フィンランド クオピオ(3)

文字数 7,888文字

 オーブンから出してすぐの熱々のロールキャベツが皿に盛られる様子を、レミンは幼い子供のようにわくわくしながら眺めていた。食卓の真ん中に置かれたホーロー鍋にはたっぷりの野菜と鱈のスープ、山盛りのカボチャサラダにはナッツ類やレーズンが入っている。短い時間でオウガンがこれだけの料理を用意してくれたことに二人は驚いた。
「料理お上手なんですね!フィンランドに来て初めての食事がオウガンさんの手料理だなんてすごく贅沢な気分です!」
 レミンは褒め上手だが今のはお世辞でも何でもなく、目の前の料理はどれも本当においしそうだとライチョウも共感していた。
「口に合うといいが」
 オウガンは鱈のスープをそれぞれの皿に分けてから、「あれを持ってこなきゃな」と独り言を言ってキッチンに戻った。次にジャムの入った大きな瓶を持ってくるとテーブルの上にどんと置いた。
「自家製のアプリコットジャムだ。ロールキャベツにジャムをかけるのがフィンランド式なんだが、好きずきだから良かったら試してくれ」
 食事中、ライチョウはこれまでの旅の経緯をオウガンに話した。グリーンランドの環境管理局が村にやって来て、教科書作成のため北極圏集落の環境やエネルギーの取組を調査するよう依頼されたこと。地元グリーンランド、ノルウェー、スウェーデンの各村は独自の工夫をして厳しい環境と共存していること。ライチョウの話をオウガンは時折オーバーな反応をしながら聞いた。サイガにまつわる話はしなかった。オウガンも食事と旅の話を楽しみ、“本題” にはまだ触れてこなかった。
 食事の後、コーヒーとデザートのブルーベリーパイが振る舞われた。
「そろそろ本題に入った方がいいかね?」
 そう言ってオウガンはコーヒーをすすった。ライチョウはオウガンが切り替えるタイミングをくれたことをありがたく思った。
「“海氷荒らし” について、サイガは何と?」
 ライチョウがオウガンと話したかったことは大きく二つ。“海氷荒らし” とサイガの死について。これはオウガン自身が知りたいと、電話で話していたことだ。
「海面水温の上昇、これがヒントになっているみたいだが、詳しいことには触れておらんのだよ。“海氷荒らし” が起こった時のデータはもう手に入らんし」
「その時のデータはないんですか?」
「ああ。私のパソコンにはサイガ君からデータが送られてきた日以降のものしかないんだ。海水調査用の方のデータはすぐに途絶えたから、一日分もないということだ。君の軒先ラジオゾンデの方はずっと順調だよ」
「それってサイガの・・・ミス?」
「多分な。そして軒先ラジオゾンデの役割が何かもわからなくてだな。海水調査用とセットで何かわかるようになっているのか、別々なのか・・・ライチョウ君は聞いているんじゃないかね?自分の家に吊るしている理由を」
「えーっと・・・実は僕も詳しくは聞いていませんで・・・グリーンランド沿岸部の気温が知りたいとは言ってましたけど・・・」
「ふむ・・・ところでレミン君はどこまで知っているかね?」
 レミンはブルーベリーパイの美味しさに感動していたが、それをオウガンに伝えるタイミングがない、ということを考えていた。
「あ、僕のことは気になさらないでください!村長のアシスタントなんで」
「別のこと考えてたな」
 劇場前で同じことをレミンに言われたが、ライチョウもまたレミンのことを見抜くのがうまい。
「ハハハ・・・」
 レミンは苦笑いした。
「ラジオゾンデは一分単位で記録を送ってきていた。ある一つのデータで、メモリは五度程高い水温を指し、その後下がった・・・」
 ライチョウは “海氷荒らし” 発生時のラジオゾンデの変化について、直接サイガから聞いた時のことを思い出していた。ふと思い当たることが頭をよぎった。
「熱波じゃないか?局地的に起こる」
「熱波?」
 オウガンとレミンが同時に言った。
「グリーンランドの北東部でも強烈な熱を感じたことがあるんです。あれは旅に出る前、環境管理局が来た日・・・・・二月七日前後?」
 確か管理局の男達も熱いだの熱くないだの言っていた。
「熱波がきて海面水温が一時的に上昇か・・・あり得なくはない。それが “海氷荒らし” が起きる前触れかもしれん。グリーンランド北東部付近の海域でも同じことが起こっていた可能性があるな。となると軒先ラジオゾンデは熱波の発生を感知するためか」
「ただ僕が感じた熱波は一瞬で。同時刻、同じ場所に居合わせた二人に質問したところ、一人が同じように熱さを感じていました。強烈ですが一瞬なので人によっては感じないのかもしれません」
「グリーンランドの軒先ラジオゾンデのデータを見てみよう。二月七日の」
 オウガンはリビングを離れ、二階へ上がっていった。ノートパソコンを持ってすぐ降りてくると、テーブルの皿やコーヒーカップを動かしてパソコンを置く場所を作った。
「2015年2月7日・・・これだこれだ」

『グリーンランド北東部セツド村 ライチョウの家』

 ページタイトルを見たライチョウは少し恥ずかしくなった。二月七日、一日分の観測記録が長々とページ上に表示されている。一分毎の外気温の一覧は細か過ぎて正直見る気が失せる・・・オウガンが画面をスクロールしていくと、赤く色付けされた箇所が見つかった。
「気温の振れ幅が大きいと赤く色が塗られるようだ。午後二時十七分から十八分の間にプラス五.八度上昇している。これは一分間の観測のうち最も高い気温が表示されるんだ」
「はっきりした時間は覚えていませんが・・・午後の比較的早い時間帯だったと思います」
 ライチョウは研究に没頭している時、或いは村で過ごしている時はあまり時計を見ていなかった。
「私も毎日チェックしているわけじゃなし・・・気付かなかったよ」
 それもそのはず。“海氷荒らし” と熱波が関係していると推論し出したのは今が初めてだ。“海氷荒らし” とデータを結び付けるものが何かわからなければこの画面はただただ面白くない気温の羅列でしかない、とライチョウは思った。
「レミンは覚えてないか?この日のこと」
「僕は店の仕事してたはずですから・・・何も」
 レミンは首を左右に振った。
「そうだ、海水調査用の記録も見ておくかい?すぐに途絶えてしまったが」
 ライチョウは迷った。海水調査用ラジオゾンデの方は記録だけが残っているのではない。そこにはサイガの存在が感じられる。正直辛い。しかし・・・・・
「見せてください」
 見ずに後悔するのは嫌だった。オウガンは海水調査用ラジオゾンデのデータを開いた。こちらは海を漂流していたためマップによる詳細な位置情報も加えられている。さらに観測場所の写真。サイガはわかりづらいから改良が必要だと言っていたが、確かに画像の荒さが目立つ。海の上や氷の下を移動しながらの撮影はラジオゾンデにとって難しく、厄介な機能だったのかもしれない。
 午前十一時五十二分から五十三分の記録を最後に、ラジオゾンデは観測を止めていた。オウガンはデータ画面を閉じて大きく深呼吸をした。
「軒先ラジオゾンデの方、間違いなく熱を感知しているな。何とかしてその時期のグリーンランド北東部付近の海氷状況を調べてみるか」
「オウガンさん、僕らがノルウェーのフィヨルドの村を訪れた時、そこの村長が話してくれたんですが、去年の今頃、村のフィヨルド湾内にバレンツ海からの流氷が流れてきたそうです。写真も見せてもらったんですが、不思議な割れ方をしていました。周辺がギザギザになっていて、普通の流氷とは明らかに違う印象で。去年の今頃と言えば、ちょうどサイガが “海氷荒らし” の存在を発見した頃です。フィヨルドに流れてきた流氷は、 “海氷荒らし” にあった後のものじゃないかと思っています」
 ライチョウの話を、オウガンは俯いたまま深く頷いて聞いていた。レミンはメルゲセイルフィヨルドで見た写真の流氷がどんなものだったかよく覚えていた。
「なるほどな。“海氷荒らし” とは海上に向かって起こる何らかの衝撃ということで間違いなさそうだな」
「気候変動が原因かもしれません」
「ライチョウ君が感じた熱波について調べてみるよ。それと二月七日前後のグリーンランド北東部付近の海氷状況も」
 ライチョウはこれらの件に関してオウガンに頼むことにした。オウガンには気候活動のネットワークがある。一瞬の激しい熱波が引き起こす現象に関心を寄せる者はきっといるはずだ。
「僕はスバールバル諸島のコイド島に行こうと思っています。サイガが “海氷荒らし” のあった現場を見に行った後訪れた島に行けば “海氷荒らし” に関することも何かわかるかもしれないし、サイガと言葉を交わした人に会えるかもしれない」
 ライチョウはまだ手を付けていなかったブルーベリーパイを一口食べた。オウガンは自分がやるべきことを手帳に書き込んでいた。
「ラジオゾンデのデータが途絶えた日とサイガが海で行方不明になった日が同じというのが気になりますね。サイガはラジオゾンデと一緒に海に消えた。ラジオゾンデの行方もわからなくなった。壊れてデータは途絶えた。サイガはラジオゾンデを回収しようとして誤って海へ落ちたのか、それとも自殺か・・・」
 オウガンとレミンは黙ってライチョウの推理を聞いていた。ライチョウはしばらく沈黙し、溜息をついた。
「やっぱりどう考えても誤って海に落ちたとは思えない。ラジオゾンデも一緒に消えてるわけだし。それに・・・・・」
 ライチョウの口が止まった。
「それに?」
 続きが気になるレミンが言った。
「あー・・・いいんだよ、ラジオゾンデを壊すためにサイガは海へ出たとすると、オウガンさんにデータを託した意味もわからない。海面水温の上昇がキーになってるっていうのに、先のデータが取れなくなれば解明は困難になると、普通はそう思うだろう?」
「自殺・・・だろうか?」
 オウガンが呟いた。ライチョウは自殺ではないと思える理由をずっと探している。しかしあの時・・・ノールカップ岬でのサイガはやはり、自分に別れを告げたのではないか・・・
「実は・・・サイガが行方不明になる前日、ノールカップ岬で僕とサイガは会っていたんです」
 オウガンとレミンは驚きを露にライチョウを見た。
「ノールカップ岬、ノルウェーだね」
「ええ。気候調査団のことは?」
「サイガ君から少し聞いていたよ。あまり乗り気ではなさそうだった」
 ライチョウは軽く微笑んで頷いた。
「ノールカップ岬でサイガは気候活動のことを話してくれました。北極海航路発展を反対していることや、コイド島に住む先住民族のことも」
「コイド島とは?さっきも出てきたが、サイガ君が訪れた場所なのか?」
 オウガンが初めて耳にする島の名前だった。サイガからはコイド島とそこに住む先住民について聞いたことがなかった。
「スバールバル諸島にある島で、コイドカゼという僕らイヌイットとよく似た外見をしている先住民族が住んでいるんです。島は人口減少が深刻で廃村の危機に直面していたそうですが、北極海航路計画が現実化していく中で、島に港を建設することが決まっているとサイガから聞きました。港ができれば人の往来も活発になり、仕事も増えるし観光客もやって来る。廃れていた島に活気が戻る。“北極海航路開発がもたらす未来が一つの民族を救うなら、自分の信念を曲げてもいい” と、サイガはそう考えたんです」
「そんな計画があるのか・・・いや初めて聞いたよ」
 サイガはコイド島での一件を、おそらく他の誰にも話していないのだろう、ライチョウはそんな気がしていた。
「サイガの死の理由ですが、コイド島であったことが関係しているんじゃないかって・・・信念をかけて北極海航路発展を反対していたサイガが、コイド島の港の建設を認めることがどれだけ辛かったか、俺はもっと考えるべきだった。サイガの思いに何も気付いていなかった」
 ライチョウは感情の昂りを自分自身でも感じていた。ノールカップ岬での出来事は、今でも鮮明に思い出せる。
「ノールカップ岬でサイガは僕に対する気持ちも話してくれました。僕のことを想ってくれていた。それも気付けなかった」
 ライチョウの話の思わぬ展開に、レミンは口を開けたまま動かなかった。サイガという人についてライチョウは今まで淡々とした口振りで話す印象だった。しかし彼について語る時、レミンにはわからない感情の動きがライチョウにはあったのかもしれない。
「彼は実直な男だった。仕事もできて男前。生徒からも人気があったそうだ。一見隙がないように見える。恋人の話は聞いたことがなかったが、大切な人がいたんだな」
 オウガンはサイガの気候活動家以外の顔を知れたことが何だか嬉しかった。そう言えばサイガがライチョウの話をする時、いつもと違う表情を見せていたように思う。
「サイガはその時、別れを告げるようなことを言って・・・僕ともう会えないとわかっている様子でした」
「死ぬことを覚悟していたんだろうか?」
 オウガンが言った。
「それを確かめに、コイド島に行って来ます。何も得られないかもしれないけど、僕もサイガのことをもっと知りたい。オウガンさんは向き合うきっかけをくれました」
 サイガの死を知ってからその理由がわからないまま過ごした日々。事実を知るのが怖かった自分がいた。サイガは自ら海に入ったという事実を。
「私にも時間は必要だった。サイガ君が信頼していた君だから、連絡したんだよ」
 三人は黙ったまま、残りのケーキをたいらげた。スピーカーから流れていた音楽はいつの間にか止まっていた。
「疲れたんじゃないかい?大分長く話し込んでしまったな」
 オウガンはコーヒーを淹れ直してくれた。
「今夜泊まってもらう部屋は普段から客室として使っているんだ。ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。料理も全部美味しかった。十分過ぎるおもてなしを・・・本当に助かります」
 ライチョウが言うとレミンも隣で頷いた。
「口に合ったなら良かった。ところで次はどこへ向かう予定か聞いてなかったな」
「ビオマサキュラという村に。ロシアとの国境近くだったかな」
「ビオマサキュラ・・・北極圏の?聞いたことがない名だ」
「数年前にできた新しい集落、と環境管理局の資料に書いてありましたけど」
 ビオマサキュラについて、ライチョウはまだ資料の全てに目を通していなかった。
「あの、村長、ビオマサキュラまで列車で行くって本当ですか?」
 レミンが言った。
「ああ。飛行機は飽きただろ?気分を変えて列車にしよう。時間はかかるけど」
 湖の多いフィンランドは景色を楽しむために列車で旅をしようと、ライチョウは出発前から考えていた。
「それはいいな!どのルートで行くかは決めているのかい?」
「クオピオから寝台列車スオラビーバでクーサモまで行って、そこからビオマサキュラへはバスで。僕らが乗るのは一般車両ですけど」
「列車だけで七時間てとこか」
「明日は朝八時半のクーサモ行きに乗るから七時頃出るぞ」
 ライチョウはレミンに言った。言っておいてもレミンは早起きが苦手で旅の間ライチョウが起こすことが多い。
「早いな。もっとゆっくりしていってもいいんだよ。何ならもう一泊ぐらい」
「ビオマサキュラまでのバスの時刻に合わせた出発時間なんですよ。本数が少ないみたいで」
 ビオマサキュラへのバスの時刻表は、環境管理局が資料の中に入れてくれていた。これまでの旅の順路や村への行き方については簡略化されたマップしかなく、ライチョウはほとんどあてにせず自ら調べて行動していた。しかしここへきて何故時刻表が?不思議に思いながらも純粋に管理局の優しさだと捉えた。
 オウガンは二人を二階の寝室へと案内し、明日の朝食はリビングに用意しておくからと告げて一階へと降りていった。


「オウガンさんいい人ですね」
 レミンが言った。
「・・・悪いなレミン」
 ライチョウはベッドに腰掛け、荷物を整理しつつかすれた声で言った。
「何がですか?」
 ライチョウの沈んだ声色。レミンは何を聞いても明るく返そうと決めた。
「個人的な目的で旅を引き延ばしちまって。サイガとのことも・・・」
「それは昨日すでに了承済みじゃないですか。話を聞いてて思いましたよ、“海氷荒らし” のこともサイガさんの死の理由もちゃんと明らかにすべきだって。それに僕も同行して真実を知りたいです。あ・・・お金のことは大丈夫ですよ、手持ち分がそれなりにはありますから」
 レミンはいつもと変わらない。穏やかでありながら真っ直ぐな心情を伝えてくれる。
「僕もサイガさんに会いたかったなあ。村長のどこに惚れたんだって聞きたい」
 これもレミンの本心。
「・・・・才能だよ!」
 それを一番知りたいのはライチョウ自身だ。


2015年3月8日

 翌朝、オウガンは朝食にシナモンロールを用意してくれた。朝早くから近所のパン屋へ行って買ってきてくれたようだった。ライチョウとレミンはゆっくりする間もなく、焼き立てのシナモンロールを食べるとすぐにオウガンの家を出た。
「今日は一日、北の方の天気も荒れることはなさそうだ。ここより大分寒いだろうが、君達は慣れたもんだろう」
 夜の間に降った新雪がオウガン宅周辺や家々の屋根に積もっていた。
「オウガンさん、これを・・・」
 ライチョウは封筒を差し出した。
「何だね?」
 オウガンは受け取って中身を確認した。

“グリーンランド東部体験ツアー 宿泊送迎サービスチケット ーセツド村レミン旅行社ー”

「グリーンランドにお越しの際は是非うちに。アウトドア好きのお孫さんもよかったらご一緒に遊びに来てください」
 泊めてもらったお礼に返せるものを昨晩二人で考えたところ、結局これしか思い付かなかった。
「気を遣わんでいいのに・・・君らとの縁ができたことが私にとって一番嬉しいんだ。けれどもこのチケットがまた会うきっかけになってくれるな」
 オウガンは笑顔で封筒をジャケットの内ポケットに入れた。
「何もかもありがとうございます。また連絡しますね」
 ライチョウはオウガンと握手を交わした。
「サイガはきっと、ずっと前から “海氷荒らし” や熱波の存在に気付いていたんだと思います。あいつはそのことについてはほとんど触れてないけど。ラジオゾンデのデータから確信したんでしょう。二つのラジオゾンデを開発したのはそれを解明するためで」
 ライチョウは昨夜寝る前、ホニングスヴォーグの海でサイガと話したことを思い出していた。ラジオゾンデでそもそも何を調べようとしていたのか、サイガはあの時言わなかったし、ライチョウも深く聞こうとしなかった。おそらくサイガは海氷写真か何かをきっかけに異様な割れ方をした海氷の存在に以前から気付いていたのだろう。
「私もそう思う。“勘” というのは研究者にとって大事な要素だな。しかしライチョウ君、君にはその “勘” がサイガ君以上に備わっていると、私は感じているがね」
 ライチョウは少し照れ臭そうに笑った。
 二人は最後にもう一度オウガンに礼を言って駅へと向かった。オウガンは二人の姿が見えなくなると庭のビニールハウスに入った。ここではオウガンが気候活動を始めた十数年前に植えた『カチの花』が育てられている。深い藍色をした小さな花は毎年冬のビニールハウスで満開となる。三月初旬の今も美しく咲き誇る花々を見ていると、不意に疑問が湧いた。サイガの二つのラジオゾンデを作ったのは誰だ?


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