第2話 戦意高揚

文字数 828文字

つけっ放しだったテレビから政府広告が流れ出す。

「君もNBに乗ろう! セカイの拡大を阻止し、輝く未来を勝ち獲ろう!」

 画面を眼の端に入れると、ごてごてと装飾の施されたNBが、縦横無尽に疾駆していた。環は侮蔑の笑みを顔に浮かべると、本日の戦果報告と収支をPCの画面で確認する。機体の修理にかかる費用、稼いだ賞金。今日も黒字だった。分かっていたとはいえ、数字で確認するとやはり安心できる。環の戦いには生活がかかっている。赤字がかさめば、惨めな暮らしが待っている。この国は全く冷たい国で、金のない奴らには何もしてくれない。ましてや、環のようなイステンの血を引く者には尚更に。今日のミッションも、と環は頭の中で振り返る。テレビから流れてくる戦意高揚の為のコマーシャルが耳障りなメッセージを送って来る。

「セカイの拡大を阻止し、人類に美しい未来を! NB操作者募集中」

 思考を中断され記憶を蘇らせるのをやめた環は夕食用のフードパックを開けると、中身から好きな物だけを摘まみ出しながら今夜のミッションに参加するかどうかを考え始めていた。

 ミッションは、応募定員に達すると実行される。環が今回参加を考えているミッションのナンバーは1。ミッションの中では最も簡単な物で、内容は、単なる殲滅戦。ミッションはナンバー5まであると言われているが通常募集されるミッションは1~3で、4や5は操作者となって4年経つ環でも見た事すらなかった。

 操作者達の噂では、4はウォールと呼ばれるセカイの拠点強襲。5は、最早、荒唐無稽としか思えない物でヒャクメとヒトガミと呼ばれる、その存在すら疑問視されているセカイの一種との戦闘。この二つのミッションナンバーは、幻のミッションと呼ばれていた。

 環は思い出したように、フードパックの在庫を確認する。戸棚の中には肉料理が一つ。魚料理が三つ。再び口に入れた食物を租借しながらPCの画面を切り替え、環はエントリーを開始した。

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