第12話 何かってなに?

文字数 700文字

 化学の教科書を上にして直樹が貸してくれた本を下に敷く。この姿は直樹には見られたくない。期末の化学のテスト90点以上で、直樹とのプチデート券をゲットできるけど、真面目に頑張った感を出すのが許せなかった。普段直樹の前では素直すぎていじってしまうのに、変なところでプライドが邪魔してくる。
「あ、直樹」
 ピザ屋の裏口のドアに手をかけている直樹。未百合は駆け足で近寄る。
「直樹!」
「あっ」
「なんでここにいるの? ここでバイトしてるの?」
「声がでかいんだよ」
「知らなかった! なんか直樹のこと色々分かっておもしろい!」
「絶対言わないでよ」
「どうしよっかな……」
「マジで言うなよ!」
「分かってるよ! 今度直樹がピザ作ってね!」
「ああ、うん。あんまり上手くないけど……読んでるんだ」
 化学の教科書を秒で隠して小説を見せた。
「ああ……うん! まだ数ページだけどね……」
 瑠璃が教室で言っていた毒舌が、直樹に聞こえていたかもしれない。それが脳裏によぎって口数が少なくなる。
「そっか。未百合のペースで読んで。宿題とかじゃないし」
「ありがとう!」
 聞こえてなかったようで、胸を撫で下ろした。
「化学もやってるんだね」
「まぁね! 約束忘れてないよね?」
 バレてしまったから仕方ない。でも楽しく話せるならなんでもいいって思って普通に振る舞った。
「90以上取ったらってやつでしょ」
「忘れんなよ! 直樹は100点ね!」
「何その目? 僕に何か言わせようとしてる」
「そんなんじゃないよ! 何してあげようかなって考えてるだけ。まぁ楽しみにしておいてよ!」
「な、何か分からないけど、分かった」
 そう言って、宗一郎はピザ屋の中に入って行った。
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登場人物紹介

杉本 未百合(すぎもと みゆり) 17歳 高校二年生

#推し活 #直樹いじり #バドミントン部 #でも行ってない #映画館でバイト #映画鑑賞 #恋多き女

#浮気されて男不信 #勉強は嫌いじゃない #明るい性格 #来てくれたら誰でもウェルカム #ボディタッチ多い

戸高 直樹(とだか なおき) 17歳 高校二年生

#RockMusic #ロングラン(直樹の好きなバンド) #カラオケ #一人カラオケ #推し活 #読書 #口数が少ない #シャイ #一人が好きだけど寂しがり屋 #成績優秀 #体育倉庫が居場所 #スポーツは苦手 #優しい #ヘッドフォンにこだわり #ギターをやってみたい #未百合のことは可愛いと思ってるけど、マジで恥ずかしい #学校で話しかけてほしくない

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