三匹の罪豚
文字数 2,355文字
父を亡くし、母を亡くし、故郷の家を失くした。
その目には自然、復讐の炎が爛々と燃えたぎった。
アムネジアの中で燃える復讐の炎は、特にウルフ一族絶滅を掲げてポーク一族を扇動したポーク王家の兄弟へ向けられていた。
英傑クー・フーリンをも苦しめたコノートの女王メイヴ。
その死因こそ、水浴び中にチーズを頭にぶつけられたことである。
チーズ塊は一個数十キロにもなるが、日用品として入手が容易である。
アムネジアは行商人に化けて城にチーズを運び込み、デイビッドの水浴びの時を待った。そして荷台に偽装した投擲機でデイビッドを狙える瞬間を待っていたのだ。
死んだとなればその報せはどんな駿馬よりも速く地を駆けるだろう。
アムネジアは勝利の余韻もないままに走った。
フィリップス・ポークとの「会談」の予定は既に取り付けてあったのである。
私はその復讐をしているに過ぎない。それはキミも同じことなのではないかね。
デイビッドの死は私の耳にも届いている。ウルフ一族の侵入があったこともな。
私も殺しに来たのだろうが、奇襲というのは二度通じるものではない。
覚えておきたまえ。
そこを人身売買の舞台にしてはる……。
アンタがやってるのは復讐やない……。
ただ私腹を肥やそうとしとるだけや……。一緒にすな……。
ゆるせへん……フィリップス!! ゆるせへん!!
気が済んだなら帰りたまえ……いや、待てよ。お前女だろう?
ならばそうさな、お前も人身売買に流してやれば良い金になろう。
昨日今日絶滅したばかりの種族とは違う、ウルフ一族の生き残り。
毛並みも良い。きっと高く売れるぞ……。
復讐鬼となった自らに耐えきれず自死を選んだか、的場・ポーク・浩司がその復讐を果たしたのか。
人知れず生き延びて、的場・ポーク・浩司の復讐の牙から逃げ切ったのかもしれない。
そうだとすれば、彼女の残りの人生は良心の呵責と伴にあったことだろう。
露骨に三男の的場・ポーク・浩司が利口に描かれているが、それが生存者の特権というものである。
的場・ポーク・浩司はそれからもポーク一族にとって利口な末弟として語られるのであった。
どっとはらい。