第12話 目覚めない朝

文字数 4,380文字

~これまでのあらすじ~

うっかり妖精郷に迷い込んだヴィレームとバナ。

ケットシーのグラタンが管理する<七色猫のおもてなし亭>を拠点に、二人は元の世界に戻る手段を探るため、また妖精郷の謎を探るため、ケットシー探しと並行して探索を行う。

薬草園を管理するペンネにパシられ、ケーキを買ったり届け物をしたり……あっという間に時間は過ぎていった。

夜もくれたこともあり二人は一先ず、一度休むために眠りにつくのでした。

※うっかり時間経過確認するのを忘れていたので、ここで調整しています。

 二日目の朝の時間帯でヴィレームさんは全回復。

 二日目の昼の時間帯でバナさんのMPも全回復になるような形です。

では、バナさんはMP回復の為、てこでもお昼まで起きませんー!

ちゃっかり鍵も掛けて万全の対策です。

夜這いはしちゃダメですよー( ´艸`)ナンチャッテ

では、朝の時間帯はヴィレームさんの単独行動となります。

柔らかな朝日差し込む<七色猫のおもてなし亭>。朝の時間帯。

早いと言うわけではなく、きっと少し遅めの朝の時間帯でしょう。

ぼんやりと意識が覚醒したヴィレームさんは、体力と魔力が回復しているのを実感しています。

……ナ・バナに挨拶する為に身支度を整えるか。
(律儀……!?)

では、ヴィレームさんは着替えを済ませ、身支度を整えるために各個室に備え付けてある洗面台の前まで移動します。

きゅ、と蛇口をひねると冷たい水が勢いよく出てきます。

そこできっと、顔を洗うでしょうね。

バンダナも眼帯も外した自分の素顔が鏡に映し出されます。

ナイトメア特有の角に、今までの生活で負った傷跡か。

……とても醜い自分の顔に小さく舌打ちを打つ。

(だから鏡は嫌いなんだ……自分の顔を見ると、嫌なこと全部思い出しちまう)

ヴィレームさんの脳裏に、過去の情景が思い浮かばれます。

苦々しくも忘れられない、故郷での出来事。裏切りの記憶。

(皆、そうだ)
(今まで親しくしていた奴等も、俺がナイトメアだって知ったら、掌を返して冷たくあしらう)

「お前が穢れ持ちとして生まれてなんか来なければ……!」

「お前のせいで、私たちの人生は台無しだ! お前なんか、産まなければよかった……!」


両親からの罵倒の言葉。


「今まで俺たちをだましていたのか!」

「この、穢れ持ちがっ! 出てけ!」

「いいや、穢れ持ちは、殺せ!!」


角があることが分かるや否や、目の色が変わって追い立てられる悪夢。

そのどれもこれもは、未だヴィレームさんの心を蝕んでいる。

あの瞳が、顔が、変貌する瞬間は今でも鮮明に思い出せてしまう。

(ただナイトメアってだけなのに…俺だって…皆と同じ人族なのに……!)
強く握った手で、洗面台の縁を握る。
(あいつも…きっとそうだ……)

思い浮かぶのは、ひょんなことから同行することとなった、つかみどころのない学者を名乗る彼女。

(なりゆきで一緒に行動しているけど……やっぱり、しばらくは距離を取ろう……)
バシャバシャと流れ出ている水の音を聴きながら、ぐっと息を飲み込んで、自分に言い聞かせる。
(………もう…裏切られるのは………嫌だ………)

ずれないようにバンダナをキツくしめて、顔をパシッと叩く。

それから顔を上げて、洗面台に背を向ける。

(感傷に浸るな……いつも通りやれば大丈夫…!)

なりゆきで一緒に行動して、まだまだ付き合いも浅い相手ではあるナ・バナ。

いつも通り、距離を置こうとしても失敗してしまうのもあるせいか、嫌われるのが恐ろしいと心のどこかで感じているのでしょう。

ナ・バナの存在が少なからず大きくなってきていることに、ヴィレームさんはまだ気付いていないのか、それとも気付かないふりをしているのか。


と、言ったところでしょうかね。

いやー、わたしここぞとばかりにちょいちょい小出しにしているからアレですけど、なんだかヴィレさんの方も複雑ですなー
あとなんだか無性に照れ臭いですね!!!
そんなナ・バナをこれから起こしに行くわけだが。
おっとぉ?
では、ヴィレームさんはバナさんの部屋の前に移動します。

わたしはぐっすり寝てますよー?

すやすやー

ドアを少々乱暴にノックして
「おーい、ナ・バナー、起きろー」
とドア越しに言う。
「んー…次は……クリームたっぷり、パンケーキ……むにゃむにゃ…」
「起きなかったら、お前の分の朝食のデザートは勝手に貰う」
ぐっ
お、おき……

デザート と MP全回復

(で、ぐらぐら揺れている……)

朝の時間帯で目覚めるのなら、バナさんのMPは半分の回復になりますね。
お、起きないぞう!
「あー、ナ・バナ起きないのかー。
 冒険しないなら魔香草もいらないな」

(それは欲しいですけども!!)

でもMPないと何もできないお荷物なので、とりあえず全回復まで寝かせてくださいー!

では、一応。

強くドアを叩いても、ひいても押しても、バナさんが起きてくる気配はありません。

廊下には沈黙が再びおります。

「……あいつさては夜更かししたな」
(ぎくぅ)
「……ったく、少し待っていろよ」

部屋の前を去って、魔香草を売っている店? とかに行きたいんだが。

魔香草は、<施療院>にて交換ができます。
なら、施療院に向けて一人で出かけるか。

あ、グラタンも作成できますね(うっかり)

時間的にはどちらが掛からないか……?

移動処理がないので、グラタンに頼んだ方が掛からないですね。

尚、グラタンが作成できるのは一般装備品、救命草、魔香草、武器装具のBランク辺りです。

なら、予定を変更して、グラタンに話しかけるか。
「グラターン! いるかー! おーい!」

はい、では。宿の中をウロウロしているグラタンの姿をヴィレームさんは見かけます。


しっぽをふりふり、ひげをぴんとしたグラタンは、機嫌がよさそうに鼻歌交じりに一階の画像のような部屋を歩いていますね。

「おや、お客さん。なんだかドンドン騒がしかったようだけれど、何かあったかい?」
「あっ、いた。魔香草が欲しいんだ。頼めるか?」
「うん? 魔香草だね。大丈夫。10分くらいでできるよ」
「一つに付き100マナマテリアルで作成できるけれど、いくつ御入用だい?」
持っているマナマテリアル全部取り出して、
「これで買える分、全部」
「えぇと……165マナマテリアルだから、うん。一つかな」
「……一個だけか。
 分かった、じゃあ一つ買おう」

「まいどありー。余分の65マナマテリアルは返すね。

 それじゃあ、今から作るからちょっと待っててね」

そう言って、

グラタンはふんふん言いつつ、マナマテリアルをこねこねぐにぐにしながら歩き出しました。


10分後。

「お客さん、お待たせ」
喉をぐるぐるしながら魔香草を一つ、グラタンはヴィレームさんに渡しました。
「あぁ、ありがとう」
魔香草を受け取りながらお礼を言い、ぶつくさ文句を言いつつナ・バナの部屋に行きます。
「全く…デザートでも起きないなんて……」

待って、わたしヴィレさんの中で食い意地はっていると思われてます!?

ちょっと上がった好感度返して!?

では、再びバナさんが寝ているだろう部屋の前へ移動します。
ドアの前に立ち、乱暴にノックして、「開けるぞ」の一言の後、
サッとドアを開けて、ベッドの上に魔香草を投げつけ、サッとドアを閉める。

いやいやいや、鍵ー!

鍵掛かっているのでー!

えっとー、じゃあ、ヴィレームさんはドアを破壊したと言う事で……?
そだった! じゃあえっと
「開けるぞ」の一言の後に、ひたすらドアノブガチャガチャします。
(ドア開けると弁償しないとだな……うん…!)
ものすごくドアガチャガチャする音が聞こえます。
それでも、バナさんは起きませんでした(笑
時折、グラタンが壊さないでね、って目で見てきます。
そりゃそうなりますよねー( ´艸`)

それじゃあ、昼頃になってやっと、

「ふあああああああ…!」と大きく伸びをして、

ガチャガチャ煩い音に気付きます

▼その頃には既に激おこなヴィレ氏であった!
「ふああ……? ポルタ―ガイスト? ルークの発生…? 天変地異?(寝ぼけ頭)」
「違う。俺だ、起きろ」
ドア越しからドスのきいた声が……!
「……だぁれ? うん…? うんん??」

「はっ!?」

何かに気付いた顔。

一拍後、バタバタと扉まで駆け寄って、鍵はそのままで

「相手は一人。グループ犯行では、ない? ハイマン研究対象としての捕縛人? それかもしや、わたしの研究成果を狙って……?」

「こうしちゃいられません!」

(ぼさぼさの頭のまま)窓辺に駆け寄って、

「そぉい!!」

※飛び降りません

「え??えっ、何事!? 何事だい!?」
青筋立てた恐ろしい表情で、グラタンに合鍵を要求する。
「グラタン、この部屋の鍵を寄越せ」
(1トーンぐらい声が低い)

「ええと、ええと、鍵、鍵は何処だったっけか……」

魔法文明語で

『もう二度と奪われてたまるものですか!!!』

と叫んだ後に、

窓の外に手記のとあるページを、ちぎっては投げちぎっては投げしてます

※紛らわしい

「ああ、ええと、これだったっけ?」

と、目をまん丸くしながら鍵を渡します。

鍵を受け取り急いでドアを開ける。
「……ナーバーナー!!!!!」

で、ヴィレさんがカギを開けると同時に、あれ? って顔して、

「おはよーございますー…?」

「あ、おはよーございますヴィレさん! いい朝……あれ? おっかしーですね、もうお昼でした笑」
「お前はこんな時間まで寝て!
 俺が起こしにきても起きないし!
 MPキレてバテてんのかと思って、魔香草買いに行っても寝ぼけたままだし!」
ヴィレさんの言葉に目をぱちくりしてます。
「お前がいないと冒険が進まないんだから、
 さっさとこれ飲んで準備してして行くぞ!」
魔香草を無理矢理押し付けます。

きょとーんとしながら魔香草を見て、

それから困ったように笑って、

小さくごめんなさいとありがとうを呟きます。

「言っておくけど、お前がいないと元の世界に帰れなくて俺が困るからだからな!
 決して!お前の!為じゃ!ねーからな!!!」

「わたしのためでは、ないと? 魔香草を、渡して。起きるのを待っててくれて?」

にやにや

「いいから! さっさと準備しろ!!!」

「はーい! んふふー! 素直じゃないですねー、ヴィレさんはー!」

ってニヤニヤして、ヴィレさんの腕をうりうりーってしますねー!

手早く身支度を整えたバナさんが

「朝食兼昼食にしながら作戦会議しましょー!」

とヴィレームさんの背中を押しながら一階の食事スぺースへと向かいます。

その窓の外には、ひらりひらりと破れた紙片が舞っていました。

それはやがてどこからか吹いた一陣の風に乗り浮かび上がり、地面へと触れることはありませんでした。

二人の心の傷跡は深く残ったまま。

癒えぬまま、それでも一歩ずつ歩み続ける二人の関係は、この先の冒険は、果たしてどのように変化していくのか。


なんて、こんな感じのモノローグを残した感じで、二日目を迎えるのでした。

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登場人物紹介

ヴィレーム・ペサディリャ

種族:ナイトメア 技能:拳闘士2斥候1

人間生まれのナイトメアの青年。
穢れ持ちの為に、生みの両親にも奴隷のように扱われる日々を送っていた。

ある日、村にナイトメアが紛れ込んでいると噂になり、住処を焼かれ命を狙われることに。
そのどさくさで両親も焼死してしまう。
その後、何とか貨物船の中に潜り込み、長い船旅を経て逃げ延びることに成功。
命からがら逃げ延びた先で行き倒れていたところを、リルドラケンに保護される。

以上の経緯から、人族に対し強い不信感を抱いている。
誰に対しても距離を置き、心を開こうとしない。

ナ・バナ

種族:ハイマン 技能:操霊2野伏1学者1

本の虫と言われる幼少期を過ごし、世界にはたくさんの知らないことに満ちている! と知識欲を満たすことを目的に、15歳の成人で旅に出た。
魔法文明期の頃、仲の良かった友人に裏切られ、とある施設に売られる。
その後なんらかの実験(人をハイマンへと変貌させるもの)を行われた際に長い眠りについた。
そして、現在。長い年月を得て意識を取り戻して目覚めた彼女は、ハイマンと変貌していた。
施設には他にも数名同志たるハイマンもいたが、持ち前の好奇心と知識欲が抑えられず、彼女は旅に出る。
新たな知識と知らぬ世界を求めて。

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