第4話 Dr.ハルセの病状は?

文字数 1,311文字

◯×病院心理相談室
「それでハルセさん、不調に気づき始めたのはいつ頃ですか?」
「そうですね、患者が転院して1ヵ月ほどたったあたりでしょうか?」
「すごく優秀だった看護師が退職すると言い出したんですよ」
「その看護師はとても優秀なスタッフで周りからの信頼も厚い人でした。今回の患者の担当看護師でもあってそれこそ頼りにしていました」
「はい」
「これまでも時々え?なんでこの人が?というような人が退職することがありましたが、彼女に関しては驚いたというか、まぁ・・・なんだかショックでしたね」
「あんなに喜びを分かち合ったのに まぁ感情論ですがね。なんででしょうか、あぁいなくなるのか・・・って、なんだか同志を失ったような感覚がありました。まぁでもそんな悠長なことを言っていられないですし、スタッフが退職することはよくあることなのでそんな大ごとにはとらえていませんでした」
「ふむふむ」
「しかし、それからなんだか身体がだるいような、なんだかやる気が出ないような感覚が続いてという
この倦怠感は経験したことがないような感覚でした」
「なるほど、ハルセさん、主治医からは診察で今の状況はどのように言われていますか?」
「診断名は、適応障害ですね。まぁそのものですが・・・。それからバーンアウト、燃え尽き症候群・・・とバーンアウトがICDに正式に記載されることになっているとは驚きでした」

ICD 国際疾病分類

■ICDは世界で統一的な診断基準を提示するために編纂された手引書で、病院や保険会社の病気判断基準として広く使用されている。


「そうですね。やっと認知されてきて問題視されていますね。特に医療系はまだまだですね」
「そうですね。自分がそんなことになるなんて驚いています。なんだか恥じる気持ちと信じられない気持ちが同居していますね」


「バーンアウトの診断基準に関してはどうでした?ご自分では思い当たるなということはありましたか?」

バーンアウトの症状

仕事を通じて情緒的に力を出し尽くしてしまった状態・・・人のために自分のエネルギーを消費し尽くしたような感覚

思いやりのない対応・・・以前の人格とは全く違うきつい口調、態度

職務における達成感が低下した状態・・・目標を達成しても喜びやうれしさなどポジティブな感情が感じられないような症状が起こると考えられている。

「そうですね。エネルギーを出し尽くしてしまった状態、そして職務における達成感が低下した状態というのは今の状態が、そうですね。同僚にも部下に対してきつすぎると言われていたので思いやりのない対応というのも自分では気づきませんでしたが当たっていますね」
「周りからは休め、休めと言われるし、患者にもこれまでしっかり休んで治しましょうとか言ってきましたが、難しいですね」
「そうですね。焦りも感じられるでしょう」
「はい、かなり焦っていますね」
「ハルセさん、いま一番やりたいことは何ですか?」
「えっ?」
「・・・。」

「何か、ふっと思い浮かびました?」


「自分はバーンアウトしたということを受け入れたDr.ハルヒ、ターナーの質問に何か思い浮かんだようだな!」
「面白い!続きが気になると思ったらいいね!で応援してくれよな!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ハルセ(50代)

△△病院医師

情熱にあふれ、患者、治療、医療に真っ向から向き合う。

ある重症患者の治療に関わった後に心身ともに疲労感を抱え、ターナーのカウンセリングを受けることになった。

ターナー(年齢不詳)

〇×病院カウンセラー

サバサバした長身の美人。患者思いの優しい面もあるが、カウンセリングはスパルタ

ターナーの元に来る患者が少しでも心安らぐことを目指してカウンセリングに奮闘する!

今回は人と関わる仕事に潜む問題「共感疲労」の問題がテーマ。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色