第6話 恋旅の終わり
文字数 1,486文字
「野乃花ちゃん……?」
いきなり誘って、ひかれちゃうかなと思ったけど、シン君はニッコリ笑って「うん」。
リュウがムッとしたのがわかったけど、でも……シン君のこと、知りたい。シン君にわたしを知ってもらいたい。
ブレスレットの色を選んだり、意外とぶきっちょだったシン君を手伝ったりしながら、かわいいペアのブレスレットができあがった。
「つけるよ」
シン君がわたしに、わたしがシン君につけてあげる。深い青のブレスレット。
「……野乃花ちゃん、ずっと旅してるのに、ふたりでなにかしたのは初めてやな」
「……うん。わたしは、もっと話したいと思ってたの。でも、恥ずかしくて」
「恥ずかしい?」
「わたしね、男の子と付き合ったことないの」
思い切って打ち明けると、シン君は目を丸くした。
とてもそんな風に見えんわ、と笑うから「どんな風に見えた?」と聞いた。
「パリピなモテ女子」
「……それ、現実のわたしから一番遠いよ」
「じゃあ、現実の野乃花ちゃんはどんな子?」
「うーん。恋愛したことなくて、理想ばっかり高くなっちゃって、頭の中の王子様に恋しちゃうような子」
シン君は「ぜんぜんわからんかった」と笑った。
「ずっと、野乃花ちゃんのこと気になってて、話せてうれしい。どんな子か、わからんまま旅が終わるのさびしいし」
「……わたしも、そう思ってた」
思った通りやさしくて、一緒にいると楽しい人。
「まだ寒いよね」
ブレスレットをつけてくれたその手で、わたしの手をそっと包む。
「あ……」
「ほら、こんなに冷たい」
あったかい手。
「……野乃花ちゃん」
そっと、耳元で名前を呼ばれる。
「リュウ、泣きそうや。さびしいけど、そろそろあいつの隣に行ってあげて」
くくっと笑いだすシン。
パッとふりかえると、リュウがしかめっ面で、外のテーブルにぼっちで座ってた。
わたしと目が合うと、「ふんっ」とそっぽをむく。
「ぷっ!」
子どもっぽくて、思わず笑っちゃう。
「ははっ……リュウ、誤解されやすいけど、第一印象からずっと野乃花ちゃん一筋や。あれでかわいいとこあんねん」
「そうだね、かわいい」
わたしはシン君と顔を見合わせて「あはは!」と笑い合った。
リュウはその声にピクンと反応すると、両手でくしゃくしゃっと髪の毛をかき回してテーブルにつっぷした。
「リュウ!」
ふふっ、そのまま寝たふりしてる。
「リュウって……かわいいね」
かわいいと言われて怒ったのか、リュウはむっつりと顔をあげた。
そのふくらんだほっぺを、やさしく両手で包み込む。
リュウはちょっと驚いて、それからおとなしくわたしの手に顔をあずけた。
黒髪から、ふわりと柑橘系の香り。
「目をつぶって」
お願いすると、リュウは赤い顔をして、こくり。
「そんなにかわいいと、たべちゃうよ」
リュウのおでこに、軽く唇を当てる。
「これが返事。わたしが好きなのは……リュウ」
恋を知らないわたしに、この気持ちを教えてくれて、ありがとう。
そんな感謝の気持ちでいっぱいだった。
「……おれ、好きな子に、好きって言われたの初めて」
リュウがホーッと息をついて、頭をたれる。
「そうなの!? 意外……」
「明日、赤いチケットで旅を終わらせる。でもおれ、やきもちやきだし、ガキっぽいし、付き合うとがっかりするかもしんないよ。それでもいい?」
見上げた瞳は、泣き出しそうにうるんでる。
「うん、知ってる。そういうところ、好きになったんだもん」
甘くてかわいい悪魔くんと、初めての恋が始まった。
いきなり誘って、ひかれちゃうかなと思ったけど、シン君はニッコリ笑って「うん」。
リュウがムッとしたのがわかったけど、でも……シン君のこと、知りたい。シン君にわたしを知ってもらいたい。
ブレスレットの色を選んだり、意外とぶきっちょだったシン君を手伝ったりしながら、かわいいペアのブレスレットができあがった。
「つけるよ」
シン君がわたしに、わたしがシン君につけてあげる。深い青のブレスレット。
「……野乃花ちゃん、ずっと旅してるのに、ふたりでなにかしたのは初めてやな」
「……うん。わたしは、もっと話したいと思ってたの。でも、恥ずかしくて」
「恥ずかしい?」
「わたしね、男の子と付き合ったことないの」
思い切って打ち明けると、シン君は目を丸くした。
とてもそんな風に見えんわ、と笑うから「どんな風に見えた?」と聞いた。
「パリピなモテ女子」
「……それ、現実のわたしから一番遠いよ」
「じゃあ、現実の野乃花ちゃんはどんな子?」
「うーん。恋愛したことなくて、理想ばっかり高くなっちゃって、頭の中の王子様に恋しちゃうような子」
シン君は「ぜんぜんわからんかった」と笑った。
「ずっと、野乃花ちゃんのこと気になってて、話せてうれしい。どんな子か、わからんまま旅が終わるのさびしいし」
「……わたしも、そう思ってた」
思った通りやさしくて、一緒にいると楽しい人。
「まだ寒いよね」
ブレスレットをつけてくれたその手で、わたしの手をそっと包む。
「あ……」
「ほら、こんなに冷たい」
あったかい手。
「……野乃花ちゃん」
そっと、耳元で名前を呼ばれる。
「リュウ、泣きそうや。さびしいけど、そろそろあいつの隣に行ってあげて」
くくっと笑いだすシン。
パッとふりかえると、リュウがしかめっ面で、外のテーブルにぼっちで座ってた。
わたしと目が合うと、「ふんっ」とそっぽをむく。
「ぷっ!」
子どもっぽくて、思わず笑っちゃう。
「ははっ……リュウ、誤解されやすいけど、第一印象からずっと野乃花ちゃん一筋や。あれでかわいいとこあんねん」
「そうだね、かわいい」
わたしはシン君と顔を見合わせて「あはは!」と笑い合った。
リュウはその声にピクンと反応すると、両手でくしゃくしゃっと髪の毛をかき回してテーブルにつっぷした。
「リュウ!」
ふふっ、そのまま寝たふりしてる。
「リュウって……かわいいね」
かわいいと言われて怒ったのか、リュウはむっつりと顔をあげた。
そのふくらんだほっぺを、やさしく両手で包み込む。
リュウはちょっと驚いて、それからおとなしくわたしの手に顔をあずけた。
黒髪から、ふわりと柑橘系の香り。
「目をつぶって」
お願いすると、リュウは赤い顔をして、こくり。
「そんなにかわいいと、たべちゃうよ」
リュウのおでこに、軽く唇を当てる。
「これが返事。わたしが好きなのは……リュウ」
恋を知らないわたしに、この気持ちを教えてくれて、ありがとう。
そんな感謝の気持ちでいっぱいだった。
「……おれ、好きな子に、好きって言われたの初めて」
リュウがホーッと息をついて、頭をたれる。
「そうなの!? 意外……」
「明日、赤いチケットで旅を終わらせる。でもおれ、やきもちやきだし、ガキっぽいし、付き合うとがっかりするかもしんないよ。それでもいい?」
見上げた瞳は、泣き出しそうにうるんでる。
「うん、知ってる。そういうところ、好きになったんだもん」
甘くてかわいい悪魔くんと、初めての恋が始まった。