文字数 690文字




「洒落っ気があるだけならまだしも。喫煙にまで手を出して、お前は本当に何がしたいんだ」


彼女の瞳を占領するのは、肩を上下させて息を整える乱れた髪の生徒会長。心地が良い。異常な悦に浸っていた華之衣はあっさりと啄んでいた煙草を抜き盗られるのを許してしまう。嗚呼、私の為だけに消費したその酸素、私の為だけに使ってくれるその憤怒。なんて素晴らしいのかしら。

湧き上がる昂りに説明を付けるのが億劫で、彼女はそれに精一杯気が付かないフリをした。


『やぁね、堂上くん。孅弱な女の子にそんな鋭い目付きして』

「馬鹿を言うな。まだ火は着けていないな?だったら未遂のまま終わらせろ。残りの物も没収だ」

『そう。煙草を吸う女はお気に召さなかったかしら?』

「あぁ。嫌いだな」

『だったら・・・・・・』

彼女はそう言って、こちらに伸びている掌に淡い期待を込めてシガーボックスを差し出す。

『こうしたら好きって言ってくれるの?』


珍しく縋り付く思いだった。ねぇ、頭のお堅い生徒会長様。お慕い申し上げておりますって言いなさいよ。私に忠誠を誓いなさいよ。そんな悪巧みに堂上の表情はより険しくなる。何かを察知したように、目の前の女に警戒を張り巡らせた。


「お前のしょうもないゲームにこれ以上付き合ってられるか。生憎、僕も暇じゃないんだ」

『あらそう。釣れないの』

「とにかく次、校則違反を破ってみろ。学園長から処罰が下るぞ」

『そういう脅しかしら?興が失せることするわね』

「なぁ、どうして迷惑行為をする。僕にはお前の思考が理解できない」

『それには同感よ。堂上くんが惚れない理由が理解できないわ』

「全く話にならん。お前と居ると時間の無駄だ」


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み