イタくてサムくてヤバいやつら

作者 徳島太郎

[現代ドラマ・社会派]

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 過疎に悩む寒村が思いついたのは、怪しい新興宗教をでっち上げて事件を起こすことだった。
 そんな村長の思いつきを実現するために雇われた、三人の「いわくあるやつら」。
 村長たちの思惑通りに、怪しい新興宗教(実はでっち上げ)が巻き起こす『擬似イベント』は動き始め、連日マスコミが押し寄せて大変な騒ぎになる。
 しかし……とってつけたヤラセの新興宗教はどんどん巨大になり組織も複雑化し、事態は彼らのコントロールが効かなくなりつつあった……。
 
●主な登場人物
・村長
・助役
・若槻沙織……デート商法で失敗したセールス嬢(実は助役の娘)
・黒田八宝斎…信者獲得に失敗した、女癖最悪の新興宗教の教祖(村長の遠縁)
・貞末譲治……教祖に金を貸していたヤクザの借金取立人
・館山 満……黒田を出し抜いて教団を乗っ取ろうとする「ナンバーツー」
・西川雄大……「週刊粉飾」記者


●ストーリー概略

 過疎に悩む某県(長野・富山・福井・石川といったイメージ)にある寒村。このままでは町村合併の波にも乗り遅れ、どうしようもなくなる。
 窮地に陥った村長が起死回生の一大バクチを思いついた。
 それは、怪しい新興宗教をでっち上げて事件を起こすことだった。奇怪な教義と理屈を振り回して常識外れで派手な行動をさせればマスコミが飛びつく。すべてのテレビ局、すべての新聞・雑誌が取材に来れば、村は有名になってタダで宣伝が出来るし、マスコミの連中の滞在費で村は潤う。
 それは完璧な一石二鳥作戦だった。
 
 そんな村長の思いつきを実現するために雇われた、二人の「いわくあるやつら」。
 デート商法で失敗したセールス嬢の若槻沙織(実は助役の娘)は、手慣れた手練手管を駆使して都会で宗教メンバーの勧誘(*官能シーン)をし、信者獲得に失敗して借金の山の新興宗教の教祖・黒田(実は村長の遠縁)は、宗教ノウハウを買われ、本人も失地回復のために、その怪しいプロジェクトに乗る。
「マスコミの話題にならないと人が来ないから」と、都会でかき集めたメンバーに派手なパフォーマンス(*官能シーン)をさせたり、沙織と考えたセクシーな教義(*官能シーン)を付け加えて、そういう文書を配ってマスコミを震撼させ、「これは、猥褻だ! 宗教と良識への挑戦であると言えましょう!」とコメンテーターを激怒させたり、保守系週刊誌・週刊粉飾に、『いんちきエロ宗教の内部告発』記事を載せたりして、煽りに翻る。
 村長たちの思惑通りに、マスコミは連日取り上げるようになり、村には取材チームが怒濤のごとくやって来る。怪しい新興宗教が巻き起こす『擬似イベント』は動き始めたのだ。
 そこに乗り込んできたのは、教祖に金を貸していたヤクザの譲治。ただの取り立てではラチがあかないと、譲治も積極的にこのインチキ新興宗教に肩入れして、「武闘派の広報担当」としてマスコミを殴る蹴るというパフォーマンスを見せ、テレビの女性レポーターをカメラの前で裸にして晒し者にしたりして(「教団の儀式」に潜入させて全裸にさせるとか)マスコミを怒らせ、「あの教団は凶暴な用心棒を雇っている!」と書かせていっそうヒートアップさせることに成功する。
 急に来村する人間の数が増えて、村に一軒しかなかった民宿は突然ペンションを建て始め、村人も観光事業を始める。村長も妙な欲を出し始め、温泉を掘り始めたりする。

 村全体が珍宗教バブルに踊り始めた頃、そのデッチアゲ宗教は、本物の宗教に変貌しつつあった。教祖・黒田も一度は失敗した教祖が「持てる物すべてを注ぎ込んで」頑張った成果が現れてきたと安心し、地金が見えてきた。無類の女好きで、以前も信者に手を出しまくったのが失敗の理由だったのだが、今回も美人信者に「霊のパワーを注いでやろう」とか「教祖の『徳』を与えてあげよう」とか言って寝てしまうだけならまだしも、「徳を積め」と命じて変態プレイまでさせる始末(*官能シーン)。
 そんな無茶をしても、マスコミの『報道』を見て、自分も信者になりたいと言う『信者予備軍』が多数やってくる。彼らは、本気でデッチアゲのヤラセ宗教を信じ始めてしまったのだ。しかも、沙織が都会で集めてきた『エキストラ信者』は、何かを信じたい連中だった。だからデート商法に引っ掛かってニセの高級品をローンで買ったりするのだ。その中に、富豪である親に反発して家出していた若い女がいることが判明、テレビを見た親が駆けつけて騒ぎになる。(*このあたり、登場人物の色恋沙汰を折り込んで官能シーンを設定)
 しかし……とってつけたヤラセの新興宗教はどんどん巨大になり組織も複雑化し、事態は彼らのコントロールが効かなくなりつつあった。村長の意図とは関係なく動き出す「モンスターと化したインチキ教団」に変貌・成長してしまったのだ。
 組織が大きくなってきて、「創設メンバー」の黒田と沙織の二人だけでは切り回せず、マネージメントに長けた信者・館山が官僚的に取り仕切るようになってくる。館山はその合理性でそれなりに人望があるのだ。
 次第に「原始創設派」と「近代的改革派」に内部分裂し始める。
 譲治は、そういう薄汚い人間関係を眺めているのが大好きで、けしかけたりする。「人間なんて大体がインチキなんだから、化けの皮が剥げていくのを見てるのが最高に面白いんだ。金が絡むともっと面白くなるぜ」

 譲治の予言の通り、村に大資本がやってくる。テレビで映される村の自然に目をつけた開発資本(外資?)が村に一大リゾートを作ろうと進出してきたのだ。
 これぞ、村長の真の狙いだった。法人税ががっぽり取れるし村の雇用も確保される。バンバンザイだ。
 しかし……。
 教団のナンバーツーにのし上がった館山は、沙織を誘惑して、自分の地位を確固としたものにしようとする(*官能シーン)。媚薬や暗示、催眠術などすべてを動員された沙織は、激しい性的絶頂を得て、メロメロに。
 しかし、それを見ている譲治は面白くない。口では「お前のことなんかアウトオブガンチューだ」と言いながら、内心はそうでもない彼は、策を弄されて陥落させられた沙織が心配で堪らない。

 その頃、村には、カタストロフがおとずれようとしていた。
 村長のすべての仕掛けが週刊誌に暴露されそうになり、譲治がそれを阻止するために動いたが、載ってしまう。
「エロ教団はすべて『ヤラセ』」という記事に激高したのは、館山と、信じ切っていた信者。
 マスコミへの攻撃と村長への攻撃が始まり、村は大騒ぎに。
「もうヤバいぞ。逃げるに限る」
 自分を倒幕の獅子の生まれ代わりと称する譲治は、機を見て敏。教団を乗っ取られた黒田と館山への感情が残る沙織を引き連れて下山してしまう。
 大騒ぎは、村の里山に秘められていた「生霊」を刺激した。不思議な現象が頻発し始めるが、ついに、村にある「大池」が突然隆起して、山村だというのに村は大洪水に。多数の死者が出る。
 ワイドショー系のマスコミと交代して、報道系のマスコミが入って、一気に論調は災害報道に。
 教団は壊滅し、巨大資本も引き上げる。
「いやあ、大変だったなあ。ひと足早く逃げ出してよかったぜ」
 と喜ぶ三人に加えて、村長と助役も仲間入りした。
「我々は死んだということにしてきました。生まれ変わったつもりで、なんとかまた、一旗あげたいんですが」
 五人の珍商売はどうなるのか? 続篇があればまたのお目見え。

登場人物

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小説情報

イタくてサムくてヤバいやつら

徳島太郎  tokushimataro

執筆状況
完結
エピソード
10話
種類
一般小説
ジャンル
現代ドラマ・社会派
タグ
【リデビュー小説賞】
総文字数
182,221文字
公開日
2019年01月03日 14:00
最終更新日
2019年01月03日 14:10
ファンレター数
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