第2話

文字数 530文字

母は霊感がある訳ではない。むしろ幽霊やお化けを異常に怖がっていた。

「なんで死ぬってわかるん? オーラが薄くなってるとか?」

「オーラなんか見えへんて。なんやわからんけど、勘で、

くるんや」

母は不思議な表現をした。だが身内を見送った経験のある老人なら誰でもこうした能力があるものと、私は思っていた。あの日までは。

5年前、私は友人から1匹の猫を預かった。旅行に行くので2晩お願い、と言うので引き受けた。彼女は一人暮らしで、他に頼れる人がいなかった。茶色いアメリカンショートヘアの雌だった。ペットショップで購入したとの事で、結構な値段がするだろうと検討がついた。

名前をリズと言った。マーブル模様が美しく、大きな瞳が愛らしい。
ところが母はリズをひと目見て、曇った顔をした。

「まさか、また死ぬとか言わんといてよね」
「せやなあ。気のせいやったらいいねんけど…」

絶対に外に出さないで、と友人は言ったが、リズは大変やんちゃな子で、目を離すと外に出たがるので困った。母の不吉な予言の事もあって、私は細心の注意を払ってリズの世話をした。仕事がある私に代わって、日中は母が見てくれた。母にも父にも、絶対に外に出さないよう、私は念を押した。
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