第6話

文字数 2,929文字


(風馬)「 風太、勇真っ」

パシャン..。
(駆け寄る)


(風太)「 …うぁぁぁっ !」

(勇真)
「 ひぐ..っ、グス…。」


(風馬)「 二人とも雨に濡れる、」

急いで風太と勇真を抱き寄せるが、


ドンッ!
(兄の胸を思いきり叩く)

(風太)
「 ッ!…ッッ!!…して・・、どうして風馬にぃちゃん…!ねぇ、死んじゃったなんて何でみんなうそつくのっ!ちがうよこんなのっ!!!ちがう!」

「へんじしてくれるもん!ははうえ!!」

(風馬)「 ……、風太、」


(暴れる勇真)「 やぁぁぁあぁぁっ!!」

(風太)「 ッ!、あにうえなんて、ちちうえもみんな…っ、みんな大っきらいだ!!」


(源爺ぃ)
「これ、風太..。お前さんの大事な父、兄にそんなこと言うてはいかん」

「 …桜も悲しむぞ。」

(風馬)
「! ..ッ……、」

(風太)
「 ……。もう、お母さん… 帰ってこない…… いつか大きくなったって・・・なまえよんでくれない・・ぼくのこと… ずっと会えなくなっちゃった… 」

「 死んじゃったら もう・・・」


(風太)「 二度とお母さんには会えない…。」


たとえそうだとしても…


「風太、勇真。 」

(風馬)「 家族は、会えなくなったからって消えて無くなるものじゃない・・。お前たち二人、それに父上、俺の中にずっと、記憶の中で母さんはこれからもずっとそばに、寄り添っていてくれる。」


(二人)「 ───..。 」

(風太)
「 …グス、…..どうやって… ?」


(風馬)
「 ──────.. 」
(風太の涙を拭う)



“ 母さん、“

今、俺がここにいるのは

何かずっと、偶然じゃない必要な意味があったんじゃないかって今ならそう思えたんだ。


風太と勇真が生まれてから今日まで

こんな形で… 悲しい母上の命と引き換えにそれまでずっと見つけ出せなかった自分の生き方が

今 ようやく何か分かった気がする、
その答えが…


残された家族・・

幸せが何だったのか、

血の繋がっていない俺は……

(二度も二人の母親を亡くした )


(俯く風馬)「 …… 」

(涙)
..──・・。


(風太)「!」


血が繋がっていなくても

こんなに築けた


(風太)「 …風馬・・・にぃちゃん…?」


抱き寄せる兄の腕が二人を強く離さなかった。

「 …… 」


惜しみなくこれまでずっと自分に向けてくれてきた愛情は

引き継いで生きると決めた

俺を苦しめてきた過去の罪は…

母さんの願うものへと

思い始めたこの気持ち、


“ …風太と勇真を純粋に守ってやりたい ”

(風馬)
「 ───・・ずっと、お前たちの中に忘れるな 」


“ 運命がこれからの俺の生き方を変えてくれそうな気がしたんだ…。”


(風馬)
「 …父上を支えて、いつか風太が立派になったら勇真も、家族みんなを支えていけばいい。」


……今の俺の家族と生きる居場所は・・・



(桜と桜花) “ 風馬… “


(風太と勇真)
「 ふうまにいちゃん。」



(風馬)「 ……。」


(三月と詩織) 「 おはよう。」


“ 風馬 “ 。


“ これからもずっと、風人の里のみんな、家族だけだ。”










──────────…。

(他界して二年の月日が経った母の形見の櫛を引き出しに静かにしまう)


そして、


(風太)
「 ん…しょ。ほらゆうま、みんなのまくらもってきて 」

(勇真)「 うん…。」


勇真は半目をこすりながらまだ眠そうだ。

(勇真)
「ぐぅ…。」←(立ったままいきなり寝る)


(風太)「 Σえっ!ゆうま!? 」



(火打ち石の音)「 !、….!!」

(薪を燃やして囲炉裏の火を起こす風馬)



「カチンッ! 」

「 ───…。」(小さな火種)




「チュン、チュンッ・・」

「チュン。」




「 ..….─────。」
(草花の朝露が日の光に照らされる)



シュズ・・、────…。(正装)

(着替えを済ませる桜花)
「 ……。」



(囲炉裏の鍋火)
パチパチ…ッ、パチン!

(井戸)
「キュル…、」
( 滑車のロープをひっぱり上げる)


ザァッ!

(風馬)「 ……、」

(二つの水汲み(おけ)をもって調理場へ)






─── 廊下 ───


 …タタタタッ!

(風太)「 ── ♪ 」



(廊下の往復雑巾掛け)

タタタタタッ…ッ!


(雑巾)
ギュウゥゥゥ…
───・・、…………ポタポタ・・ポタ。


(機嫌斜めな勇真)
ムス…。

(勇真)
「 もうっ!ふうにぃ、さむいっ!」

(風太)「 寒くないっ!。ほら、そんなとこでじっとしてるから寒いままなんだって、いっしょにいくよ。せーの… 」


「チュンッ」

(障子)
「 ────…。」


(桜花)「 …? 風太、勇真? 二人とも今朝は早いな 」

(二人)
「 あっ? ちちうえ。おはようございます 」


(桜花)「 今朝は、勇真は一人で起きれたのか?」

(勇真)「 ちがうもん、ふうにぃにむりやりおこされたんだもん。」


(風太)「 あにうえはもっと早くに起きてるんだぞ?」

(勇真)「 だってふうまにいちゃん、ニワトリよりはやいんだもん。」


(笑う桜花)
「 ハハハハッ、ニワトリか。そうか、勇真にはまだ早起きは辛いか。…風馬は本当にしっかりしているから感心だ。」

(勇真)「 ねねっ、ちちうえも今度へやでいっしょにねてもいいでしょ?」

(桜花)「 仕事がゆっくり片付いたらな。」

(勇真)「 ほんと! やくそくだよ? うそつかないでね、絶対だよっ 」


そこへ風馬がやって来る。


(風馬)「 ? 父上、おはようございます。 もう起床されていましたか。」

(桜花)「 風馬か、わざわざ呼びにすまんな。」


(風馬)「 おひつの朝餉(あさげ)の準備も整いましたので お勤め前にいつでも用意できます。」

(桜花)「 ありがとう、すぐに行く 」

(風馬)
「 ……さ、風太、勇真ももう片付けは終わったな?お前たちも井戸で顔洗って朝の支度をするんだ。」

(勇真)「 ごはん!? やった! 」

(風太)「 あっ!ゆうま、ぞうきんと水おけ!! ……もう..しかたないなぁ・・・んんっ、」

ス…ッ。(重たい桶が持ち上がる)


(風太)「 ? 」

水の入った重い水桶は風馬が代わりに持ってくれた。


(風太)「 ? おけ… 」

(風馬)
「 ほら、風太。ぼーっとしてるぞ 」


(風太)
「 ? ───… 、 えへへっ!」

(風馬)「 いくぞ。」


(風太)「 …、うんっ!」




“ ははうえ、あのね ”

おかあさん、亡くして・・

さびしくて、ゆうまとたくさん、がまんできなくて泣いたけど、

風馬にぃちゃんは、

ずっと… 何があってもずっと、ぼくと勇真のそばにいてくれるってやくそくしてくれたんだ。

いっぱいあそんでくれるし、

おねがいだってきいてくれる。

ちちうえの言う事だって

ゆうま、大きくなってお手伝いちゃんと出来るようになったんだよ。


だからね…

もうだいじょうぶ。


“ ぼくたちには、風馬にいちゃんや、父上がいるから。”

もう泣かない。

大きくなったら、

ぼくも

“ 兄上みたいになるの ”


立派な、父上を支えられる風馬にいちゃんのように・・。




(兄の手にそっと繋ぐ小さな手)

(風太)「 ……。」


(風馬)
「 風太、後で勇真連れてみんなで畑行こうな。さつまいも、たくさんなってたぞ。」


(風太)「 いくっ! 行きたい!! ミミズとり!」


“ なれるといいな ”

いつか、ぼくが大きくなっても


“ いつまでも・・父上、あにうえとゆうま、ずっとみんな 一緒がいい ”





【風太】
風人 ──朝焼けの空──


【END】

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