第3話 Dr.ハルセの限界

文字数 1,501文字

△△病院カンファレンス
「せっ先生❗️」
ハッ!

「なんだ?」

「この◯●さんですが、このまま経過観察でよろしいでしょうか?」
「あっあぁ、いいよ。そのまま様子を見よう」
「いや、一度見直した方がよくないか?」
「なんだか私にはこのままでいいとは思えない」
「先生はどう思う?」
「実は僕ももう一度検査したいと思ってました」
「◯●さんが昨日胸部痛がすると言っていて」
「そうか、先生がそう思うなら◯●さんに提案してみたらいい、なっハルセ」
「あっ、あぁ」
**
「さっきハルセ先生寝てたよな」
「あぁ、本当に大丈夫かよ⁉️なんか最近やる気ねぇよな」
「きっと引き抜きとかあってもうここには興味ないんだろ」
「羨ましいよな」
ハルセの不調には皆気づき始めている。ハルセがカンファレンスで居眠りするなどこれまででは考えられなかったことだ。
そして一番ショックを受けているのはハルセ自身だった。
「大丈夫か?」
「あぁ、すまん」
「お前本当に休んだ方がいいぞ、もう見てられん。お前にはもう限界が来てる。これ以上このままでいたら大きいミスをしでかして本当にここにいられなくなる」
「・・・。そうかな?」
「そうだよ。医者としても友人としても言う。お前には休養が必要だ」
さすがのハルセもイノウにここまで言われては無視するわけには行かない。
ハルセは頭ではわかっているのに体も気力もついてこないことが悔しかった。
悔しい・・・。
イノウに休業しろとまで言わせたんだ。自分で思っている以上にここで働ける状態じゃないんだ。
「少し休むか・・・」
「あぁ、それがいい」
「でもまだやりたいことがたくさんあるんだ」
「あぁ!だからだよ!休養をとってまた元のハルセとして戻ってくるんだ!」
「あぁ、そうだな」
その一週間後、ハルセは必要な手続きや引き継ぎ業務を終え、3ヶ月間の病休を取った。
ハルセにとっては病休を取ることは不本意ではあったが、医師として患者の前に立てる状態でないならばここにいるべきではないという医師としての責任感がハルセを休職に踏み切らせた。
◯×病院心理相談室
一週間後、ハルセはターナーの元に来ていた。
「こんにちは、ハルセさん」
「お久しぶりですね」
「はい、やはり病休を取ることにしました。3ヶ月間の休職です」
「そうですか、よく踏み切られましたね」
「はい、同僚にも勧められて。自分でも今は患者の前に立てる状態じゃないと判断した結果です」
「そうだったんですね。誰しもできる決断ではありません。勇気が必要だったことでしょう」
「いえ、医師として当然です。むしろ遅すぎたかもしれません」
「そうですか。しかし、ハルセさんも医師の前に人間ですから、その決断で悩み迷うのは当然です。患者様のためにもハルセさんご自身にも素晴らしい決断だったと思いますよ」
「ありがとうございます」
「しかし、3か月後どうなっているのか・・・」
「どうなっているか・・・不安ですよね」
「そうですね。正直こんなことははじめてでどうしたらよいものか・・・」
「そうですよね」
「ここで一番大事なのがハルセさんがどうしたいか、です」
「はぁ、確かに」
「それはもちろんいまの状態から脱却して職場復帰です」
「そうですよね!頑張りましょう!」
「 はい、それでどうすれば?」
「まずは、しっかり休むことです」
「そんなことはわかっています。しかし、私には時間がないんですよ!」
「ハルセさん、心配しないでください」
「私、結構スパルタですよ」
こうしてハルセとターナーの物語が始まった。
「やっと休むことになったハルセ。でもな、こーゆータイプって休み下手なんだよ!」
「面白い!続きが気になるって思った人はいいね!読者登録して応援してくれよな!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ハルセ(50代)

△△病院医師

情熱にあふれ、患者、治療、医療に真っ向から向き合う。

ある重症患者の治療に関わった後に心身ともに疲労感を抱え、ターナーのカウンセリングを受けることになった。

ターナー(年齢不詳)

〇×病院カウンセラー

サバサバした長身の美人。患者思いの優しい面もあるが、カウンセリングはスパルタ

ターナーの元に来る患者が少しでも心安らぐことを目指してカウンセリングに奮闘する!

今回は人と関わる仕事に潜む問題「共感疲労」の問題がテーマ。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色