文字数 292文字

ふたりはたがいに走り寄って、
自然と詩のこの大きな教会のただ中に、手をとりあって立った。
ふたりの上では、目に見えない聖なる鐘が鳴りわたっていた。※

鐘の音が聞こえる
厳かな鐘の音が
私を(いざな)う鐘の音が

闇夜
導かれるように
家を飛び出すと

夜空に煌めく星々が
待っていたとばかり
私を照らした

その瞬間
私は確かに自由になれた
彼らが私を解き放ってくれた

私を捕らえて放さないこの小さな影から
荒涼、寂寞としたこの窮屈な箱庭から

「死んだらみんな星になるんだよ。神様と一緒に」

鐘の音が一つ

耳を 心を 澄ませさえすれば

世界と一つになれた

そう思える瞬間が
きっとくる

※ 角川文庫 雪の女王 アンデルセン童話集 『鐘』から抜粋

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