第12話 ランウェイ

文字数 1,198文字

「舞台裏スタンバイお願いします。」
あれから半年。
「お願いします。」
「お願いしまーす。」
初めてちょっと私が載った雑誌。それが……バズってしまった。本当に小さくだけど、綺麗に撮れたってカメラマンさんも喜んでた。
「可愛い!」「美少女!」「萌愛ちゃんと似てない?」
すぐに私と萌愛は双子だという事を、世間に発表することになった。それからの私は、モデルとしての仕事が忙しかった。もちろんまだ表紙とかは飾れないけど、それでも結構大きく取り上げて貰えるようになった。そして……。
「初ランウェイ緊張してますか?」
「緊張してるのは七川さんの方じゃないですか?」
私は初めてランウェイを歩くことになったのだ。しかも……。
「もし、萌愛さんに会ったら、挨拶して忙しいからって言って、逃げてきてくださいね。不仲なのがバレないように!」
周りの雑踏に紛れて七川さんが言う。
「分かってる。」
そう、ここには萌愛がいる。別に一緒のランウェイでも無いから、そんなに関わりは無い。でも、ここの会場にいるんだ。しかも世間には「萌愛とは親の事情で違う環境で暮らしてました。でも、雑誌で萌愛の事知って、すぐに私もモデルになりました。萌愛と巡り合わせてくれた、このモデルという仕事が大好きです。」って言ってるから、皆私たちが不仲……っていうか、萌愛が私の事を拒絶してるのを知らない。
「くれぐれも変に話しかけて、余計に仲をこじらせないように!」
「分かってる。」
「望愛さん、出番です。こちらへどうぞ。」
「望愛さん、ランウェイ楽しんでくださいね!」
「はい!」
私は係の人につられて、位置に着く。もうすぐ私はいっぱいの人の前に出るんだ。あー、緊張してきた。そして、このランウェイを萌愛も見るんだ。このランウェイで認めてくれるかな?雑誌に載るたびに、萌愛に手紙を書いてファンレターを届けられる住所に送ってるんだ。萌愛は連絡先も教えてくれない。だから、ファンと同じ所に送るしかない。
「次のペアが帰ってきたら、ランウェイに進んでください。頑張って!」
「はい、ありがとうございます!」
ふっと息をつくと、すぐに合図が出された。私は前を向いてすぐにランウェイに出る。きゃー!何て声が聞こえた気がした。だけど、BGMが大きすぎてあんまり聞こえない。観客席を見渡すと、一個私の顔が貼ってあるうちわを見つけた!
「望愛ちゃん!Big Love!」
そんな文字が見える。体の奥底から元気と勇気と自信が沸いてきた。これって私のファンだよね。私はとびっきりの笑顔で、そっちに手を振った。そしたら
「きゃー!!」
ひときわ大きな歓声が上がり、私はちょっと笑う。めっちゃ私の事好きじゃん。なんて考えながら歩いてたら、すぐにポージングするところまで来た。ポーズしようとした時、観客の間にどよめきが起こった。え?私まだポージングしてないよ?皆の視線を追うように後ろを見ると、そこには……。
「萌愛?」
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登場人物紹介

秋山望愛(のあ)

クラスで顔が可愛いと有名。


秋山萌愛(もあ)

そこそこ人気のモデル。

かっこいい路線で売り出している。

七川優花

望愛のマネージャー。

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