第4話 デレデレ悪魔がかわいすぎるっ
文字数 2,247文字
今週の旅は、城下町散歩。
古い町並みを、着物を着て歩いた。
男子の着物姿は最高にイケていた。シン君はからし色、リュウは真っ黒の着物。
クールで色っぽくて、女子は全員ぽーっとなった。
人力車に新メンバーの男子と乗ったり、和菓子を食べたり、とても楽しかったけど……シン君を誘うことはできなかった。
あれほど今週こそはツーショに誘おう! と誓ったのに。
だって、ゆりちゃんが必死にシン君の隣をキープしているんだもん。
がっくりしながらお土産を選んでいるわたしに、まいちゃんが「リュウのことあきらめる」とそっと耳打ちしてきた。
「え!? どうして?」
「だって、リュウが好きなのは野乃花ちゃんだもん。ふりむいてもらえない人を好きになってもつらいし」
まいちゃんって、サラッとこんなことが言えちゃうんだ。
「……そんなのわかんないよ。わたしはからかわれてるだけだと思う。リュウはありすちゃんていう子のこと、ラブラブだったのにふっちゃったりしているし」
「それ、リュウに聞いたよ。リュウ、その子に『好きだから一緒にいて』と泣かれて、一緒にいてあげたみたいだよ? 好きになれたらよかったけど、ほかに好きな子ができて、告白は断るしかなかったみたい。でも友達になれた証に、ピアスだけはつけるって約束してあげたんだって」
「うそ……」
もしそれが真実なら、リュウはすごくやさしい人ってことになる。
「リュウはやさしくて一途なんだと思うよ」
まいちゃん、わたしの心が読めるの!?
「そういうの、きちんと話してみないとわからないしね。だから、先週はリュウといっぱい話せてよかった!」
まいちゃんがニッコリ笑う。
それから、「あ、電話の伝言忘れてた! ごめーん!」と両手を合わせてあやまってきた。
もしかしてわたし、リュウのこと何も知らないのかな……?
その日の宿は、高原のホテル。
食事は豪華なビュッフェで、さりげなくシン君の隣に……とはいかなくて、やっぱりゆりちゃんがキープしている。
ふう。あのガードを突破するのはむずかしいなあ。
「だから、シンのことはあきらめろって」
きゃっ。さっきまでほかの子と話していたリュウが、わたしの隣にいた。
なんて答えていいかわからず、だまっていると。
「……今日の服、かわいいよ。こっちの方が、ずっと野乃花らしい」
え?
「あ、ありがと! 実はね、今までの服は、全部お姉ちゃんのだったの。少しでも大人っぽく見られたくて。でも、昨日リュウが『かわいらしい服が野乃花っぽい』と言ってくれたから、今日は自分のお気に入りのワンピースを着てきたんだ」
「ホント!?」
リュウ、今まで見たこともないような、くしゃくしゃの笑顔になる。
こんな笑い方もできるんだ。
……昨日の電話でも思ったけど、悪魔くん、けっこう素直なのかも?
シン君のことでむきになったり、わたしのすっぴんを喜んだり。
「もっと野乃花と話したい。ツーショット、いい?」
「今、ふたりきりじゃん。もうツーショだよ」
気づくと、ほかの子たちはそれぞれ食事を終えて、ツーショットでいなくなっていた。
残っているのは、わたしとリュウ。
「でも、野乃花は逃げちゃいそうで心配なんだ」
「逃げたりしないよ」
「ホントに? おれ信じちゃうよ。シンが戻ってきても、あいつのところに行かないでよ」
心配そうにのぞきこんでくるその顔は、悪魔というより、ご主人様につきまとう子犬みたいで。
「どうしようかな〜。シン君とも話したいし」
わたしだって、少しはいじわるしていいよね?
「あー、もう! 野乃花がその名前を言うのもむかつくんだよな」
唇を突き出すリュウ。
そんな顔を見せられたら、かわいすぎてときめいちゃうよ!
まいちゃんのおかげかな。
リュウのいろんな面が、ようやくわかってきたみたい。
「あの……なんで先週、わたしにキスしたの?」
「おしおきって言っただろ。ツーショしてるのはおれなのに、シンのこと見てるから」
悪魔くんは、かっこよくて、オレ様で。
「だから、なんで、おしおきにキス……?」
女の子にやさしくて、やきもちやき。
「キスしたら、おれのこと好きにならない?」
……そして、ものすごーい、自信家。
「外、散歩行こうぜ」
不思議だな。
本当はやさしい人だとわかると、グイグイくる感じも、悪くないって思う。
玄関ロビーで、ふと視線を感じた。
「あ……」
ロビーのソファに、シン君とゆりちゃん。
「だめ。見るのもむかつく」
「きゃっ」
突然、リュウが自分のキャップをわたしにかぶせて、目隠しをした。
「これじゃ前が見えないよ」
「このまままっすぐ歩いて」
「えっ、やだこわいっ」
「だいじょうぶだって、おれがいるから。ほら」
ぎゅっとリュウが手を握ってくれて、外へ。
「はい。上をむいて、目をあけて」
やっとリュウがキャップをとってくれて……見えたのは、満天の星空だった。
「……わあ、すごい」
山で見る星々は、いつもの何倍もきらめいていた。
「……きれいだ」
「ホントだね……こんなにたくさんの星……」
「ううん、おれが言ったのは野乃花のこと」
ボンッ。真っ赤になってしまう。
どうしてそんな甘い言葉を言えるんだろう。
でも、星空の下で聞くその言葉は、とても素直に受け止められる。
リュウと一気に距離がちぢまったみたい……。
古い町並みを、着物を着て歩いた。
男子の着物姿は最高にイケていた。シン君はからし色、リュウは真っ黒の着物。
クールで色っぽくて、女子は全員ぽーっとなった。
人力車に新メンバーの男子と乗ったり、和菓子を食べたり、とても楽しかったけど……シン君を誘うことはできなかった。
あれほど今週こそはツーショに誘おう! と誓ったのに。
だって、ゆりちゃんが必死にシン君の隣をキープしているんだもん。
がっくりしながらお土産を選んでいるわたしに、まいちゃんが「リュウのことあきらめる」とそっと耳打ちしてきた。
「え!? どうして?」
「だって、リュウが好きなのは野乃花ちゃんだもん。ふりむいてもらえない人を好きになってもつらいし」
まいちゃんって、サラッとこんなことが言えちゃうんだ。
「……そんなのわかんないよ。わたしはからかわれてるだけだと思う。リュウはありすちゃんていう子のこと、ラブラブだったのにふっちゃったりしているし」
「それ、リュウに聞いたよ。リュウ、その子に『好きだから一緒にいて』と泣かれて、一緒にいてあげたみたいだよ? 好きになれたらよかったけど、ほかに好きな子ができて、告白は断るしかなかったみたい。でも友達になれた証に、ピアスだけはつけるって約束してあげたんだって」
「うそ……」
もしそれが真実なら、リュウはすごくやさしい人ってことになる。
「リュウはやさしくて一途なんだと思うよ」
まいちゃん、わたしの心が読めるの!?
「そういうの、きちんと話してみないとわからないしね。だから、先週はリュウといっぱい話せてよかった!」
まいちゃんがニッコリ笑う。
それから、「あ、電話の伝言忘れてた! ごめーん!」と両手を合わせてあやまってきた。
もしかしてわたし、リュウのこと何も知らないのかな……?
その日の宿は、高原のホテル。
食事は豪華なビュッフェで、さりげなくシン君の隣に……とはいかなくて、やっぱりゆりちゃんがキープしている。
ふう。あのガードを突破するのはむずかしいなあ。
「だから、シンのことはあきらめろって」
きゃっ。さっきまでほかの子と話していたリュウが、わたしの隣にいた。
なんて答えていいかわからず、だまっていると。
「……今日の服、かわいいよ。こっちの方が、ずっと野乃花らしい」
え?
「あ、ありがと! 実はね、今までの服は、全部お姉ちゃんのだったの。少しでも大人っぽく見られたくて。でも、昨日リュウが『かわいらしい服が野乃花っぽい』と言ってくれたから、今日は自分のお気に入りのワンピースを着てきたんだ」
「ホント!?」
リュウ、今まで見たこともないような、くしゃくしゃの笑顔になる。
こんな笑い方もできるんだ。
……昨日の電話でも思ったけど、悪魔くん、けっこう素直なのかも?
シン君のことでむきになったり、わたしのすっぴんを喜んだり。
「もっと野乃花と話したい。ツーショット、いい?」
「今、ふたりきりじゃん。もうツーショだよ」
気づくと、ほかの子たちはそれぞれ食事を終えて、ツーショットでいなくなっていた。
残っているのは、わたしとリュウ。
「でも、野乃花は逃げちゃいそうで心配なんだ」
「逃げたりしないよ」
「ホントに? おれ信じちゃうよ。シンが戻ってきても、あいつのところに行かないでよ」
心配そうにのぞきこんでくるその顔は、悪魔というより、ご主人様につきまとう子犬みたいで。
「どうしようかな〜。シン君とも話したいし」
わたしだって、少しはいじわるしていいよね?
「あー、もう! 野乃花がその名前を言うのもむかつくんだよな」
唇を突き出すリュウ。
そんな顔を見せられたら、かわいすぎてときめいちゃうよ!
まいちゃんのおかげかな。
リュウのいろんな面が、ようやくわかってきたみたい。
「あの……なんで先週、わたしにキスしたの?」
「おしおきって言っただろ。ツーショしてるのはおれなのに、シンのこと見てるから」
悪魔くんは、かっこよくて、オレ様で。
「だから、なんで、おしおきにキス……?」
女の子にやさしくて、やきもちやき。
「キスしたら、おれのこと好きにならない?」
……そして、ものすごーい、自信家。
「外、散歩行こうぜ」
不思議だな。
本当はやさしい人だとわかると、グイグイくる感じも、悪くないって思う。
玄関ロビーで、ふと視線を感じた。
「あ……」
ロビーのソファに、シン君とゆりちゃん。
「だめ。見るのもむかつく」
「きゃっ」
突然、リュウが自分のキャップをわたしにかぶせて、目隠しをした。
「これじゃ前が見えないよ」
「このまままっすぐ歩いて」
「えっ、やだこわいっ」
「だいじょうぶだって、おれがいるから。ほら」
ぎゅっとリュウが手を握ってくれて、外へ。
「はい。上をむいて、目をあけて」
やっとリュウがキャップをとってくれて……見えたのは、満天の星空だった。
「……わあ、すごい」
山で見る星々は、いつもの何倍もきらめいていた。
「……きれいだ」
「ホントだね……こんなにたくさんの星……」
「ううん、おれが言ったのは野乃花のこと」
ボンッ。真っ赤になってしまう。
どうしてそんな甘い言葉を言えるんだろう。
でも、星空の下で聞くその言葉は、とても素直に受け止められる。
リュウと一気に距離がちぢまったみたい……。