閑話休題

文字数 990文字

 太陽フレアM1.25発生ーーデリンジャー現象が広範囲に起き、地球上は原因不明の停電やシステム障害が起こっている。
 そんな状況なので、総務省危機管理室室長の私は、今日もデスクで生姜湯とサンドイッチを口にしていた。
「室長はどんなときでもその組み合わせですね」
 デスクの隣の男性……と言っても10歳以上も差があるので、息子か弟と言った感じの子が、私の口にしているものを見て笑った。
「そういうあなたは栄養が足りてないじゃない。自己管理できずに地球の管理ができますか」
「ですよね……」
 隣の男性は砂糖とカフェインたっぷりのエナジードリンクと、チョコバーがお昼ごはんだ。これは食事と言えるのだろか? お菓子だと言われてしまえばそれまで。でもみんな忙しすぎるし、栄養に関しては無頓着なのだ。
 その点、生姜湯とサンドイッチは効率がいい。生姜湯は体を温めてくれるし、糖分補給にもなる。サンドイッチは野菜も摂れる。あとはサンドイッチ伯爵の逸話を知っているだろうか。まぁこれはゲームなんかじゃなくて、大切な仕事ではあるけども。
 私は、サンドイッチを食べながらぐるっと室内を見回してみた。ああ……サンドイッチを食べている私はまだマシだ。チームのみんなは特に繊維質が足りてなさそうだ。そもそも栄養分が偏りすぎている。暖かくなると眠ってしまうからと暖房も控えめだからカップ麺なのもわかるけど、やっぱり野菜が足りていない。
 困った。これじゃ地球の危機管理をする前にチームメンバーが倒れてしまう。こうなったら。
「みんな、夜はピザを取るわよ。サラダとスープ付き! 異論はないわね。乳製品とかアレルギーある人いる?」
「アレルギーはないですけど……え、ピザっすか? 手が汚れてパソコンにすぐ触れない……」
「私たちに足りないのは、パソコンに触らない時間ってこと。ゆっくり食べている場合じゃないって思われそうだけど、こんなときだからこそ、休憩時間と食事はしっかりしないとね」
 チームメンバーは私の独断に渋々了承する。室長権限の無茶振りだってことは重々承知している。
 栄養不足なメンバーに必要なご飯。それはもちろんそうなんだけど、実際はピザを囲んでわいわいする時間ーー休息が大事なのだ。
 ね、仕事も大変だけど、一息入れましょう。本当に切羽詰まったときに一番必要なものは、肩の力を抜くための仲間との談笑と、温かいご飯なのだ。
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