第5話

文字数 993文字

「あ、何。お前だけで、責任感じてるだよ! 待ってくれよー」

 佳山も光太郎を追い掛けた。

 満点の星空から、流れ星が悲しそうに一筋落ちていった。

 光太郎はわけもわからずに、走る。

 鈴姉!

 今更ながら、責任を感じてしまう。
 もう少し、後もうほんのちょっとだけ、早くに鈴姉を庇うことができればよかったんだ。

 そうすれば……。
 いや、そうしていれば……。

 鈴姉は……きっと……。

 気がつくと、光太郎は天台学校のグラウンドに戻って来ていた。

「うっがーーーっ!」

 前見た血塗れの得体の知れない生物は、硬そうな巨大な黒い物体に変わっていた。
 まるで、大きな黒い石像のようだ。
 高さは二メートルくらい。

 未だに、校舎は逃げ惑う人々でパニックだった。

 光太郎は拳を握ると、今度は真っ赤な炎が腕から拳へ行き渡る。

 炎のパンチを黒い物体に打ち込むと、黒い物体は遥か後方へぶっ飛び。
 瞬時に、燃えカスとなった。

 光太郎は無心でたくさんの黒い物体を、叩きのめす。
 そうこうしていると、クラスメイトの藍川(あいかわ) (めぐり)が一階の教室から光太郎を呼んだ。

「光太郎さーん! こっち来てー! 学校内の黒い物体も倒して!」

「凄い! 光太郎くん!」
「凄ーい! 光太郎!」
「光太郎! カッコイイじゃん!」

 藍川の取り巻きが叫ぶ。
 藍川は学校一有名なアイドルの卵だった。

「うらーーー!」

 光太郎は学校内へと駆け出した。そして、教室にたどり着くと、ギュウギュウ詰めの黒い物体を見境なく、片っ端から、炎の拳で燃やしていった。藍川と取り巻きは、教室の片隅で蹲っている。
 
「光太郎! ちょっ、危ないよ!」

 狭い教室で辺り構わず暴れていた光太郎の背後に、黒い物体が迫っていた。
 屈んでいた藍川が危ない! と、思って目を閉じた。
 その時、藍川の手が仄かに光った。
 光太郎の身体も同時に、仄かに光りだした。

「あれ? 手があったかい? なんで??」

 藍川は不思議がって目を開けると、光太郎は、それでも気がつくことなく。黒い物体をなぎ倒していく。背後にいた黒い物体が、光太郎目掛けて派手な頭突きをした。だが、ぶち当たった光太郎はびくともしない。

 それどころか、光太郎の身体に黄金色の翼が生えた。

「うおおおおーっ! とどめだ!」

 光太郎が背後の黒い物体を炎の拳で燃やすと、それで最後だった。
 黒い物体は全て燃えカスになり、教室は静けさを徐々に取り戻していった。 
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