夕顔

文字数 340文字

 ある男から貰った夕顔の種を蒔いた。男にあったのは去年の夏それが最後だった、死んだのだ。病院のベットで横たわる男はなんでもない様な顔をして言った。「あと少しらしい。」薄く微笑んでいる様にも見えた。「そう。」特に言うことも思いつかなかった。そもそも男と会うのは何年振りだろうか、ほとんど話した記憶もない。突然、どうしても会いたいと言っていると男の親族に頼まれて来たのだ。「これをあげようと思って。」夕顔の種だった。「これがどうしたの。」「一緒にいたかったんだ。」どう言うことだか分からなかった。あいつは満足した様に眠ってしまった。その夏は不気味に思い蒔けなかった、一年たって供養と思い蒔いた。夕顔はしなやかに伸びた。ある晩、夕顔は寝こけた女の足に緩く巻きついた。男の名は常夏という。
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