肉塊は泥人形と踊る

文字数 1,327文字

 俺は地面に近づいていく恐怖から開放された嬉しさで地面から頭を抜き出してそのまま右手を揚げてガッツポーズをした。
 それを見ていた周囲の半獣人達は勿論、ベルティーナも何が起きたのか理解できずにそのまま棒立ちになった、ただ謎の魔獣だけを除いて。
・・・!危ないぞそこの青年!!
えっ、おお・・・結構大きいし臭ッ!
 半獣人の男性が俺のことを心配してくれて注意喚起してくれたのにも拘わらず、目の前の謎の魔獣のあまりの臭さに動きが停まってしまった。
 全長5m、幅4mほどだろうか、体はほぼ黒一色だがところどころ体の黒い液体で光が反射しいるからなのか白く見える。様々な部分に脈があるのが確認でき、それは今も元気そうにドクドクと音をたてて動いている。見れば見るほど生々しくて気持ちが悪くなってくるな―――。
 ふらつきながらもそこから逃げようと動いた次の瞬間、謎の魔獣の右手は俺の胴体めがけて体重を乗せたパンチを繰り出した。
おい!ちょまっ―――
 しかしその時だった、俺は避けるためにいつも通りの力を足にかけて左に少しだけ跳びはねようとしたはずなのになぜか勢いよく10mほど自分から吹っ飛んだ。
えぇ!?
 そのまま頭から地面に突っ込んでいきまた地面に頭がめり込んだ。自分の体がどうなっているのか理解できないまま地面から頭を引っこ抜く。
どうなってんだよ!!重力が地球の10分の1になったのか!?体の感覚がいつもと違うぞ・・・!?
お、おい青年!また来たぞ!!
 謎の魔獣は起き上がった俺にすぐさまぱパンチを当てようと近くに走って寄ってくる。
 だけど何故だろうか?俺はそいつのスピードが落ちたような気がしてならないのだ。そう考えていた次の瞬間、5mの巨体の右腕から繰り出されたパンチがまた俺の胴体めがけて飛んできた。
・・・あれ?
 そのパンチはとても遅かった。やはり間違いない、謎の魔獣の動きが全体的に鈍ってる。
 さっきと比べて滅茶苦茶スローなパンチを左に歩いて避ける。
・・・これ蹴り入れられるな
 俺はまるでわざわざ目の前に蹴ってくださいと言わんばかりに差し出された黒くて太い右腕めがけて右足で蹴る。するとその直後、謎の魔獣の右腕は突然目の前で破裂しその半分が空中に吹っ飛んでいき、腕の断面から黒い液体が撒き散らされる。
なッ!あの青年に魔獣が殴りかかったら魔獣の腕が吹っ飛んだぞ!!
おいみんな、黒い液体にかかるなよ!!
―――えぇ
 ただの蹴りをいれたら一瞬で腕が吹っ飛んだというチートのような力に自分で驚いている俺、その様子を崖の上から見ていたデトラは突然笑い出す。
ニヒヒヒヒ!!おいおい見たかドロガラス!?ドロヘイに送る魔力を少し増やしただけでこの力だ!!
なるほどな、あれが泥人形―――いや、泥兵の力ってわけか
やはりあんなものも作れてしまうワタシは魔女の中で最強だ!!
いやでもあれ姉ちゃんの母さんの―――
行けドロヘイ!そのワケのわからん魔獣を完膚なきまでに叩き潰してやれ!!
聞いてねえな
 謎の魔獣も自身の手から腕が吹っ飛んだことに危険を感じたのか強く地面を蹴り、大きく後ろに下がる。しかしその時腕を振った際に出てきてしまった黒い液体がわけがわからずぼんやりしていた俺の全身に降りかかった。
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登場人物紹介

主人公 ”俺(泥兵)” 

異世界に来てしまった際に自分自身の名前を忘れてしまい、体まで兜をかぶった泥人形というものに変わってしまっていた。

元いた世界でやりのこした事が沢山あるため戻ろうとするが、そのためには”元のセカイでの名前”が必要らしく、それを調べるには"全知の書"が必要らしいのでその本を探し始めた。

得意料理はオムライス、デトラに毎日三食食べさせている。


使える魔法?は”自己再生”

体が欠損したり吹き飛ばされたりしてもデトラの魔力があれば何度でもよみがえることが可能。ただし逆にデトラの魔力が尽きると体も再生しなくなりそのままただの泥に戻ってしまうらしい。

世界最強の 泥の魔女デトラ

俺を異世界に来させて泥人形にした挙句、俺に勝手に”泥兵(ドロヘイ)”と名前をつけた張本人だ。

身長は140cm、基本マイペースで面白いか面白くないかで全てを判断する無茶苦茶な思考の持ち主。何を考えているのかよくわからない。

母親から貰った目玉が着いた魔女帽子を大切にしている。

全身褐色肌なのに何故か右手だけ白い。

毎日三食オムライスなほどオムライス好きである。

デトラは自分の母さんの場所を知るために”全知の書”を探し始める。


使える魔法は”泥を自由に操る”

周囲にある泥を瞬時に固めて棒状に変形させて投げたり身を守るために壁を作ったり手のようにして物を掴むことも可能である。

泥鴉(ドロガラス)

基本マイペースで色々な場所を自由に飛び回っている泥の妖精。

体を筋肉ムキムキにしたり身体の4~5倍の大きさの物を運べたりと科学では説明できないこともできる。

俺はどこかで会ったことがあるような気がしたが本人は否定していた。

デトラがここに来る前からいたらしいが・・・一体何歳なんだ?

ベルティーナ

種族は半獣人らしく頭からは動物の角のようなものが生えている。

”謎の魔獣”を倒そうと仲間達を集めて戦ったらしいがベルティーナを残して全滅、辛うじて生きていた本人はそのまま川から流れてきた所を俺(泥兵)に発見させられる。話し方はデトラと違って丁寧だし露出度高めのボーイッシュなので良いと思う。


使える魔法は”千里眼”

”外道魔男” ”外道魔女”

魔法を使えるようになってしまい、奴隷や道具として扱われて世界に反発的な思考を持つようになってしまった魔法使いの総称。

様々な場所で虐殺行為や破壊活動をしているらしく、極めて危険らしい。


”魔法使い(魔男、魔女)”

 この異世界では魔法が使える人と使えない人が分かれており、俺のセカイでいう異能超能力系に近い。

 魔法が使えるようになることを”目覚め”というらしい。

 ”目覚め”た魔法はその人にしか使えない魔法であり能力が同じ人はその世界には存在しない。その能力が覚醒した女を魔女、男を魔男という。

 

 いつ”目覚め”てその印として右手にの甲にマークが浮かび上がるするかは人それぞれである。

 

 魔法には属性が7つ存在する。”烈火”水流”自然”闇”光”祝福”雷”虚空”―――それがこのセカイに存在していた魔法だが何故かそこには泥の魔女デトラが使う”泥”や”土”がない。


 デトラ本人はそれが何故か知らなかった。

 デトラとベルティーナは自分以外の魔女は初めて見るというほど魔女自体とてもレアなものだろう。


 魔法使いは場所によっては神と言われてあがめられるという、だが別の場所に行けば悪魔と言われて蔑まれたり、国同士の魔法使いの奪い合いで散々周囲の人間に引きずりまわされて一生を終える人も少くない。

 ”目覚め”を人工的に起こそうとするために残虐非道な実験を奴隷を使って行っていた国もあった。

 

 だから人によってはは魔法使いに”目覚め”てしまったことを”呪い”と言う人もいるそうだ。

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