引越し?
文字数 1,548文字
おじいさん猫から聞いていた「引っ越し」という人間の行動を、とうとうあの人間も始めてしまった。
あの人間が、家からいろんな物を引っ張り出し、自動車に乗せ始めたんだ。
しかもあの人間は、ぼくのために作ってくれた段ボールの家もばらばらに壊し、ごみ置き場に持って行ってしまった。
おじいさん猫の話では、このままではぼくもおじいさん猫のように、置き去りにされるのかも知れない。
ある日突然、縁側にたくさんのキャットフードと水が置かれ、あの人間は姿を消し、そしてぼくだけになる。
ぼくがそのキャットフードを食べ終えれば、あとはそれまでのように、虫やネズミやヘビやチョウの幼虫を食べたり、ゴミ置き場で食べ物を探したりしなければいけない。
しかももう段ボールの家はなく、冬になればまた寒い思いを…
だけど、いまさらぼくにそんなことが出来るだろうか?
それにぼくはあの何かを「取られ」て以来、あの人間のことが自分の母親のような気がして、それでいつもいつも甘えていたかったのに!
それなのにあの人間はぼくを置いて、どこかへ行ってしまうのだろうか?
ぼくがそんなことを考えているうちに、あの人間の家の中はすっかり空っぽになり、そして自動車の中にはたくさんのものが乗っていた。
それを見ていたぼくは、いよいよおろおろしていた。
ぼくは置いて行かれてしまう…
そう思っていたら、ぼくが「何か」を取られたときに入れられたあのかごが、なぜか自動車のそばに置いてあった。
それでぼくは、何となくぼーっとそのかごを見ていた。
そしたら、後ろからあの人間が近づいてきて、いきなりぼくを抱っこして、ぼくはそのままかごに押し込まれ、閉じ込められた。
それでぼくはまた出られなくなり、今度はいったい何を取られるのだろうと、かごの中でおろおろしていた。
すくなくともおじいさん猫は、かごなんかには入れられなかった。
そして何日かはキャットフードを食べて生き延びた。
だけどぼくはかごに閉じ込められたので、キャットフードも食べられない。
もうどうしようもない。
困った困った…
ぼくはそう思い心配で心配で、とにかくおろおろしていたんだ。
だけどそう思っていたら、あの人間が「ミッキー」と言って、それからいきなりかごが地面から離れ、そしてぼくはかごごと自動車に乗せられた。
もしかして、自動車に乗せてもらうということは…
そう思っていたら、あの人間は自動車の中で丸くてくるくる回すような輪っかの前に座り、ぼくに「ミッキー」と声をかけてから、自動車はぶーと音を立てて動き出した。
ぼくはおじいさん猫みたいに置き去りにはされなかった!
それでぼくはほっとした。
とてもうれしかった。
だけど自動車の中で、ぼくはとても不安だった。
ゆれるのがこわいし、景色がびゅんびゅん動いてこわいし。
だけどあの人間は、丸くてくるくる回すものを時々くるくる回しながら、ときどきぼくの顔を見て「ミッキー」と言った。
それでぼくは少し安心した。
それからぼくはあの人間の顔を見たり、外の景色を見たりした。
景色はぼくらが必死で走るくらいの速さで動いている。
自動車って、不思議な家だ。
それから自動車は長いこと走って、やがてぼくは眠くなり、途中で三回くらい眠ってから目が覚めた。
すると見たことのない場所に着いていて、ぼくはかごごと自動車からおろされた。
そしてかごごと、見たことのない家に入れられた。
つづく(連載中)
あの人間が、家からいろんな物を引っ張り出し、自動車に乗せ始めたんだ。
しかもあの人間は、ぼくのために作ってくれた段ボールの家もばらばらに壊し、ごみ置き場に持って行ってしまった。
おじいさん猫の話では、このままではぼくもおじいさん猫のように、置き去りにされるのかも知れない。
ある日突然、縁側にたくさんのキャットフードと水が置かれ、あの人間は姿を消し、そしてぼくだけになる。
ぼくがそのキャットフードを食べ終えれば、あとはそれまでのように、虫やネズミやヘビやチョウの幼虫を食べたり、ゴミ置き場で食べ物を探したりしなければいけない。
しかももう段ボールの家はなく、冬になればまた寒い思いを…
だけど、いまさらぼくにそんなことが出来るだろうか?
それにぼくはあの何かを「取られ」て以来、あの人間のことが自分の母親のような気がして、それでいつもいつも甘えていたかったのに!
それなのにあの人間はぼくを置いて、どこかへ行ってしまうのだろうか?
ぼくがそんなことを考えているうちに、あの人間の家の中はすっかり空っぽになり、そして自動車の中にはたくさんのものが乗っていた。
それを見ていたぼくは、いよいよおろおろしていた。
ぼくは置いて行かれてしまう…
そう思っていたら、ぼくが「何か」を取られたときに入れられたあのかごが、なぜか自動車のそばに置いてあった。
それでぼくは、何となくぼーっとそのかごを見ていた。
そしたら、後ろからあの人間が近づいてきて、いきなりぼくを抱っこして、ぼくはそのままかごに押し込まれ、閉じ込められた。
それでぼくはまた出られなくなり、今度はいったい何を取られるのだろうと、かごの中でおろおろしていた。
すくなくともおじいさん猫は、かごなんかには入れられなかった。
そして何日かはキャットフードを食べて生き延びた。
だけどぼくはかごに閉じ込められたので、キャットフードも食べられない。
もうどうしようもない。
困った困った…
ぼくはそう思い心配で心配で、とにかくおろおろしていたんだ。
だけどそう思っていたら、あの人間が「ミッキー」と言って、それからいきなりかごが地面から離れ、そしてぼくはかごごと自動車に乗せられた。
もしかして、自動車に乗せてもらうということは…
そう思っていたら、あの人間は自動車の中で丸くてくるくる回すような輪っかの前に座り、ぼくに「ミッキー」と声をかけてから、自動車はぶーと音を立てて動き出した。
ぼくはおじいさん猫みたいに置き去りにはされなかった!
それでぼくはほっとした。
とてもうれしかった。
だけど自動車の中で、ぼくはとても不安だった。
ゆれるのがこわいし、景色がびゅんびゅん動いてこわいし。
だけどあの人間は、丸くてくるくる回すものを時々くるくる回しながら、ときどきぼくの顔を見て「ミッキー」と言った。
それでぼくは少し安心した。
それからぼくはあの人間の顔を見たり、外の景色を見たりした。
景色はぼくらが必死で走るくらいの速さで動いている。
自動車って、不思議な家だ。
それから自動車は長いこと走って、やがてぼくは眠くなり、途中で三回くらい眠ってから目が覚めた。
すると見たことのない場所に着いていて、ぼくはかごごと自動車からおろされた。
そしてかごごと、見たことのない家に入れられた。
つづく(連載中)