第5話 彼女の父親は性格俳優

文字数 989文字

○都内某TV局AD室

AD恵美が、若手芸人のクニオと話している。


恵美ちゃーん、今度「サバさんの夜の空騒ぎ」に雛壇のレギュラーとして、抜擢されたよ。
AD室に駆け込むクニオ。
あっ、おめでとう。

でも、売れたんなら、もうワタシの役目は終わりね。

さようなら、何か悲しいけど。

何を言ってるんだい。

やっとギャラがとれる芸人になったんだ。

これも苦しい時期にキミが励ましてくれたからじゃないか。

励ましたって、ただウドンをご馳走しただけじゃない?
あの時、ボクはドン底でね。どんなに助かったことか。

ボクはキミのお父さんに会って、結婚を前提にお付き合いしたいのさ。

ワタシはいいけど...お父さんは何て言うかしら。

ウチのお父さん、変わってるから。

変わってても構うもんか。 

そういえば、お父さんの職業を伺って無かったね。

ウチのお父さん、性格俳優のブルーザー内藤なのよ。
ええっ?

あの、生傷が絶えないっていう悪役専門の?

そうっ、

それでもいいんなら、一度自宅に来て。

○それから、数日後....

ブルーザー内藤宅。

はっ、はじめまして...

若手芸人のクニオです。

.......(何か、パッとしねえや)
何か、腑に落ちないブルーザー内藤。
クニオさんはね、最近サバさんの番組にレギュラーとして抜擢されたのよ。
涙目で、助け舟を出す恵美。
俺はな、もう五十近いが、毎日ベンチプレス100kgは、挙げるんだ。これは、悪役としての鍛錬よ。

おまえも、芸人なら鍛錬をしているはずだな、だったらオレを笑わせてみろや。

ど迫力のブルーザー内藤。
はいっ、ではやってみます。
頑張って!
この前、横断歩道をお婆さんからヨタヨタ歩いていたんだ。

そしたら、信号が赤になった。

ボクは、車の前に立ち塞がり、お婆さんを無事向こう側に渡してやった。

ハードボイルドだろ?

つまらんな。
イエス、スプリングインラブ!
却下!
まだ呑めます?吐いてませんよ。
却下!
レッスルゴーリラ!レッスルゴーリラ!
却下!
.........
はあはあはあ
おまえの負けだ、クニオ。

さっさと帰んな。

それでは、最後の芸。

クニオ1000%!

はーっ!

腹を括り、逸物を露出するクニオ。
はーっはっは!

まいったね、この皮かむり野郎が!

宜しい、恵美のことは認めてやろう。

クニオ、よかったね。
あっ、ありがとうございます。
その代わり、ベンチプレスで100kg挙げねえと、結婚の承諾はしねえからな。
クニオ、頑張って!
えっ?
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