第15篇 ヴァガボンド
文字数 250文字
風が
どこから吹いて
どこに帰るのか
知っている輩(やから)は
そういるもんじゃねぇ
良いところや
良い財産は
みんな
持っていかれちまった
裸一貫とはまさにこのこと
今の
おれに
残ってるのは
しゃがれた
詩(うた)だけよ……
なあに
おまえさんが
心配することはねぇ
花だって
こんなに鷹揚(おうよう)に
咲いてる
鳥は
空のふところで
自由に翔びかって
食うものにも困っちゃいねぇ
おれは
風から生まれ
風で育ち
風に運ばれて
行きつくところに
行きつく
ただ
それだけよ
また
おまえさんに
万が一
会う機会が訪れりゃ
とっておきの
土産話をしてやろう
まあ
元気にやりな