第3話

文字数 1,202文字

そんなこんなで、町を探すために歩いて数時間が経つが、一向に見つかる気配がない。明かりも見えないし、もう、今日はここで野宿をしようかとフェリクスは道端に横たわる。寝心地は最悪。体の節々が痛むわ、硬すぎて頭が痛くなるわで寝られそうになかった。
しかしフェリクスは寝ることを諦めはしなかった。その近くにあった木に寄りかかって寝ようと試みた。しかしそこも、木の枝が耳に突き刺さるわで最悪。しかしさっきよりはマシかと思いそこで寝ることにした。

朝日がフェリクスのさらけ出されている方の目に差し込む。朝だ。寝心地はやはり最悪だったが、まあ眠れたので良しとしよう、と立ち上がる。今日も町を探す。歩き疲れても歩くのである。

歩き続けて何時間だろう。もう時間がどれだけ経ったのかの感覚もなくなってきた。足がピリピリと痺れる。小石が靴に入ってとても不快だ。もう限界か、そう思った時、フェリクスの視界の端には民家が見えた。
やっと町を見つけることが出来たのだ。大きい町か、小さい町かはこの際関係ない。誰か人がいればいいのだ。そして、あわよくばそこに住みたい。あわよくばあわよくば、この呪いのような諺を体から取り出す方法も見つかるといい。

そんな期待を胸に町へと向かう。足取りは先程までより断然軽い。気分はルンルンだ。

たどり着くと、そこは農村であった。畑が至る所にある。それを耕す農家もたくさん。ああ、自分もこの畑を耕すことになるんだろうな、と一瞬思ったフェリクスだったが、まだここに住むと決めた訳では無い。

「おい!ちゃんと仕事しろよ!」
「えぇ、やってますって〜。」

何やら騒ぎがあったようだ。ただ仕事を怠けていただけだろうか。2人の農夫が言い争っている。1人は他と違い、赤の線が入った帽子をかぶっていた。リーダー格なのだろう。もう1人は他と同じで、無印の帽子をかぶっている。

「お前、そんなんなのに俺と貰える量変わらないってふざけてんだろ!」
「だから〜、ちゃんとやってますってぇ。」

今度は無印の帽子をかぶった男が、さっき仕事をしろと言われていた男に暴言を吐く。
争いを避けたいフェリクスにとってはすこし不快だった。言い争いは嫌いなのだ。

「俺たちはあっちの畑やってくるから、お前、ここの畑ちゃんとしろよ!」

他の農夫たちは別の畑に行き、仕事をしろと言われていた農夫だけが取り残された。

「はー、あいつらどっか行ったぜ。よし!家帰って、あいつらが戻ってきそうなタイミングでいかにも仕事してましたよ感出そうっと!」

やはり、あの騒ぎの原因は仕事を怠けているだけだったようだ。しかし、これはいけないことだろうとフェリクスは考える。止めようか、自分からも仕事を怠けるなと言うべきか、と思考を巡らせるが、「競争を恐れる」諺を埋め込まれてしまったフェリクスにそれを止めることは出来なかった。
しかし――

「仕事、きちんとした方がいいのでは?」

そう声をかけた男がいた。
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