第4話
文字数 1,352文字
「は、はあ?お前、この村のやつじゃないのに俺に口出すなよ!」
確かに、この村の者ではなかった。農家ではなかった。黒い髪にグレーの帽子、紺色のベールを纏った不思議な雰囲気の男だった。そして、目には包帯。両目が隠れている。目を怪我しているのだろうか、何かがあるのだろう。
「Een stok in het wiel steken――車輪に棒をかます。」
「はあ?何が言いたいんだよ。」
「あなたのことですよ。あなたにぴったりの諺です。」
「こ、諺?何だよ、急に。」
「意味は、『仕事を怠ける』。ほら、あなたにぴったりでしょう?」
――諺研究所の者か?
そんな考えがフェリクスの頭をよぎった。諺研究所の者は異様に諺に詳しい。こんなことを即座に言えるのは、諺に詳しい諺研究所の者か、諺マニアしかいないだろう、そう考えてしまった。
「そんな諺と一緒にされたくないでしょう?働いてください。ちゃんと。」
「・・・しゃーねーな。わかったよ。」
「分かってくださったならいいんです。」
そう言って不思議な雰囲気を纏った男は帰ろうとする。
「すみません!」
フェリクスは、気づけば大声でその男を呼び止めていた。
「はい、私ですか?――って、フェリクスさん!?」
「・・・なんで俺の名前を知っている。」
「一緒に諺研究所に居たでしょう。私ですよ、エルンストです。」
「そんな名前は聞いたことない。俺に諺を埋め込んだのはお前か?お前は諺研究所の研究員か?」
フェリクスの勢いは止まらなかった。自分をこんな体にした人間を許せなかったのだ。
「違いますよ・・・私も諺を埋め込まれた側の人間です。目が見えないんですよ。代償のせいで。」
「・・・そ、そうなのか。すまなかった。」
話をしてみると、どうやら男、エルンストも諺を埋め込まれた人間、言わば被害者らしい。
「そうです。フェリクスさん。これから行く宛てはあるんですか?」
「いや、無いが・・・」
「そうですか。それなら、私と一緒に旅をしませんか?諺を探す旅へ。」
「諺を・・・探す旅?」
エルンストの言う、「諺を探す旅」とは。
どうやら話によると、諺研究所が爆発した影響でフェリクスやエルンストのような諺を埋め込まれた人間以外にも被害が及んでいるようで、この国で「諺に関する異変」が起きているとのことだ。ちなみに、この農村で起きたさっきの仕事サボり事件も、異変の一つだそうで。それを、探しに行く。そして、それを解決しないかという誘いだった。
「そんなことが・・・でも、いや、俺は1人でこの諺を取り出す方法を探す。」
「そうですか・・・ちなみに、諺に関する異変を全て解決すると、諺を取り出せる上、諺によって起きた代償も治る、と研究員が言っているのを聞きました。・・・それでも、一人で行きます?」
それは、フェリクスにとって魅力的な誘いであった。
研究員が言っていたなら間違いない。「全て」がどのくらいのものであるかはフェリクスにとっては分からないが、この点滴生活が終わるならそれも我慢出来るだろう。それに、1人よりも2人の方ができる幅は広がる。
「・・・わかった。俺も着いていこう。旅をしよう。」
「ありがとうございます。それでは、これからよろしくお願いしますね。フェリクスさん。」
かくして、フェリクスとエルンストの、諺を探す旅が始まったのである。
確かに、この村の者ではなかった。農家ではなかった。黒い髪にグレーの帽子、紺色のベールを纏った不思議な雰囲気の男だった。そして、目には包帯。両目が隠れている。目を怪我しているのだろうか、何かがあるのだろう。
「Een stok in het wiel steken――車輪に棒をかます。」
「はあ?何が言いたいんだよ。」
「あなたのことですよ。あなたにぴったりの諺です。」
「こ、諺?何だよ、急に。」
「意味は、『仕事を怠ける』。ほら、あなたにぴったりでしょう?」
――諺研究所の者か?
そんな考えがフェリクスの頭をよぎった。諺研究所の者は異様に諺に詳しい。こんなことを即座に言えるのは、諺に詳しい諺研究所の者か、諺マニアしかいないだろう、そう考えてしまった。
「そんな諺と一緒にされたくないでしょう?働いてください。ちゃんと。」
「・・・しゃーねーな。わかったよ。」
「分かってくださったならいいんです。」
そう言って不思議な雰囲気を纏った男は帰ろうとする。
「すみません!」
フェリクスは、気づけば大声でその男を呼び止めていた。
「はい、私ですか?――って、フェリクスさん!?」
「・・・なんで俺の名前を知っている。」
「一緒に諺研究所に居たでしょう。私ですよ、エルンストです。」
「そんな名前は聞いたことない。俺に諺を埋め込んだのはお前か?お前は諺研究所の研究員か?」
フェリクスの勢いは止まらなかった。自分をこんな体にした人間を許せなかったのだ。
「違いますよ・・・私も諺を埋め込まれた側の人間です。目が見えないんですよ。代償のせいで。」
「・・・そ、そうなのか。すまなかった。」
話をしてみると、どうやら男、エルンストも諺を埋め込まれた人間、言わば被害者らしい。
「そうです。フェリクスさん。これから行く宛てはあるんですか?」
「いや、無いが・・・」
「そうですか。それなら、私と一緒に旅をしませんか?諺を探す旅へ。」
「諺を・・・探す旅?」
エルンストの言う、「諺を探す旅」とは。
どうやら話によると、諺研究所が爆発した影響でフェリクスやエルンストのような諺を埋め込まれた人間以外にも被害が及んでいるようで、この国で「諺に関する異変」が起きているとのことだ。ちなみに、この農村で起きたさっきの仕事サボり事件も、異変の一つだそうで。それを、探しに行く。そして、それを解決しないかという誘いだった。
「そんなことが・・・でも、いや、俺は1人でこの諺を取り出す方法を探す。」
「そうですか・・・ちなみに、諺に関する異変を全て解決すると、諺を取り出せる上、諺によって起きた代償も治る、と研究員が言っているのを聞きました。・・・それでも、一人で行きます?」
それは、フェリクスにとって魅力的な誘いであった。
研究員が言っていたなら間違いない。「全て」がどのくらいのものであるかはフェリクスにとっては分からないが、この点滴生活が終わるならそれも我慢出来るだろう。それに、1人よりも2人の方ができる幅は広がる。
「・・・わかった。俺も着いていこう。旅をしよう。」
「ありがとうございます。それでは、これからよろしくお願いしますね。フェリクスさん。」
かくして、フェリクスとエルンストの、諺を探す旅が始まったのである。
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