第2話 初日から慌てまくる旅

文字数 3,138文字

昨日、像に死体を付けた後、下町の宿で明日からの構想を考えていた。

とりあえずこの宿にはそこらへんにいた人とそっくりそのままの顔にして入った。

魔王としての顔じゃ騒ぎになるしね。

で、今日はまだモブ顔でいい。

まあまだ旅としてはノーカンよ。

ただ異世界人の旅人がモブ顔をかおもしろくない、ということです

バンッ!

煙を撒き散らした後の私は白髪、長髪、師匠っぽいような顔つき。

そして極め付けはこのローブ服。

鏡で自分の老けた姿を見て少しセンチな気分になったが、まあいかにも強そうなこの格好はいつになってもいいよねー。

そんなことを思いながら部屋を出た。

爺「すいません。ここの部屋の者です。清算を」

店「あーはいはい。えっと部屋代だけね。4830ゴールドよ」

爺「はいはい、ちょっとお待ち」

ピッタリあるかな、なんて思っていたら。

店「爺さん、あんたいつ来たんだ?」

爺「昨日のどっかで来たぞ。それよりも外の騒動は一体なんなんだ」

そこらへんを探れたら面倒なので、てきとうに話を誤魔化す。

店「あーなんでも魔王様が魔王像に吊るされていて、殺されたらしいよ。酷いことをする人がいるもんだね」

爺「ほー」

後120ゴールド見つかるかな。

店「おや、王国の兵士と…あれはルール様じゃない」

ゲッなんでもうルールが来ているんだ。

爺「はいこれ、5000ゴールド」

店「5000ゴールドね。じゃあ170ゴールドね。ってあれー10ゴールド足りないなあ」

まずいルールにカッコつけて旅に出るのに明日死ぬとか意味不明なかっこよさ言ったせいで多分変身魔法だとバレるぞ。

なんかあいつこっち見てね?

っと思ったらまた死体の方向へと向いた。

これ以上ここにいてもバレるリスクしかないし、早く行こう。

店「あーあったあった。はいこれ」

爺「はい、どうもって」

受けっとった小銭を落としてしまった。

急いでゴールドを拾い上げて立ち上がり、

爺「じゃあ店主、ま..」

店主の方を見るとなぜかルールがいた。

爺「!?」

あぶね、多分顔には出なかったはず。

ル「少しお話しよろしいでしょうか」

っち逃げたら怪しまれるしな。

爺「少しの時間でしたらよろしいですよ」

ル「実はあなたからまお…シュテルさんという私の知り合いと同じ匂いがしましてね」

爺「それは気のせいではありませんかな」

ル「それに私を見ても驚かないなんて、わたしの知り合いか旅人なのか」

爺「おやおや、そんなにお偉い方でしたのか。それはどうも失礼いたしました。それでは私はそろそろ出かけたいのでこの辺で」

ル「そんなに急いでいるのですか?」

爺「まあそこそこは」

ル「そんなに時間は取らせないのでちょっといいですか?」

長居はしたくないけど、まあちょっとぐらいなら私の会話力でなんとかなるだろ。

爺「まあいいですぞ?それでなんですかな?この事件を目撃したかったって?いやー残念ながらその時はすでに寝ておりましたので何も...」

てきとうにべらべら喋っていたらルールは一枚の紙を出してきた。

ル「別に何も変なことは聞きませんよ。ただ、一枚この紙をビリビリにやぶいてくれませんかね」

爺「これは一体...何ですかな?」

私はとても見覚えのある紙をみた。

その紙は前日にルールに説明した契約書の紙だった。

契約書は他人が破ろうとしても絶対に破れない様になっているけど、契約者同士が破くと切れ目を入れると破けて無効になる。

そのためこれを私自身が破くことはできない。

爺「いやいや、私は魔法専門で紙を破くほどの力もございませんので」

ル「その堅いで何を言ってるんですか、ほら早く」

万事休すか。

旅初日が絶対に忘れない日になってしまったな。

爺「さすがだな、ルール」

ル「やっぱり合ってましたね」

爺「バレると思わなかったんだけどね」

ル「それであの死体は誰なんですか?」

そう言言いながら死体のほうを刺した。

爺「たしか伯爵家の、ほら前に話しただろ」

ル「あーその人でしたか。結局殺して良かったんですか?」

爺「あーそれは大丈夫。そいつの家の地下を見てごらん。うじゃうじゃ死体があるから。制裁よ。制裁」

ル「最後まで仕事の王様だったんですね」

それを指摘されると否定できないけど、最後の片付けと思ってるから別にとしか。

ル「流石に像に死体を指すのはどうかと思いますけど」

爺「それは...すまん。そういえばなんで私だとわかったんだ?」

ル「魔王様の匂いと視線、雰囲気がこっちから漂ってきましたので」

爺「なるほど、納得はしたくないが。それでルールさん?そのロープはなんですか?」

ル「ちょっと捕まえるだけですよ」

その時のルールの顔はとてもヤンデレのような目をしていた。

爺「えっとルールさん?怖いんですけど」

ルールからは“はあはあ”という荒い息遣いが聞こえる。

これはやばい匂いしかしない。

ル「もう逃しませんよ!」

そう言うとルールはロープを投げて私の手に巻きつけてきた。

爺「なんだこれ、力が上手く入らん」

ル「そりゃそのロープは魔王様を捕らえるために作った専用のロープですから」

爺「まあこういうのは慣れればなんとか、っな!」

おもいっきり私が引っ張ったロープがルールの手から離れた瞬間。

爺「ふっ!」

常に常備している小刀でロープを切った。

ル「えーおかしいな。もしかして魔王様って案外強かったりしま?」

爺「さあな。とりあえず私はもうここを去ろう。いつまで居ても旅は始まらないしこうやってまた捕まることもあるかもしれないからな」

ル「逃しませんよ。スキル!」

ルールが何かしらのスキルを使ってきそうだ。

どうせ行動系に異常が起きる状態異常だろうけど。

ル「パラリシス!」

麻痺か、まあ何が来ようがどうせ全て防ぐけどな。

たしかパラリシスは皮膚に少しでも当たったらダメだよな。

避ける方が危険だな、てことは

爺「風魔法!追い吹く風」

跳ね返す!

ル「きゃっ!」

ルールの体に跳ね返り、ルールは倒れた

まったく、皮膚に少しでも当たったら終わりとかやばいな。

爺「いやー結構強かったけどまだまだ負けんわ。あっ店主さんこれお代とここを多少荒らしてしまったのでその修理費とここで起きたことは内緒の口止め料です」

店「は、はい」

爺「ではではこの辺で」

そしてルールの横を通った時、

ル「行ってしまわれるのですね」

爺「ああ、今日で一旦最後だ」

ル「いつか帰ってきますか?」

爺「ま、旅の出発地点だし、いつかはね」

ル「そうですか。それと最後に魔王様のお顔を見せてくれませんか?」

うつ伏せになっているルールが答えた。

爺「今はお爺さんの顔だけど」

ル「別に雰囲気だけでいいのですよ」

爺「しょうがないな」

ま、この後の展開がなんとなく予想がつくけど。

ル「パラリシス!」

私はモロにくらったため、そこで倒れた。

ル「やっと捕まえられたー!へへへ、もう逃しませんよ」

しかし

爺「よいしょっと」

わたしはすぐに起き上がった。

爺「おー筋肉が動かないってこんな感じか」

ル「え?なんで?」

爺「パラリシスの効果って知ってるか?」

ル「相手を動かせなくするんじゃ」

爺「まあ効果はそうなんだけど、そうなるための過程だよ」

ル「気になったこともありませんでしたけど」

爺「パラリシス…麻痺っていうのは筋肉が働かなくなるということだな。つまり他は動く。だから骨と血管、皮膚など他の部位で補えばいいんだよ」

ル「いや、それは普通に考えて不可能じゃ…」

爺「強さを追い求めた結果できた。魔王は死に物狂いでやればなんだってできる。それにもしできなかったら私は暗躍者として中途半端な人生になる」

爺「わたしは何に対しても頂点を目指す!」

私はルルの方を向いて

爺「だからこそ、私は自分の夢を叶える。ルール、お前の願いは無理だがまたいつか帰ってくる!その時まで」

そして周りに煙を撒き散らしてその場を後にした、

ル「…行ってらっしゃい」
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登場人物紹介

主人公 シュテル・シャルロット

この世界の魔王。

前世では会社を一代で築き上げて世界資産ランク100に入るほどのお金持ち。

人間の嫌なところばかり見てきた故か洞察力だけは異常に高い。

この世界では約800年を費やして人間・魔人大戦を終わらしてその後は魔王として魔族領の復興、生産力などを高めた。

その後は暗躍者として活躍するために世界に旅に出る。

ちょっとだけ頭おかしい

魔王の秘書 ルル

シュテル・シャルロットに1000年以上支えてきた秘書。

魔王を敬愛しているために魔王を辞めたと言われた時はどんな手を使っても捕まようとするヤンデレタイプ。でも根は優しい。

魔王体制崩壊後の臨時で一番偉い立場に就く。

(もちろん強制)

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