第11話  男同士の話 6

文字数 1,177文字

切っ掛けは何だったのだろうか。
「c」の方が地下資源が豊富だったから?
食料の自給率が高かったから?
豊かな自然に恵まれていたから?
それとも「d」の方が科学技術が進んでいたからだろうか?

多分、「d」で核融合に成功したから。
その辺りから関係に陰りが差して来た。
「d」は小さな太陽を手に入れたと。

「d」は「c」を属国にしようとしている。奴隷として使役させようと。
そんな噂が流れた。

豊かな気候と自然を利用した農産物。
恵まれた地下資源。
彼らはそれを自分達の利を増やすために狙っている。そして益々自分達の立場を有利にしようとしている。彼らは自分達を彼らの「乳牛」にしようとしている。
科学技術を向上させ、優位に立とうと。

「c」も負けてはいなかった。
教育と技術開発に力を注いだ。
がむしゃらに頑張った。
寝る間を惜しんで頑張った。
誰も彼もが「キリギリス」から「働きアリ」に変身していた。
呑気に花見なんかしている場合じゃない。
ようやくやる気スイッチが入ったのだ。

互いに開発競争で凌ぎを削る様になった。
ワープ技術が開発された。
これも「d」が早かった。
ほんの少しのワープから始まった。「5光秒」とか「8光秒」とか。
徐々に記録を伸ばした。

そして「c」が「核融合」に成功した。
次いで「1光分」のワープに成功した。


「c」は「d」が勤勉に築き上げた科学を卑怯にも「スパイ」という手段で盗もうとしている。
そんな噂が流れた。
それは大きな問題となり、両国のモニター議会でお互いが罵詈雑言を飛ばし、それは大荒れのライブ放映となって両国に流れた。

その最後はどうなったのか誰も知らない。
何故なら「c」の議員の一人が怒り心頭に達し、自制心を失い、その結果、椅子を振り回してカメラを壊したから。続いて数人が会場内のカメラを壊しまくった。「d」の議員もそれに煽られ、カメラを破壊した。
「d」の議員が中指を立てた所でライブは終わってしまった。

諜報活動が活発になる。お互いがお互いを監視する。疑心暗鬼に陥る。そしてお互いが相手を憎んだ。

兄弟同士のトラブルは良くある話だ。
旧約聖書の「カインとアベル」
古事記の「海彦と山彦」
エジプト神話の「オシリスとセト」
ギリシャ神話では「ゼウスとポセイドンとハデス」
映画マイティ・ソーでは「ソーとロキ」
(北欧神話ではオーディンとロキは義兄弟である)
探してはいないが、クトゥルフ神話にもあるかも知れない。

どちらかが何かを仕掛ける。
それは「テロ」と呼ばれた。
自分達で演出して置いて、相手がやったのだと言い張る輩も現れた。

「d」も「c」も軍事に力を入れる様になった。
それでも人々は交流を続けていた。シャトルの便数は減ったが、途絶える事は無かった。何故なら経済で深く結び付いていたから。
表面上はお互いの顔に唾を吐きつつ、くそみそに罵倒して置きながら水面下では手を握っている。
よくある事だが。

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