壱
文字数 768文字
「おい」
登校中、低い声で話掛けてきたのは堂上 と言う男子生徒だった。
彼は名門中学校のとある女生徒に足を止めるように促し、彼女の見逃してはならないふしだらな身なりの ── ある一点を凝視した。
「華之衣 。お前の耳に付いているそれは何だ」
そう言われ足を止めた女生徒、もとい華之衣 珠唯 は待ってましたと言わんばかりに長い黒髪を艶やかに靡かせながら堂上の方に見返る。
正面を向いた彼女の耳には態とらしい程、大ぶりな真珠が付いていた。
「あら堂上くん。ご機嫌よう」
「今は挨拶なんてどうでもいい。僕はお前の耳にぶら下がっているそれについて聞いている」
この目の前の生徒会長 は釘付けになったかのように私から目が離せないようだ。これのことかしら?と彼女は得意気に光沢のあるパールをしなやかな指先でなぞる。
「母上の品だけれど、どうしても付けてみたくって。昨日穴開けちゃったのよね」
「は?お前は特進科に所属していながら何をしているんだ。普通科に落ちたいか?」
「なぁんてね。イヤリングに決まってるでしょう。それより似合ってるって一声くらい掛けたらどうなの」
不貞腐れて悪態を付く女を彼は呆れるように見た。
真っ直ぐに通った主張の無い高い鼻、切れ長な日本人らしい瞳、血の気が全く無いように感じさせる白い肌は真夏の日焼けを知らないのだろう。
そんな整った顔をした大和撫子にその装飾品が似合っているか、いないかと聞かれると堂上もよく映っていると思うが、生徒会長である彼にとってそれは二の次だ。
偏差値77の名門校、堂上 公卿 学園 の中でも選ばれし生徒だけが通える特進コース。そんな肩書きを背負った高嶺の花が校則違反を犯しているのだ。
いくら学力を最優先にしてクラス分けをする校風であっても、過去に校則違反で降格した奴の前例がある。
そうなれば彼女が普通科に落ちるのも時間の問題だと彼は悟った。
登校中、低い声で話掛けてきたのは
彼は名門中学校のとある女生徒に足を止めるように促し、彼女の見逃してはならないふしだらな身なりの ── ある一点を凝視した。
「
そう言われ足を止めた女生徒、もとい
正面を向いた彼女の耳には態とらしい程、大ぶりな真珠が付いていた。
「あら堂上くん。ご機嫌よう」
「今は挨拶なんてどうでもいい。僕はお前の耳にぶら下がっているそれについて聞いている」
この目の前の
「母上の品だけれど、どうしても付けてみたくって。昨日穴開けちゃったのよね」
「は?お前は特進科に所属していながら何をしているんだ。普通科に落ちたいか?」
「なぁんてね。イヤリングに決まってるでしょう。それより似合ってるって一声くらい掛けたらどうなの」
不貞腐れて悪態を付く女を彼は呆れるように見た。
真っ直ぐに通った主張の無い高い鼻、切れ長な日本人らしい瞳、血の気が全く無いように感じさせる白い肌は真夏の日焼けを知らないのだろう。
そんな整った顔をした大和撫子にその装飾品が似合っているか、いないかと聞かれると堂上もよく映っていると思うが、生徒会長である彼にとってそれは二の次だ。
偏差値77の名門校、
いくら学力を最優先にしてクラス分けをする校風であっても、過去に校則違反で降格した奴の前例がある。
そうなれば彼女が普通科に落ちるのも時間の問題だと彼は悟った。