BOOTS ON THE GROUND

文字数 500文字

 俺は玄関に向かう。右手に適度な重みを感じながら。そして左手でその重みの主をさすりながら。
 どことなく柔らかな手触りでそれでいてよく見ると表面はきめ細かく繊細だ。
 そしてほのかに光に反射して黒光りするそのフォルム。

 うーん、格好いい。
 玄関に腰掛けた俺は改めてその物体 -革のブーツ- を眺める。どの角度から眺めても出てくる感想は一つしかない。
 うーん、格好いい。

 色々立て込んでいた仕事を全て成し遂げた自分へのご褒美として買ったこのブーツ。いや、嘘です、ただどうしてもこのブーツが欲しかったから買っただけです。

 新しいブーツを買うのは久しぶりだ。そして今日この瞬間がコイツをおろす時だ。
 休日かつ天気の良い日の早朝(6時)の散歩というシチュエーション。完璧だ。今日のために表面にブラシは掛けたし、クリームも塗ってきた。後はコイツを履き込んで足に馴染ませていくだけだ。

 まずは右足から俺は足を通す。…この固くて全く融通の気かない感じ。新品の革特有のこの感じ。うーん、たまらない。続いて左足にも同じように足を通した俺は存分にその光景を目に焼き付けた後、玄関のノブに手を掛ける。

 それでは、行ってきます。
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