第2話 タンスニゴンクエストの冒険者たち
文字数 2,667文字
さて旅行当日、3人は電車に乗ってX県の現地に向かった。
駅に着くと、指定され場所で待機した。そこの待機所には、彼ら3人を含めて100人ほどの人たちがいた。ほとんど男だった。年齢はばらばらだった。中には高齢者の人も混じっていた。
「バスが来るのかね」
「それについては何も言ってなかったなあ」
参加者たちはそれぞれスマホを見たり、雑談していた。
突然、待機所の周囲から白い煙が上がった。
みんなどよめいた。
「えっ、なに、火事? ちょっと待ってよ、何が起こった??」
視界が一気に真っ白になった。
すると全身黒の網タイツの集団が煙の中から現れた。
彼らは動揺している参加者一人一人にすばやく手錠をかけた。
参加者たちは目隠しされた。
「やめろよ! なんだよ!」
怒号が飛び交うが、彼らの洗練された動きに抗うことはできなかった。
参加者たちは1本のロープでつながれた。黒の網タイツ集団に促されるままバスに乗せられて発車した。
しばらくこうして揺られているあいだ、参加者たちは黙ったままだった。
バスは止まった。
黒の網タイツ集団は無言で参加者たちの腕をつかみ降りるように促した。
数分歩いたところで、目隠しを外されて手錠も外された。
黒の網タイツ集団は任務が終わると、速やかに去っていった。
「今のなんだったんだよ」
Mは去っていく黒の網タイツ集団を目で追っていた。
「ゲームはすでに始まってるんだよ」
Sは身が引き締まるような気持ちだった。
Kは二人を手招きしながら、
「みんな、こっちこいよ!」と、叫んだ。
参加者たちが高台から見下したその向こうには、中世のヨーロッパを思わせるような光景が広がっていた。大きな城が真ん中にそびえ、その周りには森が広がり、さらにその外縁は石造りの建物が見えた。
参加者たちは、その光景に歓喜した。
「完成度高いねえ。凝ってるね!」
「さっきはマジでびびったよ」
「ゲームまだ始まってないのに、これだからな」
参加者たちがガヤガヤ騒いでいるところに、中世の騎士を思わせるような格好した兵隊の格好した男たちがやってきた。
その中のひとりが前に進み出た。一番偉そうな人だった。兵隊長だ。
「諸君、タンスニゴンクエストの世界によくぞ参った。勇気ある行動を称えたい。諸君一人一人は冒険者である。これから説明する内容を十分に理解し、勝利することを期待する」
SはKに言った。
「ドラゴンクエストのパクリじゃないのか?」
「タンスにゴンのパクリでもあるね」
横からバニーガールの格好をしたおばさんたちがやってきて、地元で採れた野菜を手渡すように、参加者一組ずつに『冒険の書』が渡された。
「なんでおばさんなの?」Kは笑いをこらえていた。
「おじさんじゃないんだから、いいんじゃない?」Mは言った。
兵隊長は話し始めた。
「今、諸君に渡した『冒険の書』は、この過酷な旅を進めていく上で、重要な羅針盤となるはずだ。諸君が冒険の途上において、迷い、悩み、苦しんだときに、この書を紐解いてほしい。きっと道が拓けるものと信じている」
参加者たちは『冒険の書』をパラパラめくっていた。
「ここで私から冒険全般のお話しをさせていただく。まず、諸君の冒険の目的は、あそこの城に潜む邪悪な魔物を退治し、世界の平和を取り戻すことだ」
兵隊長は彼の後方の大きな城に向けて腕を伸ばし、人差し指で指さした。
「あの城は『死んだら城』と呼ばれる大変恐ろしい場所だ。今まで幾多の冒険者たちが挑んだ。しかし残念ながら、未だ生還した者はいない」
3人は小声言った。
「しんだらじょう…」
「シンデレラ城のパクリだよねえ」
「ディズニーに訴えられるんじゃないの?」
兵隊長は続けた。
「今回の賞金は120万XG(エックスゴールド)だ。XGはこの世界で使われる通貨である。1XGは100円で考えていただきたい。したがってこの外の世界で使わている通貨に換算すれば、1億2000万円ということになる。もし誰一人として生還できなかった場合には、この賞金は繰越され、次の冒険者たちにその任務が託されることになる」
3人は色めき立った。
「すごいなあ」
「賞金はきっちり3等分だからね」
「そうだな。バンドが揉める原因の大半はこれだしな」
「諸君が冒険の目的を達成するためにやるべきことは2つある。一つは1000の経験値を獲得することだ。そのためには町に潜む魔物たちと戦い、勝利しなければならない。魔物によって得られる経験値は異なる。弱い相手だと得られる経験値は少なく、強い相手だと高くなる。魔物を見つけたら戦いを挑み、勝利してほしい。もう一つはあの城に入るためにはカギが必要だ。そのカギはこのフィールドのどこかに眠っている。諸君は町の住民に積極的に話しかけてヒントを得てほしい。この2つのタスクをクリアする期限は、明後日の日没までだ。それまでに達成できなかった冒険者たちは、この世界から弾き出されることになる」
ここまで兵隊長が説明すると、さっきのおばさんバニーガールがまたやってきた。
一人一人に金色のカードが渡された。
「今、渡したカードはXGカードと呼ばれるものだ。このタンスニゴンクエスト内で宿屋に泊まったり、武器や防具を購入したりする際に、そのカードで支払っていただきたい。支払限度額は50000XGだ。ご利用は計画的に、お願いしたい。またこのカードは諸君のIDを示すカードでもある。諸君の体力状態つまりHP(ヒットポイント)もそこに記録されている。魔物と戦い傷ついたときにはそのHPが減っていく。それを回復するためにはエネルギーを補給するか宿屋に泊まって回復に努めてほしい」
「50000XGって500万円か…限度枠、結構大きいな」
「別に使うことってそんなにないでしょ」
「宿屋くらいだよね」
ここでまたまたおばさんバニーガールがやってきた。
スターウォーズに出てくるようなライトセーバーを渡された。武器らしい。
「説明はこれで終わりになる。諸君はこれからあそこの門をくぐると冒険者になる。さきほど渡した『冒険の書』を頼りに『死んだら城』に潜む魔物を退治してほしい。もし諸君がそれでも迷うときには、XGカードに向かって助けを求めるがよい。導いてくれる人が必ずや現れることであろう。以上だ。幸運を祈る」
兵隊長はそう言うと、部下の兵隊を引き連れて、門の両脇に整列した。
参加者たちはその整列した兵隊のあいだを通り抜けて門をくぐった。
MとKとSの3人は冒険者になった。
タンスニゴンクエストの過酷な旅が始まった。
駅に着くと、指定され場所で待機した。そこの待機所には、彼ら3人を含めて100人ほどの人たちがいた。ほとんど男だった。年齢はばらばらだった。中には高齢者の人も混じっていた。
「バスが来るのかね」
「それについては何も言ってなかったなあ」
参加者たちはそれぞれスマホを見たり、雑談していた。
突然、待機所の周囲から白い煙が上がった。
みんなどよめいた。
「えっ、なに、火事? ちょっと待ってよ、何が起こった??」
視界が一気に真っ白になった。
すると全身黒の網タイツの集団が煙の中から現れた。
彼らは動揺している参加者一人一人にすばやく手錠をかけた。
参加者たちは目隠しされた。
「やめろよ! なんだよ!」
怒号が飛び交うが、彼らの洗練された動きに抗うことはできなかった。
参加者たちは1本のロープでつながれた。黒の網タイツ集団に促されるままバスに乗せられて発車した。
しばらくこうして揺られているあいだ、参加者たちは黙ったままだった。
バスは止まった。
黒の網タイツ集団は無言で参加者たちの腕をつかみ降りるように促した。
数分歩いたところで、目隠しを外されて手錠も外された。
黒の網タイツ集団は任務が終わると、速やかに去っていった。
「今のなんだったんだよ」
Mは去っていく黒の網タイツ集団を目で追っていた。
「ゲームはすでに始まってるんだよ」
Sは身が引き締まるような気持ちだった。
Kは二人を手招きしながら、
「みんな、こっちこいよ!」と、叫んだ。
参加者たちが高台から見下したその向こうには、中世のヨーロッパを思わせるような光景が広がっていた。大きな城が真ん中にそびえ、その周りには森が広がり、さらにその外縁は石造りの建物が見えた。
参加者たちは、その光景に歓喜した。
「完成度高いねえ。凝ってるね!」
「さっきはマジでびびったよ」
「ゲームまだ始まってないのに、これだからな」
参加者たちがガヤガヤ騒いでいるところに、中世の騎士を思わせるような格好した兵隊の格好した男たちがやってきた。
その中のひとりが前に進み出た。一番偉そうな人だった。兵隊長だ。
「諸君、タンスニゴンクエストの世界によくぞ参った。勇気ある行動を称えたい。諸君一人一人は冒険者である。これから説明する内容を十分に理解し、勝利することを期待する」
SはKに言った。
「ドラゴンクエストのパクリじゃないのか?」
「タンスにゴンのパクリでもあるね」
横からバニーガールの格好をしたおばさんたちがやってきて、地元で採れた野菜を手渡すように、参加者一組ずつに『冒険の書』が渡された。
「なんでおばさんなの?」Kは笑いをこらえていた。
「おじさんじゃないんだから、いいんじゃない?」Mは言った。
兵隊長は話し始めた。
「今、諸君に渡した『冒険の書』は、この過酷な旅を進めていく上で、重要な羅針盤となるはずだ。諸君が冒険の途上において、迷い、悩み、苦しんだときに、この書を紐解いてほしい。きっと道が拓けるものと信じている」
参加者たちは『冒険の書』をパラパラめくっていた。
「ここで私から冒険全般のお話しをさせていただく。まず、諸君の冒険の目的は、あそこの城に潜む邪悪な魔物を退治し、世界の平和を取り戻すことだ」
兵隊長は彼の後方の大きな城に向けて腕を伸ばし、人差し指で指さした。
「あの城は『死んだら城』と呼ばれる大変恐ろしい場所だ。今まで幾多の冒険者たちが挑んだ。しかし残念ながら、未だ生還した者はいない」
3人は小声言った。
「しんだらじょう…」
「シンデレラ城のパクリだよねえ」
「ディズニーに訴えられるんじゃないの?」
兵隊長は続けた。
「今回の賞金は120万XG(エックスゴールド)だ。XGはこの世界で使われる通貨である。1XGは100円で考えていただきたい。したがってこの外の世界で使わている通貨に換算すれば、1億2000万円ということになる。もし誰一人として生還できなかった場合には、この賞金は繰越され、次の冒険者たちにその任務が託されることになる」
3人は色めき立った。
「すごいなあ」
「賞金はきっちり3等分だからね」
「そうだな。バンドが揉める原因の大半はこれだしな」
「諸君が冒険の目的を達成するためにやるべきことは2つある。一つは1000の経験値を獲得することだ。そのためには町に潜む魔物たちと戦い、勝利しなければならない。魔物によって得られる経験値は異なる。弱い相手だと得られる経験値は少なく、強い相手だと高くなる。魔物を見つけたら戦いを挑み、勝利してほしい。もう一つはあの城に入るためにはカギが必要だ。そのカギはこのフィールドのどこかに眠っている。諸君は町の住民に積極的に話しかけてヒントを得てほしい。この2つのタスクをクリアする期限は、明後日の日没までだ。それまでに達成できなかった冒険者たちは、この世界から弾き出されることになる」
ここまで兵隊長が説明すると、さっきのおばさんバニーガールがまたやってきた。
一人一人に金色のカードが渡された。
「今、渡したカードはXGカードと呼ばれるものだ。このタンスニゴンクエスト内で宿屋に泊まったり、武器や防具を購入したりする際に、そのカードで支払っていただきたい。支払限度額は50000XGだ。ご利用は計画的に、お願いしたい。またこのカードは諸君のIDを示すカードでもある。諸君の体力状態つまりHP(ヒットポイント)もそこに記録されている。魔物と戦い傷ついたときにはそのHPが減っていく。それを回復するためにはエネルギーを補給するか宿屋に泊まって回復に努めてほしい」
「50000XGって500万円か…限度枠、結構大きいな」
「別に使うことってそんなにないでしょ」
「宿屋くらいだよね」
ここでまたまたおばさんバニーガールがやってきた。
スターウォーズに出てくるようなライトセーバーを渡された。武器らしい。
「説明はこれで終わりになる。諸君はこれからあそこの門をくぐると冒険者になる。さきほど渡した『冒険の書』を頼りに『死んだら城』に潜む魔物を退治してほしい。もし諸君がそれでも迷うときには、XGカードに向かって助けを求めるがよい。導いてくれる人が必ずや現れることであろう。以上だ。幸運を祈る」
兵隊長はそう言うと、部下の兵隊を引き連れて、門の両脇に整列した。
参加者たちはその整列した兵隊のあいだを通り抜けて門をくぐった。
MとKとSの3人は冒険者になった。
タンスニゴンクエストの過酷な旅が始まった。