4. クソガキ - ⑦

文字数 1,696文字

ガキは声を出しそうにもなったらしいが、結局選んだ方法はすぐ文字を書いて伝えることだったと説明した。それから、話しかけられたらすぐ文字を書いて見せるようになったらしい。そして、そのグループの3人は、クソガキが何も言わなくても理解してくれるようになって、下校まで一緒にするようになったそうだ。
 だからと言って、距離を縮めることができたわけではなかったそうだ。休み時間になったら、他のクラスのモテる男の子たちがこの女の子と遊びにきて、すぐどこかへ消えて行ったらしい。その時、クソガキはまるで自分がその子と会ったこともない真っ赤な他人のように感じていたそうだ。それもそうと、クソガキは一切口も開かないし、顔も不細工だし、太ってるし、性格も悪いから当然のことだったのだろう。クソガキはそれを知っていながらも、やはりつららが気にはなるから、休み時間を地獄のように感じていたそうだ。そんな地獄のような時間ではあっても、前に比べると平和で楽しい日々であって、少しは学校を行きたくなる場所と考えるようになりつつあったらしい。
 しかし、それも長くは続かなかったそうだ。クソガキは、ある日の出来事でまた大きなショックを受けたのがその理由だったと説明した。クソガキはいつものように学校が終わって一緒に下校しようとしていたそうだ。その時、半分ハゲている50代後半の担任がつららだけ残るようにと言ったらしい。他の子は早く帰れと言ったそうだ。どう考えても怪しかったクソガキは、帰らずにこっそりとその担任とつららを追っていたらしい。クソガキが追っていた途中聞いたのが間違ってなければ、つららがなんで呼ばれているのかを担任に聞いても、その担任はちょっと用事があるとしか言わなかったそうだ。そして、その2人は誰もいない廊下を通って、空いているクラスの中へ入ったらしい。
 クソガキはそのままクラスの前まで行き、廊下の窓を通して、中を覗き始めたそうだ。そして、クソガキの目に映ったのは、担任がその女の子の体を無理やり触っている光景だったそうだ。角度的にその行為まで至ったかどうかは見えなかったが、色々動いていたそうだ。それを見たクソガキは別人格を出すまでもなく、担任を殺そうと、凶器を探していたそうだ。隣のクラスからモップを見つけ、それを手に持って入ろうとしていたらしい。だが、クラスに入る直前につららが抵抗してクラスから抜け出そうとするのを見て、くそガキはその場から逃げたそうだ。それをきっかけに、くそガキはつららに対して緊張するようになったそうだ。そして、その日以来、文字を書いて会話することもしなくなったと説明した。
 それからクソガキは、これは片思いではなく、ただその人に対して興味深かっただけだと自己催眠をかけていたそうだ。そんなクソガキの事情を知るわけない周りの人は、そんなクソガキを心配することなく、ただただ遠くなっていくだけだったそうだ。その女の子に話しかけられるのも、席替えをしてから完全になくなったらしい。
 そして、卒業式。卒業アルバムにメッセージを書いてくれた人はごく数人だけだったが、書いてくれた人は全員、「何か話して欲しかった」とか「中学校へ行ったらちゃんと話してね」と書いたそうだ。まあ、その卒業アルバムはこの場所のどこかにあるだろう。探せば出てくると思う。探す気はないけど。まあ、あんなことが書かれてはあるらしいが、本当は無言症になっていたわけではなかったらしい。話そうとすればいつでも全然話せたそうだ。それもそうか。相変わらず、別人格たちとも話していただろうし、家で夕飯が出たら返事しないと殴られてただろうし。ていうか、今も話そうとすれば全然話せるってことか?
 そして、中学生になったクソガキは、小学校での初日とほぼ同じようなことが起きたらしい。また初日にクラスの窓側の一番後ろの席に座ったそうだ。全く。学習能力もないのか?それで、クソガキに誰かが寄ってきて「おい、なんだこの豚野郎は?」と言ったそうだ。そして、その子はクソガキのネクタイを掴んで首を絞めたらしい。だが、クソガキにはもう全部慣れているこ
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