俺は地面に近づいていく恐怖から開放された嬉しさで地面から頭を抜き出してそのまま右手を揚げてガッツポーズをした。
それを見ていた周囲の半獣人達は勿論、ベルティーナも何が起きたのか理解できずにそのまま棒立ちになった、ただ謎の魔獣だけを除いて。
半獣人の男性が俺のことを心配してくれて注意喚起してくれたのにも拘わらず、目の前の謎の魔獣のあまりの臭さに動きが停まってしまった。
全長5m、幅4mほどだろうか、体はほぼ黒一色だがところどころ体の黒い液体で光が反射しいるからなのか白く見える。様々な部分に脈があるのが確認でき、それは今も元気そうにドクドクと音をたてて動いている。見れば見るほど生々しくて気持ちが悪くなってくるな―――。
ふらつきながらもそこから逃げようと動いた次の瞬間、謎の魔獣の右手は俺の胴体めがけて体重を乗せたパンチを繰り出した。
しかしその時だった、俺は避けるためにいつも通りの力を足にかけて左に少しだけ跳びはねようとしたはずなのになぜか勢いよく10mほど自分から吹っ飛んだ。
そのまま頭から地面に突っ込んでいきまた地面に頭がめり込んだ。自分の体がどうなっているのか理解できないまま地面から頭を引っこ抜く。
どうなってんだよ!!重力が地球の10分の1になったのか!?体の感覚がいつもと違うぞ・・・!?
謎の魔獣は起き上がった俺にすぐさまぱパンチを当てようと近くに走って寄ってくる。
だけど何故だろうか?俺はそいつのスピードが落ちたような気がしてならないのだ。そう考えていた次の瞬間、5mの巨体の右腕から繰り出されたパンチがまた俺の胴体めがけて飛んできた。
そのパンチはとても遅かった。やはり間違いない、謎の魔獣の動きが全体的に鈍ってる。
さっきと比べて滅茶苦茶スローなパンチを左に歩いて避ける。
俺はまるでわざわざ目の前に蹴ってくださいと言わんばかりに差し出された黒くて太い右腕めがけて右足で蹴る。するとその直後、謎の魔獣の右腕は突然目の前で破裂しその半分が空中に吹っ飛んでいき、腕の断面から黒い液体が撒き散らされる。
なッ!あの青年に魔獣が殴りかかったら魔獣の腕が吹っ飛んだぞ!!
ただの蹴りをいれたら一瞬で腕が吹っ飛んだというチートのような力に自分で驚いている俺、その様子を崖の上から見ていたデトラは突然笑い出す。
ニヒヒヒヒ!!おいおい見たかドロガラス!?ドロヘイに送る魔力を少し増やしただけでこの力だ!!
なるほどな、あれが泥人形―――いや、泥兵の力ってわけか
やはりあんなものも作れてしまうワタシは魔女の中で最強だ!!
行けドロヘイ!そのワケのわからん魔獣を完膚なきまでに叩き潰してやれ!!
謎の魔獣も自身の手から腕が吹っ飛んだことに危険を感じたのか強く地面を蹴り、大きく後ろに下がる。しかしその時腕を振った際に出てきてしまった黒い液体がわけがわからずぼんやりしていた俺の全身に降りかかった。