第14話
文字数 1,652文字
「わかった!?クソ野郎だったのよクソ野郎!なんのなのよあの男は!縁結びの神ってのはあんな男に会わせるわけ?」
私はカウンター席に座るやいなや、既にカクテルを飲んでいたユイに食ってかかり、一気に金有のことについて文句を言った。何を呑気にカクテルなんぞ飲んでいるのだこの女は!
「まあまあ、落ち着いてください」
ユイは両手を広げて、私を落ち着かせようとする。落ち着いてられるかこんなもん!
「でも、お金は持ってたし、ハイスペックな男性だったんでしょ?」
ユイは笑みを浮かべてそう言った。
「まあそうだけど……。でも、人間性に問題がありすぎよあの男は!女を性処理の道具としてしか見てないのよ?本当、信じられない」
「うーん、確かに性処理の道具としてしか異性を見ないのは最低ですね」
ユイの言葉に私は、「でしょ!?」と指を立てる。
「ほんと最低。私が釣り合わないとまで言ってきたの!信じらんないでしょ?そりゃあ、私の見た目が芸能人なみとは言わないわよ。でもちゃんとした自分の考えを持ってるし、それなりにしっかりもしてるわ。そういう私のことを何も知らないくせにあんなこと言って、人の気持ちをなんだと思ってるのかしら」
本当に許せない。私は目の前におかれた水をグイッと喉に流し込んだ。
「でも、それってエツ子さんも同じじゃないですか?」
意味ありげに、ユイが言った。
「どういう意味よ?」
「お金とか、学歴とか、そういう尺度だけで計られるのも同じくらい嫌な気持ちになるもんじゃないですかね?」
それは……。
「でも、お金のない男とは、スペックの低い将来性のない男とは怖くて結婚なんてできないわよ!結婚を視野に入れた女が、そこを大切にすることの何がいけないのよ?私はね、誰になんと言われようと、金持ちのイケメンとハイスペック男と結婚するのよ!」
これが私の本心なのだ。何がいけないというのだ。
「ふーん、どうなんでしょうねえそれは」
ユイは何か言いたそうに唇を尖らせる。
「何よ?」
私はギロリとユイを睨みつける。
「いやあ、別に」
「というわけで、さっさと次の男と出会わせないさい!」
「無理ですよお。そういう力はないって言ったでしょ?あくまで運が良くなるだけなんです。でも案外、近くに居そうですけどね、いい人なんて」
ユイは両手を頭の後ろで組み、そう言った。
「はっ、どこにいるってのよ?」
「例えば、奥にいるチェックシャツの男性なんてどうです?優しそうで、思いやりがありそうですよ」
私はユイに視線に促され、カウンター席の一番奥に座る男を見つけた。
私は思わず「はあ?」と声をあげる。
シワシワのチェックシャツに、だっさいベージュのチノパン。顔だって決してカッコよくはない。薄っぺらいはんぺんみたいだ。
「ダメよあんな男」
「そうですかあ?お似合いだと思うんですけどねえエツ子さんと」
お似合い?私があの男と?その言葉にカチンときた。
「冗談じゃないわよ!なんで私があんなダサいチャックのシャツ着て、こんな場違いな場所に飄々と来てる男と付き合わないとダメなのよ。死んでも嫌!」
タイミング悪く、しんとした店内に私の怒声が響いた。
私は、「あ」と口に手を当て、ゆっくりと男の方を見る。
男はぽかんとした表情を浮かべ、自分の服に視線を落とし、
「ぬぁあにぃ!?僕のことかぁ!?」と立ち上がった。
やばい、やってしまった。
私は精一杯の笑顔を取り繕って、「違うんですう」と言った。が、男は激昂した様子で、ピョコピョコとこちらに歩いてくる。なんだなんだこの男は。
「ボカァだってな!いい歳して、こんな若い子ばっかりいるようなカフェに来て、飲み物も頼まずに水一杯で、ギャーギャー騒ぐ日本人形みたいな髪型の女は願い下げだよ!」
日本人形みたいな髪?水一杯で?
私は自分の席の前におかれた一杯の水に視線をやる。
「ぬぁあによ!?なんだ?そいつぁ私のことか?」
このボケ畜生があ!私は思わず席を立った。
私はカウンター席に座るやいなや、既にカクテルを飲んでいたユイに食ってかかり、一気に金有のことについて文句を言った。何を呑気にカクテルなんぞ飲んでいるのだこの女は!
「まあまあ、落ち着いてください」
ユイは両手を広げて、私を落ち着かせようとする。落ち着いてられるかこんなもん!
「でも、お金は持ってたし、ハイスペックな男性だったんでしょ?」
ユイは笑みを浮かべてそう言った。
「まあそうだけど……。でも、人間性に問題がありすぎよあの男は!女を性処理の道具としてしか見てないのよ?本当、信じられない」
「うーん、確かに性処理の道具としてしか異性を見ないのは最低ですね」
ユイの言葉に私は、「でしょ!?」と指を立てる。
「ほんと最低。私が釣り合わないとまで言ってきたの!信じらんないでしょ?そりゃあ、私の見た目が芸能人なみとは言わないわよ。でもちゃんとした自分の考えを持ってるし、それなりにしっかりもしてるわ。そういう私のことを何も知らないくせにあんなこと言って、人の気持ちをなんだと思ってるのかしら」
本当に許せない。私は目の前におかれた水をグイッと喉に流し込んだ。
「でも、それってエツ子さんも同じじゃないですか?」
意味ありげに、ユイが言った。
「どういう意味よ?」
「お金とか、学歴とか、そういう尺度だけで計られるのも同じくらい嫌な気持ちになるもんじゃないですかね?」
それは……。
「でも、お金のない男とは、スペックの低い将来性のない男とは怖くて結婚なんてできないわよ!結婚を視野に入れた女が、そこを大切にすることの何がいけないのよ?私はね、誰になんと言われようと、金持ちのイケメンとハイスペック男と結婚するのよ!」
これが私の本心なのだ。何がいけないというのだ。
「ふーん、どうなんでしょうねえそれは」
ユイは何か言いたそうに唇を尖らせる。
「何よ?」
私はギロリとユイを睨みつける。
「いやあ、別に」
「というわけで、さっさと次の男と出会わせないさい!」
「無理ですよお。そういう力はないって言ったでしょ?あくまで運が良くなるだけなんです。でも案外、近くに居そうですけどね、いい人なんて」
ユイは両手を頭の後ろで組み、そう言った。
「はっ、どこにいるってのよ?」
「例えば、奥にいるチェックシャツの男性なんてどうです?優しそうで、思いやりがありそうですよ」
私はユイに視線に促され、カウンター席の一番奥に座る男を見つけた。
私は思わず「はあ?」と声をあげる。
シワシワのチェックシャツに、だっさいベージュのチノパン。顔だって決してカッコよくはない。薄っぺらいはんぺんみたいだ。
「ダメよあんな男」
「そうですかあ?お似合いだと思うんですけどねえエツ子さんと」
お似合い?私があの男と?その言葉にカチンときた。
「冗談じゃないわよ!なんで私があんなダサいチャックのシャツ着て、こんな場違いな場所に飄々と来てる男と付き合わないとダメなのよ。死んでも嫌!」
タイミング悪く、しんとした店内に私の怒声が響いた。
私は、「あ」と口に手を当て、ゆっくりと男の方を見る。
男はぽかんとした表情を浮かべ、自分の服に視線を落とし、
「ぬぁあにぃ!?僕のことかぁ!?」と立ち上がった。
やばい、やってしまった。
私は精一杯の笑顔を取り繕って、「違うんですう」と言った。が、男は激昂した様子で、ピョコピョコとこちらに歩いてくる。なんだなんだこの男は。
「ボカァだってな!いい歳して、こんな若い子ばっかりいるようなカフェに来て、飲み物も頼まずに水一杯で、ギャーギャー騒ぐ日本人形みたいな髪型の女は願い下げだよ!」
日本人形みたいな髪?水一杯で?
私は自分の席の前におかれた一杯の水に視線をやる。
「ぬぁあによ!?なんだ?そいつぁ私のことか?」
このボケ畜生があ!私は思わず席を立った。