第1話 初回カウンセリング
文字数 2,042文字
不機嫌そうに男は言い放つ。
医療関係者だからこそ、カウンセリングをうけることなど受け入れがたい現状はいまだにある。
50代の男性、ハルセ、職業は医師。業務中の様子が以前と違いミスが増えたことやちょっとしたことでカッとなり同僚とのトラブルが増えたこと、健康診断でのメンタルチェックで休養の必要性とカウンセリングの受診を勧められターナーの勤務する○×病院心理相談室に来所した。
「ハルセさん、想像するに大変ご苦労の末の治療だったと思います。最重度の熱傷治療、何度も危ない場面があったそうですね。さらには真摯に患者さんに向き合ったと伺っています。かなりの時間を使って患者さんを理解しようとされたのではないですか?」
「そうですね、チームが一丸となってという言葉が本当に当てはまります。チーム医療とは言うもののなかなか難しいんですよ、本当は。しかし、今回は他科の医師、看護師、コメディカルまでもが本当に一丸となって戦いました」
ハルセは急に饒舌になり生き生きと話し出す。
今起こっているかの如く興奮冷めやらない様子だ。
ハルセがむっとした様子で答える。
ハルセはターナーの言葉を受け入れないようにとは思いつつも気になってしまう。ハルセ自身も今の状態には一抹の不安があったからだ。これまでと同じようにやったつもりなのに、
なぜこんなに気力が戻らないのだろうか?
しかも、ターナーの言うように成功を収めたはずなのに・・・だ。うまくいったと思っても気を抜けないのは常々だが、今回の患者はある程度回復したのちに転院した。
もう自分の仕事は終わったはずなのに。
ターナーは自信ありげに言った。きっとハルセはまた来ることになるだろう。
使命感、責任感が強いから、熱心だから、真摯に他人に向き合うからこそ起きる。
そう、それがバーンアウトだ。
初回面接終了。次回の予約はなし。
ハルセはそそくさと自分の勤務する病院に戻っていった。