エピローグ

文字数 989文字

 後日。相変わらず忙しいスー商会に新しいメンバーが加入した。名はエクレル。孤児だ
った彼女をタオ・スーが引き取り、住み込みで働かせている。その傍ら、エクレルは大好
きな楽器を使ってちょっとしたコンサートを開催している。人気はいま一つだが、持ち前
の明るさを武器に今日も楽器をかき鳴らす。
 ちょうどタオ・スーが別件で出かけているとき、エクレルは留守番を任されていた。た
だ留守番をしているのもと思った彼女は、いつもお世話になっている商会の掃除を始めた。
いつもはお付きのキョンシーの仕事なのだが、今日はそのお付きも一緒に出掛けてしまっ
ているので、商会にはエクレル一人しかいない。よしと気合をいれて窓を開けると、郵便
受けに何か入っていることに気が付く。開けてみると匿名の手紙があり、宛名はタオ・ス
ーと書いてある。勝手に開けるわけにもいかないので、机に手紙を置くと掃除を再開。

 掃除を始めてから数時間後、すっかりきれいになった商会に満足そうに溜息をついたエ
クレル。掃除用具を片付けていると、ドアチャイムが鳴ったのが聞こえた。どうやらタオ・
スーが帰ってきたようだ。ただ、声が聞こえないことを不思議に思ったエクレルは玄関に
顔を出しに行った。
「ど、どうしたんすか?」
「……あぁ……今、戻ったアル……あぁ……くたびれたぁ」
 前のめりに倒れているタオ・スーを起こし、机にもたれさせる。すぐに水を用意し運ぶ
と、その水を一気に飲み干す。一息ついたタオ・スーを見てエクレルは手紙がきていたこ
とを思い出し、報告する。そんなのは後で見るといわんばかりに手をひらひらとさせるタ
オ・スーだが、差出人がないちょっと変わった手紙だと言うと目の色を変えてエクレルが持
っていた手紙を奪い取る。急いではいるものの慎重に封を切り、便箋に目を通す。時折笑
ったり驚いたりとするタオ・スーに驚きつつも、その反応を楽しむエクレル。
「宛名のない手紙って何か思い当たる節があるのですか?」
「あるヨ。前にここで働いていたヘイランっていう素敵なお客さんがいたネ。その人から
手紙がきたみたいネ」
「へぇ。そうなんですか……」
読み終わったタオ・スーは封筒の中から何かが落ちたことに気づき拾い上げる。写真の
ようなものを見たタオ・スーは満面の笑顔を浮かべていた。エクレルは写真を覗き込むと、
そこには幸せそうな笑顔を浮かべた男性と女性が写っていた。



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