第14話 12日目 精神世界について

文字数 1,950文字

◆断食12日目 起床2:00

眠れないときは日記を書くことにしている。
考える事はどうどう巡りになり忘れてしまう事が多い。書くことは記録に残る。
記録として目に見える形になれば、少しでも思考が先に進む。
過去考えた事が積み重ねられていく。別の考えが出ればそれをまた書けばいい。

永年治らなかった手の湿疹が治りかけている。自然治癒力は素晴らしい。
食べ物の中には製造過程、調理過程、包装過程で少しは有害物質が入り込む。
12日も食べなければそれが皆無になっている。体の細胞同士が協力し合っている。
肌がきれいになってきている。水は湧水を飲んでいる。ミネラルは豊富だ。
多少のバイ菌や細菌は、生きるために体の本能で食いつくしてしまう。
誰が考えても10日も食べなければ死んでしまうと思うだろう。
現実はその逆で、身心は充実し体の悪い部分は治ってしまう。
この事を、以前断食の本を読んだ時には信じられなかった。

自宅で出発前に裸になって全ての湿疹のある部分を写真にとっておいた。
治ったのは現実だ。妻はびっくりするに違いない。顔も変った。髭も伸ばし放題だ。
考え方も変わり始めてきた。妻は今のこの私を信じるだろうか。
心身とも別人になって帰っていく。妻の驚きが目に浮かぶ。
今迄の3食の食事は食べすぎだった。おそらく1/3で十分だろう。
食事が少なければ睡眠時間も少なくて済む。生活費の節約も期待できる。

大部屋の野武士岡本も10日を過ぎて少し会話をするようになった。
岡本は岡本の方法で成長している。もともと基礎能力はある。私とはレベルが違う。
教祖と言い争っていた佐々木はいつの間にか居なくなってしまった。
あの人じゃあここの断食にはついていけないだろう。
みんな人任せで文句ばっかり言っていた。部屋やトイレの掃除も見た事がなかった。

断食道場は場所を提供しているだけで、自分を律するのは自分しかいない。
強い意志と、貫徹する覚悟と、将来の自分の姿を自分で描かなければ意味がない。
そうしなければ人間的な成長は望めない。人間性が低いと周囲との争いが絶えない。
今迄の自分がそうだった。すべて判断基準は自分の自意識がしていた。
合わない意見の人には屁理屈を言って困らせる。納得いかない仕事は嫌々やる。
情けない人間だった。今はそういう人もいるんだなあと静観できる。

「朝の静座後」岡本はまた座禅を組んでいる。
岡本は興味があれば「瞑想」のやり方を教えてくれると言った。
今迄の太った体では無理だった。10日間で足も腰も尻も小さくなっている。
座禅が無理すれば組めるようになってきた。静座は当たり前になってきた。
今日からは岡本の指導で、1日に1回は座禅を組んで瞑想することにした。

1、座禅を組んで背筋を伸ばす。
2、息を小さく吐き、吸う息は意識しない。(息を吐けば体が自然に息を吸い込む)
3、自分を無にする。(雑念を気にしないようにして放っておく)
4、自然をありのままに見る。(目の前の見えるもの感じたものに理屈をつけない)

私は教えられた通りに真似してみるが目を閉じていると眠ってしまう。
岡本は居眠りをしている私をそのままにして、横で座禅を組み瞑想を始める。
私も冥想して魂やオーラなどの精神世界を見てみたい気がする。
岡本がここにいるうちにできるだけ体験してみようと思っている。
私の瞑想は目を閉じただけで眠くなり、雑念や妄想で迷走してしまう。

10日もすると知り合いも多くなってくる。時々集会室に顔をだす。
挨拶を交わした後、散歩や座禅などが会話の中心になる。
各人意見や考え方が違う。それぞれとの意見を素直に聞いてみる。口は挟まない。
佐藤さんは「あまり激しく運動すると脂肪の減りが少なくなるよ」と言う。
後藤さんは「運動はすればするほど筋肉が引き締まっていくよ」と言う。
井上さんは「断食中の運動は危険だからやらないほうがいい」と言う。
意見として「なるほど」と聞いておく。実行は自分の方法でする。

今日入場した小林さんは所沢市の天理教系付属高校の柔道6段の先生だった。
体重が120kgを超えたと言っていた。激しい運動で食欲もすごいそうだ。
この断食道場で体重を減らし100g超えないような体にしたいと言っていた。
断食をするとその分リバウンドする。修行後は食べすぎないよう「我慢」する事だ。
断食で太らない体にする事はできない。自制心を養う修業なのだ。
人それぞれの目標がある。考え方は色々だがやれば必ず目標に近づく。

今日の「朝の講話」は般若心経の解説だった。非常に興味深い内容だった。
理解はできるが、現実への活かし方が解らない。
今は念仏のように唱えるだけだ。

私には仏教や精神世界は無理かもしれない。私は自分の方法で人生を渡る。
「欲をかかない」「我慢をする」の2つですべてが解決するように思う。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み