妄想で一日は始まる

文字数 1,237文字

くるくるくるくるまわり あたかもあたかも 凍りつき
太平洋の 彼方から のぞく 顔
さらばとはいわず 出迎えておくれ 君はこういう
 ──さようかと

そこは森 

さながら 限りなく 地平線と 手をつなぎ
かっこうが鳴けば カラスが鳴き こおろぎが鳴けば 蛍がひかる
さじをなげず ついて来ておくれ 申し訳ないと いわないで

そこは海

さあさあ 行こうと 手をひいて 君はいつも うしろにつき
気がついたら 手を離し 残るのは 足跡 
砂浜に 残った足跡だけで

「  いったい いつになれば あしあとは つづく いったい いつになれば  」

また誘惑をして去らないで
キスをして抱き いつまでも どこまでも ともに
愛しいと そばにいて 
相槌をうったのは 嘘なのかい?
それとも 戯れに 悪戯なのかい?

垣根を超えて やってきた猫が にゃーと鳴いた わたしは にゃーと返事して
すると あいつは そっぽをむいて 走って逃げた 
「なんだい」
わたしは ふてくされ小石をなげる
誰もいない影のなかへ ほおりなげるのさ 
言葉の意思をストンとなげる

影のように ついてきてくれるのは だれ?
離れずに ひと時も 共に 生きてくれるのは だれ?

寂しいと 泣くことの いらないように ならぬか

妄想していたら眠くなった
僕はうつらうつらして夢を見る

ある山に 孤独な男が一人でおりました
彼は そこで 焚き火をしておりました
山の中で 話し周り 跳ね回り 飛び回り
虫たちと歌い 動物たちと会話して 時に雨に立ち向かい
嵐と仲良くしてお日様に挨拶して
雷には愚痴をいい
だけど人がくれば逃げて隠れ 
ほら穴へ 過去に動物の使っていた穴で奥深く暮らす彼

森の音楽が聴こえてくる
笛の音を山の頂で聞いた気がして耳を澄ます

彼は本当に聞いたのかと確かめるために外に出た
 
そこに一匹の狼が登場
狼は何も言わず
ただじっと彼の目の奥を見つめるだけだった
 
男は情けないやつだとも思わなかった
そのうちに狼は立ち去った
風の中に狼の匂いがした
獣 の 匂い が した
懐かしい記憶を醒ます

ききかいかい 奇怪
奇怪な景色が朝靄の前に立つ
奇怪な景色がつづく混沌の壁
足元のお花たちが全てを教えてくれたかもしれぬ

森に向かって「構うな」と 「僕の行き先に構うなと」僕は呟いた

静かに燦々消えていく 泡あぶく
唇に近づける すると弾けて目を覚ます
はっとして 起きると 世の中が あった
僕が住む存在する ここがあった
ああ また ここへ 戻って来たのかと思う

突然のフラッシュ ラッシュの中
それは電車の中

知らない老人が数珠をならしていたゴリゴリ拝んだ手が見えた
なにを願うのか?老人は
明日のためか今日のため?それとも自分か他人か子供のためか

僕には願いはない
何もない悲しむこともない苦しむこともない 生きるだけ
ただ 息を吸って吐くだけなのに
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