネルギーを手に入れた。それは人間の感情であったり人間の創造物でもあった。そして地球の意志、制御システムも素晴らしく合理的に稼働していたし、僕はこの仕組みを全て僕たちの星に導入しようと思ったのだ。
今まで僕たちの星はただあるべくしてあったが、意図的に時空間に作り出した集合意識を適度なサイクルで循環させて星を整える方式を学んだのだ。僕が地球で見たこと聞いたこと、触れたもの味わったもの、経験したものすべては、僕だけではなく仲間たちすべての、星の財産になるのだ。僕たちの星はまもなく変革を迎えるのだ。

「そうだ、オレは大方準備はできていたんだ。そろそろ帰らなければ、マテラス。おや、君はマテラス、マテラスじゃないか! なぜ今までずっと黙っていたんだ! 雪女に変装するなんて、まったく人が悪いよ」

「サノロス、私を雪女の姿に変えたのもあなたの意識です。あなたは自分自身で気が付かなければならなかったのです。地球の制御が邪魔をして私が何を訴えかけてもノイズが入りました」

「そりゃそうだよ、地球の制御システムは完璧だ。人間になることでそれを実体験したけど、実にうまくできているんだ。さあ、すぐに仲間を招集し、これらの技術を星へ適用するんだ。ギーニとサーヤは今どこだったかな? そうか、学校に行ってるのか!
学校?
高校?
なんだっけ、それ……?」

僕はすっかり思い出した。雪女と呼んでいたのはマテラスだったのだ。直感的で活動的かつ好奇心旺盛な僕のバランスをとってくれる冷静で聡明な存在だ。マテラスのサポートなしでは僕は活動できないのだ。そして、ギーニとサーヤ、この二人も一方は理論的で一方は直観的だ。そして、二人は僕とマテラスをサポートするリサーチャーの役割なのだ。

「そうかわかったぞ、ギーニはヒロトで、サーヤはヒメだ」

僕はこうして最終的にすべて思い出すことを、地球に一番最初に来た時に確信していた。最後にはマテラスが僕を見つけ出すことも分かっていた。最初マテラスは僕を止めようとしたが、でも必ず戻ってこれる確信があった。冷静で聡明なマテラスをも惑わしたのは、まさに地球の制御システムの完璧さだった。
そして地球で得たものの中でも特に価値を見出したものの一つが地球人特有の感情だ。感情がなければ僕はここまでたどり着けなかっただろう。感情というものを見つけて手に入れることが、ここへ帰ってくる条件だと最初に気が付いたのだ。感情は愛という言葉に置き換えることができるかもしれないが、仲間四人を一つに結集させるエネルギーと言い換えてもいいだろう。

「サノロス、これでもう迷うことはないでしょう。まだ最初の問題の答えを知りたいですか?」

「最初の問題? あぁ、テロのことか。でも過去を思い出すうちに地球のドラマにあまり干渉するべきではない気もしてきた。起こるべくして起こることを無理に変えることに意味がないような気がしてきたんだ」

僕はこの時、意地でもテロを防ぐという正義のヒーローのような強い意思を完全に失っていた。この時の僕は、テロとは宇宙の中のちっぽけな地球という惑星の一時代に起こる一つの小さな出来事に過ぎないことに気が付いてしまったのだ。テロや災害、戦争により人が何人死のうと、地球の歴史から見ると人間がアリを踏み潰す程度の出来事なのだ。さらに生命体の実態は意識体であると知っていたため、物質的な痛みや生存欲などの感覚も消えており、つまりこの時の僕は完全に人間ではなくなっていた。

「サノロス、あなたは他にまだやることがあるのです」

「ん……。そうか、オレはまだ肉体を失ってなかったんだ。まだ地球で生きなくちゃいけない」

「そのとおりです。それに、サノロス、あなたの今の意識状態を肉体に戻ってから維持するのは困難です。再び今得た記憶を長く維持することが必要です」

「それは大丈夫、オレの記憶は以前のように整理されずに雑多に蓄積されているわけじゃないからね。君のおかげで完全に整理されて、今ここにあるんだ」

「我々四人が星へ戻れる確率は九十八%。僅かですがリスクはあります。これから百%に限りなく近づけるための行動が必要になるでしょう」

「念には念をってわけだね。もちろん言われなくてもそうするつもりだよ。大丈夫、オレはすでに百%という確信を得ている。それよりキミは地球に転生したと言っていたな。でもオレはまだ、地球でキミを見つけてないんだ」

マテラスは黙っていた。

「そうか、マテラス、君は結局人間にならなかったんだな。まあ、それも仕方のない事だよ。人間は君が考える以上のリスクがあるし、それに宇宙船には留守番も必要だ。君がそこにいてくれたおかげでオレは助かった。ギーニとサーヤも君が宇宙船に残ってくれた方が安心だ」

僕は笑いながら話したが、マテラスはまったく反応しなかった。マテラスの無反応を不思議に思いながらも僕はさらに続けた。

「どうりで残りの仲間があと一人見つからないはずだ。君は今そこにいるんだから地球で見つかるわけがない。ね、そうだろ? ん、どうして黙ってるの?」

マテラスは淡々と答えたが僕にはよく聞こえなかった。

「私は……」

僕はすぐに状況を察知した。地球の制御システムによりマテラスの発する言葉がノイズに消されて僕には伝わらないのだ。しかし、僕たち仲間のミッションは百%うまく行くことを直感的にわかっていた。マテラスが人間に生まれていようといまいと僕たちの目的から照らせばどちらでもよいことだった。

「サノロス、あなたはまだ人間として地球へエントリー中なのです。それまでは地球の制御が働きます。それはあなた自身のブロックとは限りません、我々仲間のブロックもありうるということを覚えておいてください」

確かに今、僕のブロックは完全に外れたはずだ。すべての記憶を取り戻して、いつでも星へ帰る準備ができたのだ。ということは、ギーニ、サーヤ、マテラスの誰かの初期設定、ブロックがまだ僕の行動範囲に影響を残しているということか。

「サノロス、そろそろ時間のようです」

「マテラス、時間などという地球的な表現でオレを制しようとしてももう無駄だよ。それに地球には『夜は長い』って名言があって、ん……、いや……、そうか、オレはサノロスである前にダイスケだ。あやうく忘れるところだった」

そう思った瞬間に僕はベッドで横になっていた。辺りは薄明るくなっており、まもなく日の出の時間だった。永遠に見ていたかった楽しい夢から覚めて現実に戻ってしまった僕は、大きなエネルギーの塊を一気に失ったような感覚に陥った。いつもの寝起きと比較にならないくらい体が重たかった。ベッドから起きて、カーテンを開けると、突き刺すような太陽の光でクラっときた。
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登場人物紹介

ダイスケ……受験勉強でストレスをためる高校生。古代史好き。

ヒロト……ダイスケの親友。発想力豊かな楽天家。

ミヒロ……ダイスケの片思いの相手。親が政治家。

ヒメ……ミヒロの親友。強力な霊能力を持ち、アルバイトで巫女をやっている。

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